宇宙の涯で西部劇が始まる?良い虫は死んだ虫だけだ!『スターシップ・トゥルーパーズ』

基本情報

スターシップ・トゥルーパーズ ★★★★
1997 ヴィスタサイズ 129分 @ブルーレイ

感想

■久しぶりにブルーレイを引っ張り出して鑑賞しました。懐かしい『スターシップ・トゥルーパーズ』です。

■今見ると、キャメラワークが全く古くて、特に照明がフラットでヴィスタサイズの使い方もテレビドラマの学園モノみたいなので違和感というか、とても懐かしく感じる。でもこの違和感は実は封切り当時からあって、劇場で観たときも同じように感じた。学園モノのタッチは敢えて狙った演出で、後半の戦場シーンと対比させている。

■今回大きい液晶ディスプレイで見ると、美術装置の質感の低さが顕著で、発泡スチロールに色塗ってるだけ?って感じの装置もある。美術デザインは当時からセンスが古く、質感の低さもテレビドラマみたいに見えたものだが。でも、バグズのCGIは今見ても色あせないから、フィル・ティペット凄いなあ。

宇宙艦隊のシーンは、CGIに置き換わる直前の最後の時期の大規模ミニチュア撮影で圧巻なんだけど、最新の液晶モニターで観ると、質感がピカピカすぎてプラスチックに見えてしまう。ここは劇場で観ると、ちゃんとリアルな質感になっているので誤解のないようにしないとね。液晶モニターでは合成カットもビデオ合成に見えてしまうので困ったけど、封切り時のフィルム上映ではそんな感じはなかったよね。

■見直すたびに感心するのはVFXよりもエド・ニューマイヤーによる脚本の構成の堅実さで、前半で自分のことは自分で決めろとアドバイスを断ったラズチャック先生が戦線に復帰してリコに女の誘いは断らないもんだとアドバイスするあたりの呼応の仕方は見事。新人類(?)カールの超能力も、クライマックスでそっと役に立って、まあ嫌味になっていない。”名台詞”が云々ではなく、映画の脚本とは畢竟、構成の巧拙のことなのだ。

■一方でバグズの放つプラズマ兵器は威力が弱いという分析をもとに大艦隊がクレンダス星に突入すると次々に轟沈させられる場面の崩れ落ちそうな絶望感、情報部のカールにお前たちの分析ミスで何万人の歩兵が死んだぞとリコが詰め寄る場面とか、戦争映画らしい作劇の見せ場も随所でケレンが効いているし、一方でテーマ的にはマチズモに対する皮肉が効いている。実戦訓練中に部下を死なせて軍をさろうとするリコがブエノスアイレス崩壊の報に接して俄然戦意に目覚め、その後上官たちの戦死でトントン拍子に調子良く出世してゆく様も一種の皮肉として描かれる。いわば『ニッポン無責任時代』の植木等じゃないか。

■でも、随所で猛烈に感動してしまうのはなぜだろう。多分ベイジル・ポールドゥリスの名曲の数々に条件反射的に燃えるからなのだが、それだけでもなさそうに感じる。正義とは力、力とは武力、武力とは暴力のことだ。そうした暴力衝動を、抑制されたはずの潜在意識を、プロパガンダ的に刺激して徹底的に掻き立てる。そんな危険な心理実験映画だからではないか。

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