お待たせしました!ついに電子書籍『超特撮 vol.2』刊行!

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ついに『超特撮:日本特撮映像発達史』シリーズ第二巻の刊行です!


■お待たせしました!『超特撮 vol.2』が、やっと出来上がりました。本当なら昨年中に発行する予定だったのですが、昭和男子ならではの家庭の事情がいろいろと錯綜してなかなかまとまった時間がとれませんでした。昭和男子の辛いところですね。。。
■しかも、そうこうしているうちに、突然洋泉社から『平成大特撮』が出版されたりするので大いに焦りましたが、本書では「昭和」の終わりから「平成」にかけての時期を扱っているので、内容的にほとんど重複はないのでした。
■第三巻以降どうしようかなあとは思いますが、素稿はもうできているので、ある意味『平成大特撮』も参考にしながら、漏れている視点や情報を補うことができそうです。できれば独自調査も行いたいところですが、「金と暇ができれば」というところですね。特に1980年代から1990年代にかけての「IMAGICA特撮グループ」の歴史や日本特撮映像史における貢献については非常に興味がある研究テーマだと考えるのですが。(特撮秘宝でやってくれそうな気もするから、大口孝之氏にこの場でこっそりお願いしておこう。)

■あと、本書の売りは、とにかく読みやすいことですね!文字数が少ないし、電子書籍だから文字サイズも自由自在!『平成大特撮』は文字が小さいうえに、文字数が多いので、実際のところメインターゲットの読者層は老眼も進んでいるので、買ってみたものの、現実的には読めないんじゃないかと思いますよ!
■また、今回の第二巻では、1980年代後半の主要作品リストをエクセルで作成して単純に貼り付けてみました。ただ、電子書籍での再現性、見え方に不安があるので、もっと改善の余地があるかもしれません。第一巻についても、第二版に更新する際に同様に主要作品リストを追加するかもしれません。(第一巻について表紙のデザインもマイナーチェンジしました。)
■正式なご案内よりも先にKDPで発売開始になっていましたが、はてなブログでなぜかアフィリエイトの書影が表示できないのでこの記事を公開するタイミングが後先になってしまったものです。なんとか表示する方法が分かったので、やっと記事にすることができました。なんで普通にアマゾンの商品紹介で出ないんだろうね。第一巻はこんな風にいつものように表示されるのに。。。

これが第二巻の構成です!

お待ちかね!遂に第二巻刊行!その後の「大特撮」百花繚乱絵巻!

1980年代以降、日本の特撮映像はどのように発達してきたのか?
時代は「昭和」から「平成」へ...
日本特撮「冬の時代」は「SFX映画」の時代に突入する!

本書は、超特撮シリーズの第2巻として、1980年代後半について詳細に綴る。

『八岐大蛇の逆襲』『螢川』『帝都物語』『未来忍者』『スウィートホーム』『ガンヘッド』そして『ゴジラVSビオランテ』…あの名作、傑作、問題作が続々登場!

目 次

第4章 1980年代後半=特撮からSFXへ

第1節 インディーズ化する邦画界

第2節 80年代後半のハリウッドSFX映画=SFX映画の成熟

第3節 東宝特撮の世代交代
 第1項 中野昭慶の有終の美=『プルガサリ 伝説の大怪獣』『首都消失』『竹取物語
 第2項 アニメと特撮の企画交流=『ガンヘッド
 第3項 平成ゴジラVSシリーズの誕生=『ゴジラVSビオランテ

第4節 独立系特撮映画の台頭
 第1項 バブル期を象徴する特撮大作=『帝都物語』『帝都大戦』
 第2項 台頭する独立系スタッフ=『孔雀王』『バトルヒーター』他
 第3項 光学撮影の到達点=『プルシアンブルーの肖像』『螢川』他
 第4項 アイドル特撮映画のその後・金子修介小中和哉=『みんなあげちゃう?』『どっちにするの。』『星空のむこうの国』他

第5節 新しい血
 第1項 新しい特撮のカリスマ・樋口真嗣=『八岐之大蛇の逆襲』
 第2項 和風SFの雄・雨宮慶太の登場=『未来忍者慶雲機忍外伝』
 第3項 白組の本格的映画進出=『スウィートホーム

第6節 特殊メイク技術の黎明

第7節 ハイビジョン技術の導入
 第1項 ハイビジョン技術による映画振興政策
 第2項 ハイビジョン技術の実験映画たち
 第3項 ハイビジョン技術という迷路

第8節 CM業界のデジタル映像革命

第9節 TV、CMなどへのCG導入

第10節 1980年代後半のテレビ特撮
 第1項 東映ヒーロー路線の独走態勢=スーパー戦隊メタルヒーロー仮面ライダー
 第2項 東映アウトロー復権東映不思議コメディ=『スケバン刑事』他
 第3項 長期低迷に喘ぐ円谷プロ

第11節 1980年代後半の傾向と分析
 第1項 特撮映画の世代交代の兆し
 第2項 SFX化する特撮映画
 第3項 アニメ映画の急激な進化
 第4項 バブルに沸く博覧会映像
 第5項 特撮ファンダムの進化
 第6項 「特撮氷河期」を超えて

あとがき
作品リスト
参考文献

関連情報

『超特撮:日本特撮映像発達史』シリーズの第一巻の概要についてはこちらの過去記事を参照してくださいね。キンドル電子書籍を見る方法も紹介してますよ。

名コンビによる超絶異常傑作『リロ・アンド・スティッチ』

基本情報

Lilo & Stitch ★★★★☆
2002 ヴィスタサイズ 85分 @DVD

感想

■なにしろ実質80分程度の映画なので、所々に強引でご都合主義的な急展開が見られるのだが、とにかく楽しい方にお話が転がるので、全く気にならないし、クリス・サンダースとディーン・デュボアの名コンビによる天才的な発想の饗宴にひたすら打ちのめされる。
■父母を事故で亡くして残った姉妹が崩壊寸前の家族を繋ぎとめようとするとき、破壊のために創造された邪悪な人工生命体が宇宙から降ってくる。破壊しかプログラムされていないはずの試作品626号がオハナ=家族を知ってゆくというお話を、50~60年代の怪物映画の記憶とエルビス・プレスリーの楽曲をモチーフとして描かれるという、超絶な発想力と表現力が誰の眼にも明らかな傑作。
■とにかく地球上で犬に擬態するスティッチのアニメが超絶に可愛くて、動物好きにはもう堪りません。冒頭とクライマックスの宇宙空間や空中での活劇場面も実に快調で、今観ると技術的には発展段階だが、見せ方がとにかく上手いし、アラン・シルベストリの楽曲も見事なので、何も不足を感じない。例えば巨大な宇宙船が山肌を舐めるように飛んで、翼の切っ先がこれから舐めようとするアイスを弾き飛ばす場面なんて、技術よりも、演出そのもので機体の大きさを実感させる凄い見せ方。
■宇宙に一人ぼっちの人工生命体スティッチが最後に家族を見つける場面は、お約束どおりの結末なのになんでこんなに感動的なのかという落涙の名場面。宇宙人に回収されそうになるスティッチをリロがとっさの機転で連れ戻す場面も、実はちゃんと伏線が張ってあって、これぞ文字通りの伏線の使い方。最近の観客は、伏線と「布石」や「謎かけ」を混同しているのだが、本来は別物。伏線は気づかないように付置して、意外なところで思わぬ意味合いで回収されることでドラマに説得力をもたらすから伏線という。伏線の回収とは「謎解き」とは違うのだ。本作の2ドルの件などはまさにそれで、別に謎が解かれるわけではなく、ドラマの展開に貢献するのだ。
■クリス・サンダースとディーン・デュボアの名コンビはこの後、『ヒックとドラゴン』というこれまた本作を凌駕しかねない傑作アニメを製作するが、第二作『ヒックとドラゴン2』は本国で興行的に問題があったらしく日本では劇場公開が見送られて、ビデオスルーになっている。と思いきや、三作目の『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』が、なんと今月に正月映画として公開されますよ!今知ったよ!

われらが熊井啓、最晩年の力作『日本の黒い夏 冤罪』

基本情報

日本の黒い夏 冤罪 ★★★☆
2001 ヴィスタサイズ 118分 @AVP
原作:平石耕一 脚本:熊井啓 撮影:奥原一男 照明:矢部一男
美術:木村威夫 音楽:松村禎三 視覚効果:灰原光晴 監督:熊井啓

日本の黒い夏 [冤enzai罪] [DVD]

日本の黒い夏 [冤enzai罪] [DVD]

  • 出版社/メーカー: 日活
  • 発売日: 2001/11/22
  • メディア: DVD

感想

■『帝銀事件 死刑囚』『日本列島』『黒部の太陽』の、われらが熊井啓が、故郷松本で起こった前代未聞の松本サリン事件に絡む冤罪事件を、義憤とともに、故郷愛を込めて描き出した力作。なんとなく今まで敬遠してきたのだが、もっと早く見ればよかった。いかにも熊井啓らしい映画だし、ちゃんと面白い。この、チャンと娯楽映画として通俗的に面白く語ってしまうところに熊井啓の美点がある。
■松本の高校生(放送部)が冤罪事件の報道を検証した事実をもとにした戯曲があって、これをベースに映画化したものらしい。放送部の女子高生を、美少女時代の遠野凪子が正義感一杯に演じて清新です。綺麗です。松本の地元放送局で在京の放送局とスクープを競いあうなかで、誤報と憶測を報じてしまった反省を中井貴一北村有起哉が演じる。
北村有起哉はまだ出たてで、熱くいきった記者をオーバーアクト気味に演じるが、さいごには女子高生の遠野凪子にいい子いい子されるという萌え描写(?)は、なんなのだろう。いっぽう、警察の捜査一課長を演じる梅野泰靖が、記者会見の場面しか出てないのに、異常にリアルな演技で場をさらう。三谷幸喜のコメディでも有名だけど、昔から日活映画に出ていて実力派の大ベテランで、こうしたリアルな演技と存在感は最近演じられる役者がいないので貴重だよね。
■もちろん低予算映画だが、熊井啓のイケイケの演出力は衰えておらず、毒ガスパニックの現場状況をロケ撮影で熱っぽく描くし、散布されたサリンが神部邸の中にいかに侵入したか、付近の裁判所官舎やマンションを襲ったかを静かに描きリアルな恐怖を伝える。とにかく熊井啓は”黒澤明憧れ”のメリハリ演出の人なので、音楽や効果音の使い方も鮮やか。
■女性記者の細川直美がもちろんキレイ盛りなんだけど、演技的にもしっかりしているので感心したな。こんなにできる女優だったのか。サリンなんて素人でもバケツで化学合成できますよと適当なコメントを出す教授役が藤村俊二というのもなかなか乙な配役で、全く笑えない誤報を誘因する。
■警部役の石橋蓮司が美味しい役どころで、クライマックスで中井貴一と一対一で本音をぶつけ合う場面はさすがに充実している。オウム案件という情報もあるが、神部に雑煮は食わせるなという既定路線で突き進めという上からの圧力に苦しむ現場刑事の心の内を神妙に演じる。実際、警察の現場は犯人なのかどうか確信が持てず揺れ続けたようだ。上は警察のメンツもあるから筋書きどおりに強引に進めようと迫るのだが、一方で当然公判維持ができるのかも気になるわけで、警察内部のこうしたギリギリしたせめぎ合いはここでは描き切れない。じっさい、われわれも農薬の調合失敗で毒ガス発生と言われれば、そんなことが起こるのかと素人なりに納得するしかないわけで、化学兵器なんて日本ではフィクションに属するアイテムだったからね。
■ただ、冤罪に巻き込まれる無辜の市民という怖さは案外薄味で、警察批判もマスコミ批判も意外とさらっとしていて、往年の熊井作品のようなどす黒さは少ない。その分、故郷でロケ撮影ができて、故郷の不名誉な事件を総括することができるという、うきうき感が感じられるので、不思議な感触となっている。
■劇中オウム真理教の固有名詞は登場せず単に「カルト集団」と呼ばれる。熊井啓の個人史の中では、戦後史の闇がライフワークだったわけだが、オウム真理教については、さすがに理解が追い付いていなかったのではないか。オウム事件は決して昭和や戦後の裏面史から切り離された事件ではなかったはずだけど、さすがに世代が違い過ぎたか。

日本の黒い夏―冤罪・松本サリン事件

日本の黒い夏―冤罪・松本サリン事件

怪談というよりもむしろ正統派時代劇ですよ!『令和元年版 怪談牡丹燈籠』

基本情報

令和元年版 怪談牡丹燈籠 ★★★
原作:三遊亭圓朝 脚本:源孝志 撮影:朝倉義人 美術:吉田孝 演出:源孝志
www4.nhk.or.jp

感想

■NHKBSで放映されたもののあまり話題にもなっていないようなので、ここできちんと評価しておきたいスペシャルドラマ。夏場恒例の怪談ドラマでもあるのだが、実はかなり本格的な正統派時代劇になっている。怪談ドラマとしては正直物足りないが、オーソドックスな時代劇としてはなかなかの力作なのだ。制作はNHKエンタープライズとオッティモ。TBSで伝説的な名作ドラマを手掛けたあの八木康夫プロデューサーが定年後にこんなところで活躍しているとは。
■4部作の構成なので、全部で約4時間というミニシリーズ。圓朝の原作に忠実に、お馴染みのお露&新三郎の怪談話とお露の実家の飯島家のお家騒動を完全に並行して描いているのがユニーク。で、結局のところは飯島家のお家騒動のほうがメインで、怪談話はいわば脇筋なのだ。このあたりの脚色は源孝志のこだわりだろう。だから主演はお露&新三郎ではなく、尾野真千子演じる悪女お国なのだ。そして、その相方の柄本祐のカップル。現世に居場所がない似たもの同士の不遇な二人の出会いが旗本飯島家を呪ってゆく。対する古典的な封建主義的正義が若葉竜也演じる孝助。ただし、飯島家の当主が「変態紳士」こと高嶋政宏なので、ちょっと衆道っぽい雰囲気が漂うのだが、明らかに演出の狙いだろう。
■牡丹燈籠のお話でいちばんのお楽しみは伴蔵&お峰の小悪党夫婦だが、ここでは段田安則と、なぜか犬山イヌコが演じている。小悪党の身につまされる人間味、面白みとしては山本薩夫版の映画などに全く及ばないのだが。
■病弱な飯島家の妻が急逝してから何かに魅入られたように飯島家乗っ取りを画策し始めるお国と隣家の放蕩息子源次郎の悪縁の綾と、父の敵と知らず飯島家に仕官した孝助が二人の悪だくみに気づき飯島家の忠犬として二人を追い詰める皮肉な物語が後半の見せ所で、クライマックスはチャンバラで決着を付ける。源次郎を演じる柄本佑柄本明のエリート教育で古い日本映画を見まくっているので、当然東映時代劇の傑作も見知っているはず。そのかいあって、崩れた悪の魅力を何とか出しているし、クライマックスのチャンバラもなかなかカッコいい居合抜きを披露する。源孝志の志はこちらにあったことは確実だ。孝助に「お前に何が分かる」と投げかけるお国の虐げられた者の呪いと反抗に作者の気持ちは寄り添っていて、実に正統派時代劇の佇まいなのだ。まさにこれぞ東映時代劇!
■ただ、源孝志の演出はいつものようにソフト&マイルドで、基本的にテンポはゆっくりしている。たぶん、お年寄りの視聴者を意識したものだろう。腕が飛んだり、豪快に血が噴き出したりしても、それは崩れない。だから怪談部分の怪異表現や恐怖演出には優れたものが見当たらない。VFXも含めて新味はないし、お露にいたってはなぜか吸血鬼と化している。実際のところ、東映プロパーの監督が撮ったほうが、怪異描写についてもエッジが効いた演出になっただろう。実績のある兼崎涼介だって、 濱龍也だっているからね。おまけに、彼らはチャンバラの撮り方も上手いぞ。
■改めて考えてみると、孝助と源次郎はともに飯島平左衛門の剣の弟子という設定なんだけど、これは衆道の暗喩で、ふたりとも平左衛門の文字通りの愛弟子なんだね。たぶん源次郎は若い頃、隣家の殿様平左衛門に愛されたけど、捨てられて世を拗ねて出奔した。その後、平左衛門の寵愛を独占したのが孝助で、当然のことそれを知った源次郎の内心は穏やかでない。だから、クライマックスの一騎打ちは師である平左衛門亡き後の真の愛を勝ち取るのは誰なのかという恋敵同士の決闘であったわけだ。そういうドラマだったから本作の真の主役は平左衛門を演じる高嶋政宏であって、なかなかこんな含みのある役を演じられる俳優もいないわけで、見事な配役であったわけです。
■あと、本作は江戸時代に忠臣蔵四谷怪談が最初に作られ舞台にかかった時に同じ事件の裏表として並行して語られたのと同様に、孝助の敵討ちと牡丹燈籠の怪談が並行して語られるので、実は2本のドラマに分割することができる。お露&新三郎のラインを抜き出せば純粋な怪談ドラマだし、孝助の捻じれた仇討ちを抜き出せば、正統派の時代劇になる。もともと圓朝が意識的に忠臣蔵になぞらえてそう作ったのだろうが、さすがに凝った趣向だ。

参考

こちらが原作小説です。小説とはいってももとは落語なので、口述筆記ですが、これが二葉亭四迷によって言文一致体の現在の小説の原型になったというのは、学校で教わった有名な話。

怪談 牡丹燈籠 (岩波文庫)

怪談 牡丹燈籠 (岩波文庫)

山本薩夫のとにかく文句なしの名作。伴蔵&お峰コンビが西村晃小川真由美で、これ以上ないくらいのはまり役。大映京都の映画職人による映画美の極致。美しすぎて、面白すぎる怪談映画。
牡丹燈籠 [DVD]

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源孝志のドラマは、何気なく結構見てますよね。あまり思い入れも無いのだけれど。
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ついでにこのドラマももっと評価してあげて。兼崎涼介監督の東映京都作品。チャンバラ場面、ホントに凄いんですよ。
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期待しすぎず気楽に観てね『紅の拳銃』

基本情報

紅の拳銃 ★★☆
1961 スコープサイズ 86分 @DVD
原作:田村泰次郎 脚本:松浦健郎 撮影:姫田真佐久 照明:岩木保夫 
美術:木村威夫 音楽:小杉太一郎 監督:牛原陽一

日活100周年邦画クラシック GREAT20 紅の拳銃 HDリマスター版 [DVD]

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感想

■日活アクション映画史上では欠かせない名作(?)ですが、実際のところかなりの低予算映画で、美術セットなど実に小さいて貧弱だし、同時期の裕次郎の映画なんかに比べると明らかに小品。赤木圭一郎の独特の若さの憂いが魅力的でついつい観てしまうけど、活劇映画としては中途半端な印象だ。
■香港ルートの密輸チャンネルを牛耳ろうとする社長が神戸の三国人組織を壊滅するために足のつかないようにフリーの殺し屋の養成を依頼するというお話で、軍隊時代の部下である垂水悟郎赤木圭一郎をスカウトして殺し屋修行をさせる前半部分がマニアックで傑出しているのは確かだが、舞台が神戸に移った後半はかなり類型的。
■ただ、芦田伸介が腹黒い社長で、三国人グループに小沢昭一、草薙幸二郎、藤村有弘がいて、死んだはずの香港ボスが小澤栄太郎という豪華すぎる配役は見ごたえがある。浜村純なんてラストに1、2カット登場するだけですよ。小沢昭一はやっぱり妙に上手いし、藤村有弘はお馴染みの中国人コントでサービス満点。小沢昭一の弟役の草薙幸二郎の気持ち悪さは出色で、この怪演は必見。小沢栄太郎は中国人役なのにまったくカタコト日本語をしゃべらないのが逆に面白い。
小沢昭一の情婦がお馴染みの白木マリで、このひとやくざの情婦役ばっかり専門にやってる人だけど、なかなか良い雰囲気なのだ。リアルな夜の女感があって、頽廃美がある。東宝の『美女と液体人間』だと白川由美が同じような役を演じたが、リアリティでは白木マリでしょうな。
赤木圭一郎はバタ臭さと若さに似合わぬ哀愁があってホントに好きなんだけど、やっぱり『夜霧が俺を呼んでいる』が最高なのかなあ。

大宮♡有田、BL風味の大陸戦記?『兵隊やくざ殴り込み』

基本情報

兵隊やくざ殴り込み ★★
1967 スコープサイズ 89分
原作:有馬義頼 脚本:笠原良三、東條正年 撮影:武田千吉郎 照明:伊藤貞一
美術:下石坂成典 音楽:鏑木創 監督:田中徳三

兵隊やくざ 殴り込み [DVD]

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感想

兵隊やくざシリーズ第七作目。毎度、大した物語は無いのがこのシリーズで、クライマックスの戦闘場面も当時の大味なアクション映画でお馴染みの適当に撮った戦闘場面の素材を適当に繋いだだけの散漫な作りで、スリルもサスペンスもあったものではない。これもこのシリーズの恒例で、同様の素材でも東宝だともう少しましな活劇になる。岡本喜八にしても福田純にしてもね。
■有田上等兵と大宮一等兵がコンビでいると始末に負えないと、有田は暗号教育を受けるという名目で転属させられるというのが大きなポイントで、引き裂かれた二人は、というか特に勝新演じる大宮は大いに煩悶する。そして、遂に敗戦を迎え、戦後という混沌に投げ込まれるところで映画は終わる。実にあっさりと終わってしまうのも、このシリーズらしいこだわりのなさ。もっと盛り上げようがあろうものを。
野川由美子がお馴染みの従軍慰安婦、ただし士官専用の高級慰安婦として登場するが、ほんとに顔見世程度の出番で、ゲストスターにしては生かされない。日活の『賭場の牝猫』シリーズなどでは実に丁寧な演出と撮影で、これ以上ないくらいに綺麗に魅力的に撮ってもらっているのに、まあ雑な扱いで気の毒というか勿体ない。こういうのを役不足というのですよ。岩崎加根子なんて謎のインテリ娼婦ですからね、東映ならもう少し脇役を丁寧に描くが、これも中途半端に投げっぱなし。
■他には南道郎が演じるあくの強い意地悪な曹長が出色で、一番の儲け役だろう。あの独特の潰れただみ声が怖いよね。安部徹とか小松方正とか稲葉義男は出てますよという程度の扱いだもんね。
■戦争は終わったけど、シリーズはまだ続くのだった。。。正直、苦しい戦いです。永田社長。

タマミ、おそろしい子!『のろいの館』

楳図かずおの『赤んぼ少女』を遂に読みましたよ。でもタイトルが違います。秋田書店から出すときに改題したそうです。その後の文庫等は『赤んぼ少女』に戻ってますね。
■『のろいの館』はお馴染み成長しない少女タマミの悲哀を描く怪奇ロマンで、映画版『赤んぼ少女』の残念な部分の原因がはっきり理解できた。原作では最初は赤んぼの姿で登場して、その特異なキャラクターを徐々に明かしてゆく作劇になっているのだね。這い這いしかできないのかと思えば、すっくと立って歩きだすし、急に流暢に言葉を話し出すし、そのあたりの奇怪さと可笑しみが原作漫画の優れたところなのだ。だから『蛇娘と白髪魔』の方がタマミの怖さによく迫っている。
■しかも、タマミは姿形は赤んぼのままなのに、知性は大人で、美しいものや幸福に嫉妬する歪んだ性格も大人のものだ。そして、話せるがゆえにクライマックスの生い立ちの哀しみが胸に迫る。主人公は健康で美しい葉子ではなく、どこの誰が生み捨てたのか定かでない、この世界全体に唾棄された、呪われた子タマミなのだ。しかしその怪異な姿とこの世界で善とされるものへの嫌悪と呪詛は時代を超越して深い悲しみを普遍的に投げかけてくる。
■後半に登場する探偵趣味の高校生が実に良い感じで、ご都合主義的に立ち回ってくれるのが楽しくて最高ですよ。映画化するならこういうところをぬけぬけと見せ切らないと!まあ現在のドラマツルギーではバカにされるところだけど、演出で押し切らないと突き抜けた笑いと痛快さは生まれない。映画版『赤んぼ少女』では斎藤工が同様の役回りをよく演じたが、原作の方が良いよなあ。
■それにしても楳図かずおの筆致のエロさには感嘆するなあ。主人公というか、狂言回しじゃないかと思うけど、葉子ちゃんの幸福そうなラストカットの絶妙な右腕のポーズとか肉付きの柔らかそうな曲線とか、なんですかね、この筆遣いの色気は。当然のことながら、気がふれた母親の艶々した黒髪のほつれ毛とか、定石ながら大変な艶っぽさですね。
■『怪談』は雪山の山小屋で吹雪を避ける5人の男女が眠って凍死することを避けるために順に自分の経験した恐怖体験を語るという百物語スタイルの怪奇ドラマで、個々のエピソードには元ネタがあるが、楳図かずおらしい天才的な着想が盛り込まれた正統派の怪奇ロマン。
■牡丹燈籠を下敷きにして何者かの精が男のもとを訪れる話も、実にいい味の捻りだし、雪女を下敷きにした「生きている雪」の物語りも、小屋の戸の隙間から吹き込む雪が積もって次第に人が伏した姿に変化してゆくプロセスをたっぷりとした筆致で描くあたりが、もう名人芸で、雪女の伝説の翻案は多数あるが、傑作の部類だろう。
■いまのVFX技術があれば、ほぼそのままオムニバス映画化できるだろう。60年代の初出時にはオムニバス映画が流行っていたから、その線を狙ったものだろう。
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具体的に訳は言いませんけど、とにかくだまって観るべき映画。コレット=セラのサスペンス映画の出世作。ラストは未公開バージョンのほうが凄いと思うけど。母親役のヴェラ・ファーミガの色っぽさも楳図的かもしれないなあ。
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赤んぼ少女: 楳図PERFECTION! (ビッグコミックススペシャル)

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赤んぼう少女―楳図かずお作品集 (角川ホラー文庫)

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日傘と発破(?)が織りなす前衛的メロドラマ『情炎』

基本情報

情炎 ★★
1967 スコープサイズ 98分 
原作:立原正秋 脚本:吉田喜重 撮影:金宇満司 照明:海野義雄
美術:梅田千代夫 音楽:池野成 監督:吉田喜重

あの頃映画 「情炎」 [DVD]

あの頃映画 「情炎」 [DVD]

 

感想

立原正秋直木賞受賞作『白い罌粟』という小説の映画化だけど、松竹は配給だけで、映画の製作は現代映画社が担当している。おかげで明らかに低予算映画で、ほぼロケとロケセットだけで撮られている。ヌーベルバーグというよりも、文藝エロス映画を期待されていたのだろう。一種の文藝ロマンポルノであり、実際、後年の日活ロマンポルノのお手本にされたのではないか。
■多情な母(まさかの南美江!)の事故死のあと、母の元情夫(出た!木村功)の彫刻家に接近する娘((人妻)茉莉子です)は導かれるように岬の洋館で逞しい土工(悦史!)に身をかませる。。。というプロットだけで、まったくロマンポルノですが、ヌードは出ません。エロス要員のしめぎしがこも脱がないし、岡田茉莉子は当然のこと、肌を見せない。かわりに高橋悦史がもろ肌脱ぎます!
吉田喜重のお馴染みの現代音楽的な不協和音の伴奏に沿って、一人の女の性と人格の目覚めが描かれる。それは憎み合う夫との夫婦生活に疲れた欲求不満のはけ口にも見えるし、個としての人格の励起にも見えるし、そうした人間心理の描写ではなく、前衛的アートの見本市にも見える。実際のところ心理的なメロドラマとしてはあまり説得力がないので、前衛的映像の展覧会に見えてくる。
■いつものように映像は全体に白っぽく、当時の大映とか日活の職人が作りこんだ諧調豊かなグレトーンや艶やかな闇とかがこってりと乗った贅沢なモノクロ撮影の重厚さとは根本的に異なり、もっと即興的でドキュメンタリーなルックだ。
■特に切れ味が鋭いのは、彫刻家を訪ねて採石場に足を踏みれた茉莉子はトレードマークの日傘で静かに歩いているのに、その背景では発破のダイナマイトが盛大に爆発しているというシュールな場面だろう。当然爆発音はオミットされ、人妻茉莉子の心象風景として何か大きなものが静かに崩れ落ちているわけだが、観たこともないトリッキーで豪快な映像だ。当然特撮でも合成でもなく、実写撮り切りなのだ。吉田喜重、なに考えてるんだ...(続く)