■西沢利明と渥美国泰が悪い医師で、院長の娘をきちがいに仕立てようとしながらも対立して殺し合う羽目に。院長の娘が姿美千子で、時代劇の娘役とは違って、ショートヘアがキュートで活発な役柄で生き生きしている。電気ショックで死んだ女患者の亡霊に苦しめられて半狂乱に、という被虐的な役が華奢な姿にピッタリはまって、まさに水を得た魚。れっきとしたホラーヒロインなのだ。
■一方、幽閉された院長の浜村純は始めから最後までずっと狂いっぱなしで、全く救いがなく、世界への呪詛の言葉を吐き続け、作品の基調に異様なムードを塗り込める。脚本の山浦弘靖は、怪奇大作戦で「狂鬼人間」を書いたあの人です。相当褪色の激しいカラーフィルムなので、今日見るとその荒みぶりも含めて、異様に病んだムードが凄みを帯びている。撮影:山崎忠、美術:井上章、照明:高山清治。
■「怪談・幽霊に〜」は、累が淵の怪談をそのまま焼き直したもの。内田朝雄の身体を張った熱演には頭が下がるし、戸浦六宏とか田村奈巳の贅沢な使い方にもうっとりするが、まあ凡作。