おなじみ、例のアレ、あのお話だよ!『オリエント急行殺人事件』

基本情報

Murder on the Orient Express ★★★
2017 スコープサイズ 114分 @アマプラ

感想

■おなじみ、ミステリー小説の映画化なので、真犯人がどうこう言う話も既になんとなく知ってるし、特段意外性もないので、おなじみの出し物を堪能する古典芸能の雰囲気だな。

■監督と主演がケネス・ブラナーで、近年ちょっと調子が低い気がするけど、本作もまあ肩の力が抜けていて悪くはない。オリエント急行の列車周りんの情景は大量のCGによっているので、ほとんどブルーバックかグリーンバック撮影だと思うけど、何を思ったのか65㍉フィルムで撮影を敢行。その意義は正直良くわからない。VFXはダブル・ネガティブなので悪くはないけど、それにしてもほぼアニメ映画だなあ。

■物語の背景は野趣に富むけど、ほとんどCGなので実のところメインの展開はほとんど舞台劇のようで、ラストなんて完全に舞台中継になるから、監督の狙いは明白だ。そもそも、本格ミステリーは基本的に説明映画なので、映画的になりにくい不利なジャンルの映画なのだ。

■で、なんで今さらこんな映画を観たかと言えば、もうじき最新作『名探偵ポアロ ベネチアの亡霊』が公開されるから。これは映画館で予告編を観たけど、完全に怪奇ミステリーなのでちょっと気になるのだ。ミシェル・ヨーも出てる!

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『フォードVSフェラーリ』

基本情報

Ford vs Ferrari ★★★
2019 スコープサイズ 153分 @DVD

感想

■随分前に観ていたのだけど、感想を記録していなかった。このところ『アライブフーン』『グランツーリスモ』とレース映画の秀作が立て続けに公開されているので、改めて感想を残しておこうと思う。

■フォードはフェラーリを買収しようとするが断られると、1964年のル・マンレースでフェラーリを出し抜くことを決意。責任者のシェルビー(マット・デイモン)はテストドライバーとして、既に中年で偏屈な性格ゆえ食い詰めていたマイルズ(クリスチャン・ベール)を起用する。。。

■もちろんレースシーンを見せ場としたアトラクション映画でもあるのだが、演技的な見せ場が多くて、そこはさすがにジェームズ・マンゴールド。特にクリスチャン・ベールの役作りはコテコテで、ハリウッド映画の濃ゆい演技メソッドを満喫できる。というか、それだけで見もの。ただ、演技の濃さとレースシーンのスペクタクルがどうも食い合ってしまった感は否めず、どっちつかずになったかもしれない。

■当然のことながら、ル・マンレースの場面は、最近の『グランツーリスモ』などともかぶるのだが、豪勢な見世物。でも、本作で印象に残るのは、活劇としてのレース場面ではなく、マット・デイモンクリスチャン・ベールの中年オヤジのイチャイチャぶりだったりするのは、そういう映画だから仕方ないか。


サービス満点の大娯楽映画『サンダーバード 劇場版』

基本情報

Thunderbirds Are Go ★★★☆
1966 スコープサイズ 94分 @DVD

感想

■火星探検のZERO‐X号がフッドの工作で発射失敗。国際救助隊の警戒の中、二度目のチャレンジで無事火星に到着したが、謎の火星生物の攻撃を受ける。。。

■おなじみサンダーバードの劇場版で火星探査ZERO‐X号の組み立てシーンの豪快なミニチュアワークを大スクリーンでじっくりと展開し、バリー・グレイの楽曲をたっぷり聞かせるので冒頭だけでお腹いっぱいになる豪華な一作。そのアクロバティックな組み立てプロセスだけで圧倒してしまう演出姿勢は稀有なものだ。

■後半の主役は末弟のアランで、兄弟みんなは豪華クラブに作戦成功の打ち上げに行ったのに、子供扱いされてひとり残されると、夢の中で空想の豪華クラブでペネロープとデートするシーンが傑作。しかも日本語吹替版は放映当時じゃなくて、NHK再放送用の声優陣なので、総じてみんな声が老けている。(故人も多いしね)しかも、ペネロープは黒柳徹子で、明らかにおばあさんなので、アランとのデートは非常に倒錯的な雰囲気になってしまうので、当惑する。本来の趣旨は憧れのお姉さんなのに、憧れのおばあさんになってしまうので、アラン、趣味がマニアックすぎるというものだ。

■ラストもアランを中心とするファミリーのおふざけが人形ならではのとぼけた味で秀逸なので、大爆笑で終わることになる。いやなんとなく舐めてましたけど、非常にゴージャスな映画で、特撮スペクタクルもあれば、サスペンスもあるし、当時の人気歌手が歌まで披露するし、最終的に大爆笑で締めくくるし、娯楽映画の要素てんこ盛りの娯楽大作なのだ。いや非常にできは良いと思います。でもこの堂々たるミニチュアワークは大スクリーンで観たいものだな。


注意!ネタバレあり。お話は例によっていつものアレ!でも嫌いじゃないよ『悲鳴を上げる頭蓋骨(叫ぶ頭蓋骨)』

基本情報

SCREAMING SKULL ★★☆
1959 ヴィスタサイズ 78分 @アマプラ

感想

■新居に越してきた新婚さん。でもその家は夫の元妻が事故死した家だった。新妻は夜な夜な謎の叫び声を聞いたり、家の中に突如頭蓋骨が出現する怪現象を訴えるが、過去に両親の水死事故で精神を病んだ病歴があり、主治医に相談しようと言われる始末。。。

■というお話だけで大体の察しはつくでしょう。まさにそのとおりのお話です。この時代に、世界中でいっぱい製作された病弱な妻を狂言怪談で衰弱死させようとするパターンの映画です。製作と脚本をジョン・ニューブールが担当してますね。ボリス・カーロフの「スリラー」でも脚本を書いてました。お話の構成としては悪くなくて、意外性もないけど露骨な破綻もないですよ。怪異シーンの間抜けな頭蓋骨描写が爆笑を呼ぶ類のものなので、C級ホラーなんだけど、お話も役者も意外と悪くない。新妻を追い詰める怪異は狂言怪談だった。でも真の悪党には本物の幽霊が現れて制裁を加えるのだ。頭蓋骨描写以外のところは、ちょっと秀逸なイメージもあるのだ。

■監督はアレックス・ニコルという人で、たぶんそうじゃないかと睨んでいたのだが、やはり自作自演。知的障害のある庭師の青年役を自分で演じる。ヒロインはペギー・ウェッバーという女優で、決して美人ではないけど、神経衰弱を真面目に熱演するので悪い気はしない。

■撮影監督はなんとフロイド・クロスビーで、ロジャー・コーマンの映画でも有名だけど、『真昼の決闘』を撮っている人で、とらえどころのない人。なんというか効率重視であまり厳密なタイプじゃない。本作も照明効果は薄めだし、人物の影がいくつも出るし、ナイトシーンはライト一発撮りだし、例えば同時期にコンラッド・ホールがテレビで披露した技巧などに比べるとずいぶん薄味というか雑。

■なぜか制作陣は頭蓋骨そのものがよほど怖いと思っているようで、出しておけば怖がるだろうという安易な姿勢で撮っている。実際、恐怖の御本尊であるはずの頭蓋骨の雑な扱いが笑いを誘うので、そこは当時から観客とのギャップがあったようだけど、なんでこんなに頭蓋骨ラブなんだろう?まだしも生首ならフェティッシュとしてわからんでもないけどね。ジョン・ニューブールの趣味なのか??


グレイス・ジョーンズ、圧巻の怪演!『キング・オブ・デストロイヤー コナンPART2』

基本情報

Conan the Destroyer ★★
1984 スコープサイズ 101分 @DVD

感想

■『コナン・ザ・グレート』の続編で、もともとジョン・ミリアスは三部作を構想していたが、なぜか第二作は監督がリチャード・フライシャーに変更されている。製作のラウレンティスとは昵懇だったので、ジョン・ミリアスではお金がかかりすぎるので、サクッと効率的に撮ってよと起用したのではないかな。前作はもともと東欧ロケの予定が政情不安でスペインに変更された経緯があるが、今回はメキシコロケとなったので、舞台となる情景も大幅に異なる。そして第三作はいまだに製作されていない。

■女王タラミスからジェナ姫を守ってダゴスの角を手に入れれば、魔術でヴァレリアを蘇らせてやると言われたコナンは素直に冒険の旅に出るが。。。というお話で、いかにも剣と魔法の物語らしく単純化されていて、ジョン・ミリアス版のようなニュアンスや豪快なロケ撮影の醍醐味は少ない。

■氷の城の怪物とのアクションとかクライマックスで蘇った怪物ダゴス(ダゴンじゃないよ。ラブクラフトの影響もあるよね)との格闘など、当時の水準としても明らかにきびしくて、SFXというよりも60年代特撮のテイスト。ロケ撮影にミニチュアを持ち出して、生合成してしまうテクニックは前作と同様で、ここだけは非常に上出来で、太陽光で陰影もマッチするし、画調の劣化もないので合成とわからないし、ほぼ完璧な仕事。

■いかにも残念なシーンも多いけど、秀逸な場面もいくつかあって、ロケ撮影のいくつかは黒澤明みたいだよ。撮影は名手ジャック・カーディフだしね。特にグレイス・ジョーンズが怪演する女戦士ズーラはとにかくソウルフルかつノリノリの演技で観ていて愉しい。男を誘うときにはどうすればいいの?とヒロインに問われて、ガッと引っ掴むんだと身振りで返答する場面はサイコー。前作の女盗賊ヴァレリアの描き方も秀逸だったけど、今回もキャラクターとしては活き活きしていて、終盤でもっと活かしてあげないとい勿体ないよね。ちゃちな怪物いらんから。

■ちゃんと本作もマコ(名優ですよ)が出ていて、監督の意向としてコミカルな描写が増えているし、ホントに適当に魔術使わせたりして失笑を誘う。また監督はシュワが主役なんだからもっと脱がないとね!とほぼ全編半裸としたのは、観客のニーズ優先で、さすがは職人監督。しかも、映画監督に一番重要なのは、役者とコミュニケーションすることだから、映画学校じゃなくて演技学校で学ぶべきとアドバイスする始末。確かに自分も演技学校出身なんだよね。知らんかったけど。それなら、ジェナ姫にもう少し演技指導しろよと全世界の映画ファンから突っ込まれましたとさ。リチャード・フライシャー、掴みどころのない天然職人監督。時々乗りで凄い映画撮るけどね。

【ネタバレ少】与えておいて奪うのか?踊る殺人AI人形出現!『M3GAN ミーガン』

M3GAN/ミーガン(字幕版)

M3GAN/ミーガン(字幕版)

  • アリソン・ウィリアムズ
Amazon

基本情報

M3GAN  ★★★
2023 スコープサイズ 102分 @イオンシネマ京都桂川

あらすじ

■おもちゃメーカーの研究者ジェマは、両親を事故で亡くした姪っ子を引き取ったが、キャリア志向で子どもの面倒を見きれない。秘密裏に開発中のAI人形ミーガンにおもりをさせるが、彼女はジェマよりも巧みに子どもの心を掴んでいった。。。

感想

■ブラムハウスとジェームズ・ワンがタッグを組んで、でも予算規模はいつものブラムハウス・ホラーと大して違わないSFホラー。なにしろ撮影もニュージーランドで行っている。安いからね。

■ブラムハウスメソッドにしたがって、基本的にはジェマの家を主舞台にしているので、クライマックスも狭い家の中。自分の決めたルールを忠実に守って、予算規模も無駄に拡大しないように厳格にコントロールされている。商売上手!

■期待通りに『ターミネーター』だったり『チャイルド・プレイ』だったり『フランケンシュタイン』だったりするので、お話の展開に意外性は少ないけど、要所要所の見せ場を外さないのは立派だし、劇伴も秀逸だし、既成曲をうまく使うのはアメリカ映画のお得意な手法で、効果絶大。ジェラルド・ジョンストンという監督はニュージーランドの人で、初めて観たけど、全く危なげがないね。脚本はあの怪作『マリグナント』を書いたアケラ・クーパーで、今回は奇想は少なめで、着実にサスペンスを積み上げる。これも全く違和感がない。でも、殺人マシンが人間の可動域を超えた変な挙動で襲ってくるというアイディアは一緒かも。

■とにかくミーガンのデザインとキャラクター造形がたまたま見事にキャッチーなイメージに結実したことが僥倖だった。演じるのはニュージーランドの子役でエイミー・ドナルドという子ども。なにしろ人形なので表情の演技ではなく、身体の動きが全てで、メソッドとしては『リング』とか『呪怨』の幽霊の表現を引用している。が、まあそれだけでなく、いろんな芸を見せるわけで、身体能力が凄い。徐々に狂気をはらんでくるあたりの、表情のない表情の怖さを的確に表現したのは演出の腕だろうけど、最後には期待通りにあんな展開になるので、アメリカの映画館では拍手喝采だったはず!

■もうひとつのこの映画の美点は、バイオレット・マッグロウという子役が不安定な精神状態にある子どもをリアルに演じているところで、ミーガンに親しんでいって、分離不安にとらわれるまで依存するに至る心の変化の過程をしっかり演じるから、空想的なお話にすんなりと感情移入させる。このあたりは、脚本も演出も演技も上出来でしょう。

■ただ残念なのはミーガンの最終的な決着について、完全に怪物として突き放して終わることで、そこは例えば『鳥人戦隊ジェットマン』のG2なんかのほうが次元の高い寓話になっている。まあ、『フランケンシュタイン』と違って生命を与えられたわけではないので、造物主に対する問いかけにはならないのだけど、AIが発達して知性と意識を持ってしまうと、それは命を持っているのと何が違うのか問題が生じてくるはず。想像するに、このあたりは脚本にはもう少し描写があるんだけど、続編を意識してあっさり終わるようにアレンジしたのではないか。もちろん邪推ですが、ソフトの特典に入ってないかな?→すでにパート2の製作が決定したそうです。


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■ちなみに、制作背景の詳細は、以下の記事に詳しい。メイキング映像もみてみると、CGの使用は控えめで、昔ながらのSFX的なフィジカル・エフェクトで撮られていることが分かる。
www.rm2c.ise.ritsumei.ac.jp

参考

『マリグナント』はブラムハウスは参加してませんね。
maricozy.hatenablog.jp
ミーガンでは”不気味の谷”の怖さを狙ったが、そこはこの映画のタマミの方がずっと怖い。
maricozy.hatenablog.jp
ブラムハウス映画は花盛り。みんな低予算映画だよ(ハリウッドでは)
maricozy.hatenablog.jp
maricozy.hatenablog.jp
maricozy.hatenablog.jp
maricozy.hatenablog.jp
maricozy.hatenablog.jp
maricozy.hatenablog.jp
maricozy.hatenablog.jp
maricozy.hatenablog.jp
maricozy.hatenablog.jp
maricozy.hatenablog.jp
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maricozy.hatenablog.jp
maricozy.hatenablog.jp
maricozy.hatenablog.jp
maricozy.hatenablog.jp

骨太で豪快な筋肉時代劇『コナン・ザ・グレート』

基本情報

Conan the Barbarian ★★★
1982 スコープサイズ 129分 @ブルーレイ

感想

■なにを今更?という感じですが、実は初めて観ました。音楽がベイジル・ポールドゥリスで、テーマ曲がかなり有名らしいので、正直いって音楽目的で観ました。でも一般的にはシュワの出世作で、世界的なヒット作ですね。監督がジョン・ミリアスだったことを思い出しました。しかも脚本はオリバー・ストーン(!)で、エドワード・プレスマンと組んで原作を脚色したもの。監督候補にはリドリー・スコットアラン・パーカーがいたけど、結果的にジョン・ミリアスなら脚本を自分で直せるよねということになったらしい。結局、脚本をラウレンティス(娘)に売るんだけど。

■謎の邪教集団タルサの教祖に父母を虐殺されたコナンが成長して、弓の名人の盗賊や女盗賊ヴァレリアの仲間を得て、復讐を遂げるまでのお話で、ストーリーは至って単純だけど、野蛮な暴力とお色気満載で、とても子どもには見せられない、逆にいえば大人は大満足の活劇。なにしろ80年代初めなのに、SFXは控えめで、基本的にはロケーションと巨大セットで撮り切るスタイルが今観ると貴重。今作ればCGアニメデジタル大会になってしまうけど、監督の意向による雄大なスペインロケがなんといっても見どころ。

■なんとなく風景に既視感があるなあと思っていたら、あれですね。1960年代に量産されたサミュエル・ブロンストン製作の大作史劇の風景に似ている。それもそのはずで、それらもスペインで撮影されたから。なんでスペインかといえば、風光明媚で様々な映画映えする自然に恵まれているうえに人件費が安くて、エキストラの大量動員が可能だから。本作もその効果が絶大で、邪教集団の本拠地を実物大で建造して、1500人くらいのエキストラを動員したらしい。でもサミュエル・ブロンストン製作の歴史劇はその10倍くらいのモブシーンを撮ってますけどね。

■ドラマ的には弓の名人のレクサーや勇敢な女盗賊ヴァレリアが絡んでくるあたりから面白くなってきて、特にヴァレリアがどう見ても儲け役。サンダール・バーグマンというミュージカル女優が濡れ場も含めて出し惜しみなく熱演するし、ある意味木偶の坊である筋肉バカ(監督は思索的な複雑な人間だと言ってますけど)のコナンを真の男に育て上げる役どころで美味しい見せ場がたくさん。単なる野蛮人であるコナンに対して、女の情念という炎で鋼を鍛えるように接する、人間味のある役柄だし、もし自分が死んでもあんたを護ると宣言する情の深い女傑。しかもシュワと同格で、人体をザクザク切り裂く残酷アクションシーンも豊富だし、そこにベイジル・ポールドゥリスの燃える劇伴がかかって、まさに血祭りの高揚感!

■墓守のアキロを演じるのがマコ(マコ岩松)で、監督が舞台俳優として注目していたそうだけど、見た目がまるで赤星昇一郎子泣きじじいだし、やってることがまるで竹中直人なのもユニーク。しかも全編のナレーションも担当。もともと監督はシュワでいくつもりが、プロデューサーから訛った英語では困ると言われたんだって。明らかに黒澤映画を参考にしているので、日本人俳優を起用したのかと思いきや、そういうわけでもなさそう。でも、剣の師匠として山崎清という抜刀術の達人がシュワを指導してますから、やはり武士道も参照されている。

ベイジル・ポールドゥリスの映画音楽としても確かに充実しているし、コナンのテーマ、タルサの邪教集団のテーマと曲想のコントラストも明快だし、戦闘シーンの燃える楽曲に出し惜しみはないし、活劇映画として単純に堪能しましたよ。もともと音楽はエンリオ・モリコーネでしょ!とプロデューサーは考えたが、大学でも友だちだったジョン・ミリアスが推して彼に決まったそう。友だちは大事だね!
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ジョン・ミリアスの少し不器用な感じのさばき方も、映画が生ものだった頃の痕跡を残していて、いくつも凄いカットやシーンがある。意外な良作だったので、続編も観たくなってきたけど、監督はなぜかリチャード・フライシャーだし、撮影はジャック・カーディフに変わってる!

最悪を避けるために裏口は開けておけ!ヒロシマ、ナガサキ、そして…『トータル・フィアーズ』

基本情報

THE SUM OF ALL FEARS ★★★☆
2002 スコープサイズ 124分 @DVD

感想

■この映画もなぜか時々見返したくなる不思議な映画で、ジェリー・ゴールドスミスの楽曲がいいのかと思っていたけど、実はそれほど派手には鳴らしていない。監督のフィル・アルデン・ロビンソンの趣味かもしれない。

アメリカの原発から盗まれたプルトニウムがCIAによってイスラエルに持ち込まれ、戦術核ミサイルに生まれ変わり、第4次イスラエル戦争中に砂漠で失われるが、全世界ファシスト連合(仮)によってアメリカに持ち込まれ、ボルチモアで炸裂するという、デリケートな一線を軽々越えた政治的サスペンス活劇。

ベン・アフレックがジャック・ライアンを演じて、若輩者ゆえ政府関係者に信用されず、的確なロシア要人分析情報がいれられないために、米露ともに疑心暗鬼の恐怖の連鎖で世界戦争に突入しようとする。サスペンスも効いているし、ジャック・ライアンの冒険活劇としても若者の成長ドラマとしてもちゃんとできているし、「裏口は常に開けておけ、最悪の惨劇を避けるために」という教訓も意義深いので、やっぱりいい映画なんですよ。完全に国交を断絶することは、最悪の戦争を意味するから、関係が悪いときはことさらに、互いにスパイ人脈を通じて意思疎通だけはできるように保険をかけておけという大事な知恵を教えてくれます。ラストも非常に理想主義的で、恥ずかしいくらいだけど、映画のなかくらいは理想を描いてもバチは当たらない。

■配役も豪華で、大統領のジェームズ・クロムウェルは「儂を殺そうとしたんだぞ!」と取り乱して核攻撃を指示するし、やっとデスクワークに就けて一安心したてら最前線の汚れ仕事に戻されてグチグチ言いながらも的確に暗殺をこなすリーヴ・シュレイバーの宮仕えの悲哀とか、軍部の独断に悩まされながらも理性的な判断を貫こうとする(色っぽすぎる)ロシア大統領のシアラン・ハインズとか、配役が実に渋いですよね。シアラン・ハインズはこの頃売れっ子だったけど、いまどうしてるのかなあ。

■ただ、誰が観ても爆心地ボルチモアベン・アフレックが彷徨する場面など、なめてんのか?というレベルで、せめて関川秀雄の『ひろしま』くらいは観ておけと思う(観るわけ無いけど!)。ベン・アフレックがそこのところをどう考えているのか、いちど意見を聞いてみたい気はするな。

■昔買ったDVDだけど、古いマスターなので画質は悪い。解像度も低いし、暗部が潰れがちだ。でもなぜか日本ではブルーレイが出ないので、手放せない。やはり内容が内容だからだろうか。

参考



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これが聖林名物、胸筋ダンスや!『センター・オブ・ジ・アース2 神秘の島』

基本情報

Journey 2: The Mysterious Island ★★★
2012 スコープサイズ 94分 @アマプラ

あらすじ

ジュール・ヴェルヌの『神秘の島』と、ロバート・ルイス・スティーブンソンの「宝島」、ジョナサン・スウィフトの「ガリバー旅行記」は実在する島の記述であると気づいた少年(ジョシュ・ハッチャーソン)は、探検家の祖父(マイケル・ケイン)がその島から発したモール氏信号を辿ってパラオ沖の神秘の島にたどり着くが、それは義理の父(ドゥエイン・ジョンソン)の保護者同伴の探検だった。。。

感想

■前作『センター・オブ・ジ・アース』を観ていないのに、2作目を観てしまいました。これなんとジュール・ヴェルヌの『神秘の島』の映画化なんですね!

■監督はブラッド・ペイトンでドゥエイン・ジョンソンの専属監督みたいな人。でも『カリフォルニア・ダウン』も『ランペイジ巨獣大乱闘』も良作だったので、子どもの心にしっかり届けることのできる腕のある人。本作もしっかりおもしろいし、子ども心も満足するし、立派なものです。

■わざわざマイケル・ケインを呼んできて、巨大な蜂にまたがって空飛ばせたりとか、その稚気が清々しい。お話は単純で、神秘の島アトランティスの一部で、でも地殻変動でじきに沈没するから、島の洞窟に隠されたノーチラス号で脱出するしかない!という冒険映画。欲を言えば、沈没シーンはもっと地上の大崩壊を見せてほしかったなあ。

■当然のことながらハワイロケとCGワークの大合成大会なんだけど、CGのできが非常によろしい。しかも3D映画として製作されたので、立体的なアクションが盛りだくさんで、これは映画館で3Dで観たほうが愉しいはず。これに比べると『ワンダーウーマン』冒頭のVFXとか、ありえないレベルだよなあ。

■義理の息子に女の子にモテるための3原則を教授するシーンがお約束どおりのケッサクで、吉本新喜劇並の安心感で大爆笑。島木譲二か!3D効果のくだらない使い方も最高です。受けると思ってくどいほど繰り返すのも◯。いや、チャウ・シンチーレベルだと思います。でも、ドゥエイン・ジョンソンがウクレレで「What a wonderful world」の替え歌を歌う場面など、ハリウッド映画ならではのスマートな芸で、日本映画ではなかなかマネできない芸当。

火星のことは夢のまた夢…『トータル・リコール』

基本情報

Total Recall ★★★☆
1990 ヴィスタサイズ 113分 @DVD

感想

■びっくりしたなあ!火星の夢の女は実在したし、おれはただの建設作業員じゃなくて、本当は火星世界の敏腕エージェントだったなんて!

■という非常に子供じみた妄想SF活劇だけど、脚本の捻りが効いているし、活劇は躊躇なく派手だし、演出のやり過ぎ感がほとんど東映映画みたいだし、とても楽しいですね。CGが登場する前のドリームクエスト社のSFXが味わい深いです。当時としてもすでに最先端ってビジュアルじゃなかったけどね。

ポール・バーホーベンの人でなし演出は豪快だし、ロブ・ボッティンの奇抜な特殊メイクと特殊造形は今見ても魂消る。趣味の悪さとお笑い精神は、なんとなく関西喜劇に似ている気がする。だから、石井輝男とか鈴木則文の映画に似て見えるのだ。鼻の穴の奥からアレを取り出す場面や、火星表面で眼球が飛び出したり、おもしろSFXの釣瓶打ち。デブっちょおばさんの皮を被ったシュワの大活躍、というかおばさん(プリシラ・アレンという女優さん)の大活躍も、何度観ても凄いシーン。よく考えたな。こうしたSFXの見せ場は何かを超越してしまっているので、今見てもちゃんとおもしろいから凄いですな。人間の思いつきのパワーって凄い。

■最終的に鉱石採掘会社が資源を独占して支配する暗黒世界である火星の階級社会がエイリアンの残したオーパーツによって大気を得て新世界に変貌する豪快なスペクタクルになる。このあたりのアナログ感を多分に残したミニチュアSFXも美味です。地底の氷河層に、アツアツに熱した芯棒が挿入されるエロいSFXシーンも、バーホーベンだからそのつもりで撮ってますよね。

「人間の価値は過去の記憶じゃなく、何を行うかで決まる」反乱分子の指導者が語るように、クエイド/ハウザーは過去の自分の行いは、それはそれとしてリセットし、正しく生き直すことに成功する。嗚呼、それができればと全世界のおじさんたちは深く嘆息したのでした。

■そうそう、なんで今さら観たかといえば、平成ガメラ大谷幸の音楽がびっくりするくらいジェリー・ゴールドスミスまんまだったので、本家本元を聞きたくなったのですよ。それだけ!


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