お待たせしました!ついに電子書籍『超特撮 vol.2』刊行!

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ついに『超特撮:日本特撮映像発達史』シリーズ第二巻の刊行です!

■お待たせしました!『超特撮 vol.2』が、やっと出来上がりました。本当なら昨年中に発行する予定だったのですが、昭和男子ならではの家庭の事情がいろいろと錯綜してなかなかまとまった時間がとれませんでした。昭和男子の辛いところですね。。。
■しかも、そうこうしているうちに、突然洋泉社から『平成大特撮』が出版されたりするので大いに焦りましたが、本書では「昭和」の終わりから「平成」にかけての時期を扱っているので、内容的にほとんど重複はないのでした。

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嗚呼、鹿島の海が逆流する...鹿島港開発の面白すぎる理想と現実!『甦える大地』

甦える大地 [DVD]

甦える大地 [DVD]

  • 発売日: 2013/03/20
  • メディア: DVD

基本情報

甦える大地 ★★★☆
1971年 スコープサイズ 119分 @APV
原作:木本昭次、脚本:猪又憲吾 撮影:金宇満司 照明:椎葉昇 美術:坂口武玄 音楽:武満徹 監督:中村登

感想

石原プロがなぜこんな題材に挑んだのか興味が尽きないが、原作者が『黒部の太陽』の人だったからだろうか。高度経済成長の時代、砂地と貧困が支配する不毛の地・鹿島に人工の堀込湾として鹿島湾を設置し、工業コンビナートを誘致して、工業と農業の両輪の繁栄を目指して「農工両全」のキャッチフレーズで進められた鹿島湾開発の理想と現実の姿をシニカルに提示する、意外にも見ごたえある社会派映画の良作。
■お話の前半はいかにも図式的な構図が敷かれて、岡田英次が演じる県知事が実質主役なので、裕次郎の影も薄いし、どうなることかと気をもんだが、後半はしっかり裕次郎が主役として動き出し、物語のテーマのせり上がってくるから、意外にも良くできた脚本なのだ。冒頭に置かれた治水工事の大失敗が終盤でちゃんと呼応してくる脚本構成は正攻法で見事。
裕次郎は県庁職員を演じ、県知事の理想論での土地買収が暗礁に乗り上げるとかねてから目を付けていた建設省の辣腕役人を県に迎える。この役人を三國連太郎が例によってあくの強い演技で演じ挙げて、後半の見せ場をさらう。実際、実にカッコいい。札束で農民の面を張る手法で一気に買収を成功させると、理想論に固執する裕次郎と対立するのもリアルな見せ場。しかも農民に用意された替地は例によって荒れ地で、さすがにまずいと思った裕次郎は養分を含んだ川底の土壌をくみ上げてパイプラインで替地に誘導して放出するという荒業を成功させる。
■鹿島湾と鹿島コンビナートの開発は成功した。工業地帯は整備され稼働を開始したが、一方替地に移った農民たちはあぶく銭で歓楽街を作り出し、「緑の楽園」になるはずだった農地は顧みられず荒廃し、裕次郎はこんなはずではなかったと悩む。このあたりの捻りは、史実に基づくものだろうが、よく描いたものだと感心した。実際、緑の楽園ならぬ鹿島パラダイスという歓楽街が誕生したらしい。
■困惑する裕次郎が馴染みの女教師司葉子に心情を吐露する場面は、意外に低予算のこの映画の白眉といえるステージ撮影で、画面の奥に鹿島コンビナートの毒々しい夜景をミニチュア的に作りこんだ情景を捉えながら、裕次郎が背負っていかねばならぬ羽目になった鹿島開発の原罪を赤々と浮き彫りにする。その功罪を台詞だけでなく、映像と画面構成で一目瞭然に表現した大胆な美術装置には驚嘆した。基本的に低予算で現物主義の撮影が行われた本作で、異様に気合の入った美術装置だった。
■土地買収のために不眠不休で働きとおし、汚い手もいとわなかった、そうしなければ食えなかった若い者たちが開港記念式典にも呼ばれず、次こそは俺たち自身の歌を歌おうじゃないかと自らを慰める場面も点描ながら、作者の視点の誠実さを感じさせて、グッとくる良い場面。
■ただ残念なのは冒頭の運河工事の失敗のスペクタクルや中盤の試験提を破壊する大嵐といった美味しい場面をちゃんと特撮で描き出さないところで、基本的に実物主義でリアルに行くという石原プロの意気込みはわからんでもないが、そこは特撮がないと残念ながらドラマにならない。運河の開通式で海から大波が逆流して人夫たちが流されたりするのも、実に稚拙なモンタージュでかなりヒドイいわけで、ちゃんとミニチュアセットを組んで適切に合成してロケと絡めれば、波の威力を立体的に描けるのに。試験堤を破壊する場面も実物では描けないから省略してしまうしね。そこはちゃんとミニチュアカットを挿入しないとお話にならない。例えば円谷英二の『箱根風雲録』の箱根用水開通の特撮シーンをみれば、特撮の必要性と映画的効果のほどは歴然なんだけどね。昭和46年当時はテレビで第二次怪獣ブームが巻き起こる時期なので、各社とも映画の特撮場面だけを請け負う余力は無かったのかもしれないがね。
■高度経済成長期のなかでも異色の理想主義的な開発が行われた鹿島湾工事だが、その結果は決して人間の思い描いた理想通りにはいかず、苦渋を飲み込んだ裕次郎の眉間は深いしわが刻まれるのだった。ほとんど忘れられた映画で、実際DVDが出るまで存在自体も知らなかった映画ですが、意外に上出来な社会派映画なので、アマゾンプライムビデオで是非観てね!

甦える大地

甦える大地

  • 発売日: 2017/12/28
  • メディア: Prime Video
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想定外の本格的音楽映画!『嵐を呼ぶ男』

基本情報

嵐を呼ぶ男 ★★★
1957 スコープサイズ 100分 @APV
原作:井上梅次 脚本:井上梅次、西島大 撮影:岩佐一泉 照明:藤林甲 美術:中村公彦 音楽:大森盛太郎 監督:井上梅次

感想

北原三枝が男勝りの音楽プロモーターを演じてタイトルトップだが、実質的にこれは狂言回しで、本当の主役は当時売り出し中の裕次郎。で、なんとなく音楽活劇なんだろうと思い込んでいたが、実は『エデンの東』の翻案で、ドラマ―人気投票全国一位になっても母親に認めてもらえず拗ねる兄が弟の作曲家デビューに陰ながら尽力し、その成功の陰で自らは音楽家としての生命を喪い、同時に母親の承認を得るという、いじましいお話がメインストーリーで、クライマックスはオリジナルなジャズ風交響曲の演奏会という、完全に堂々たる音楽映画の構え。
裕次郎北原三枝の恋愛劇はあまり発展せず、クライマックスはコンサートと母親の謝罪というわけで、北原三枝の存在はすっかり薄くなってしまう。裕次郎のドラムのライバルのチャーリーを演じるのは笈田敏夫という人で、実際のジャズ歌手。ドラムも本人が叩いてますよね。ただ、裕次郎の恋のライバルという風情ではなくて、単に気障な優男という感じ。裕次郎の弟役も青山恭二という人だけど、あまりに地味でこれまた配役に難あり。そもそも北原三枝のモデルは当時の渡辺美佐らしく、非常にサバサバとした理知的で勝気な現代的な女性像として魅力的なんだけど、ドラマ的にあまり生かされず、勿体ない感じ。一方で当時の日本ジャズシーンの有名どころがそこここに登場して、音楽映画としての質を贅沢に担保する。留置場の場面ではフランキー堺カメオ出演する!
■音楽映画と『エデンの東』を合体させた趣向はあまり成功しているとは思えないが、日本映画の黄金期ならではの豪華な舞台装置の意匠性や贅沢な音楽演奏に堂々と構えたセット撮影など、配役は小粒ながら、実に贅沢な映画。60年代どころか、まだまだ50年代で、その先年に経済白書で「もはや戦後ではない」と宣言された経済成長うなぎ上りのイケイケの時代、そんなころのド派手なネオンサインが煌びやかな夜の東京のゴージャスさが心地よく伝わってくる。それは夢のように眩しく見える。

嵐を呼ぶ男

嵐を呼ぶ男

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video

参考

さいきん井上梅次の映画が続くなあ。でも昔は土曜ワイドなんかで毎週のように新作を観ていたものです。
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同じ時代の夜の東京のけばけばしさ、毒々しさを退廃の悪夢のように描いた傑作がこちら。
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ゴージャスな夜の東京といえば、どうしてもこの映画を忘れてはなりません。ミニチュア表現によるザ・東宝の夜。贅の極み。
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ナベプロ創世記の、これも結構贅沢な劇化。映画化してほしいなあ。
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息をのむ、昏い慟哭『夜霧のブルース』

基本情報

夜霧のブルース ★★★★
1963  スコープサイズ 103分 @DVD
原作:菊田一夫 脚本:国弘威雄 撮影:高村倉太郎 照明:藤林甲 美術:木村威夫 音楽:伊部晴美 監督:野村孝 

夜霧のブルース [DVD]

夜霧のブルース [DVD]

  • 発売日: 2005/07/08
  • メディア: DVD

感想

■この映画を観るのは、3回目くらいなんだけど、特に好きな映画というわけでもなかったんだけど、なぜか心引く不思議な映画だ。そして、今回改めて観ると、徹底的に暗くて、明らかに日活ムードアクションの世界をはみだしている。脚本は菊田一夫の「長崎」という戯曲を下敷きにしながら、ほとんど国弘威雄のオリジナルに近いようだ。国弘といえは橋本忍の弟子で、東宝でも共作が多かったし、東宝と契約も結んでいたらしいが、本作は珍しい単独作で、本人としてもかなりの意欲作ではないだろうか。
■戦時中に上海で生まれ、何不自由なく暮らしていた少年が、終戦後中国人に両親を惨殺され、戦後の神戸でやくざの幹部として出世するが、幼いころの幸福だった時代の記憶につながる賛美歌に惹かれてオルガン奏者の娘と恋に落ちる。組を抜けてかろうじてたどり着いた横浜の荷役の仕事にも慣れ、平凡な、人間らしい小さな幸福に浸っていた男に最悪の不幸が訪れる。復讐に燃えた男は再び修羅の血をたぎらせるという、ある意味やくざ映画らしいやくざ映画だが、師匠の橋本忍の構築に倣った回想形式が非常にユニークな効果を上げている。本来なら、不幸なカップルの悲劇として泣かせる映画になるはずなのだが、そうしたメロドラマ性を明確に拒否している。裕次郎とルリ子のムードアクションなので、本当はそうなるべきなのに、映画のムードは薄暗くささくれ立っている。
■この頃の裕次郎はすでにすっかりぽっちゃり顔で、無残な青春の痛みを演じるにはさすがに無理があり、どうしてもミスキャストの印象がある。小さなアパートでのままごとのようないじましい幸福な生活はさすがに貫禄の出た裕次郎では苦しくて、赤木圭一郎なら、まさにピッタリだったろう。早世が惜しまれる。
■ただ、とことん暗くシニカルな作風は徹底していて、主人をなくしたラストのアパートの部屋を映し出すラストは何度か繰り返してみていると、安易な涙を拒否するリアルな厳しさを訴えてくる。小さな新聞の記事をよく読むと、裕次郎に刺された悪の首魁は「重症」とされ、どうやら死んではいないようなのだ!やるせなさすぎじゃかいか!
■演出的には港湾労働者の暴動寸前という群衆シーンのボリューム感や熱が十分に演出されていないし、ルリ子が殺害される場面ももう少し丁寧に撮ってほしいところ。野村孝は逸材なので、当然悪くなないのだが。それにガスバーナーで拷問されたにしては裕次郎に傷が残っていないのも不自然で、たぶん脚本では顔に火傷が残って、そのせいでまともな職につけないといった展開があったのではないだろうか。兄貴分の小池朝雄のあくどさも見事なもので、小池朝雄史上に残る名演でしたね。
■これ、ほんとにオリジナルの脚本が読みたいなあ。脚本は完成品とはまた違うニュアンスがある予感がする。そして、もっと暗くて辛い物語という印象になる気がする。名曲「夜霧のブルース」がなんとかムードアクションに転化してくれているが、歌謡曲のない脚本はもっと陰惨だったに違いない。そして、韓国映画でリメイクすると絶対傑作になると思うぞ。
■上海での母の死とルリ子の死が重なり合って、男の幸せは二度までも完膚なきまでに破壊される。その時に、男には何ができるのか。その時に、それでも男にとって生きる意味はまだあるのか。過酷すぎる試練は神が男に課したものなのか、風俗的なやくざ映画の体裁のなかに、一人の男と神の対峙が描かれる。なぜかそんな孤高の日活ムードアクションなのだ。

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僕らの好きだった川崎敬三。今日もどこかでひとでなし!『閉店時間』

基本情報

閉店時間 ★★☆
1962 スコープサイズ 99分
原作:有吉佐和子 脚本:白坂依志夫 撮影:中川芳夫 照明:久保田行一 美術:間野重雄
音楽:中村八大 監督:井上梅次

閉店時間 [DVD]

閉店時間 [DVD]

  • 発売日: 2017/12/22
  • メディア: DVD

感想

■デパートに勤務する高校の同級生だった三人娘のそれぞれの仕事と恋の行方が描かれるライトな風俗ドラマの小品。三人娘が、若尾文子野添ひとみの二人はいいとして、江波杏子が入っているのが異色。まだデビュー間もない頃なので、大抜擢という感じだなあ。
若尾文子がボランティアで盲人向けの朗読録音を行っているというのが当時らしい珍しい風俗で、その憧れの声優の師匠が大木実というのも珍味。実際、清潔感のある渋い男前を演じてハマっている。女性の社会進出を猛烈にアピールする、当時の意識高い系の女史を演じて、白坂脚本らしい早口の台詞が痛快。相方は川口浩だしね。
■そのなかでは江波杏子が異色で、派手好きで男出入りの多い発展家のギャルを演じる。見た目のまんまという配役だが、確かに違和感がない。しかも、ラストではバー勤務に鞍替えして黒い和服で登場すると既に女賭博師の風情なのだった。まだ二十歳そこそこなんですが。しかも、その恋愛の対象が気障で色男な広告マンの川崎敬三なのだから、恋の行く末は推して知るべし。まさにそのとおりの人でなしぶりを披露するから、川崎敬三ファンとしては快哉川崎敬三は単純な二枚目や気弱な二枚目も味があるが、こうした冷血漢、ひとでなしを演じると最高にハマる。森雅之なんかも同様の役を知的に演じるが、川崎敬三の方がもっと庶民的でユーモラスなので身近な小悪党って感じがして、ユニークな味なのだ。
■映画としてはいかにも軽妙な面白さだけど、アグファカラーの透明感ある紫の発色が綺麗で贅沢でうっとりするし、中村八大の主題歌も傑作なので音楽映画としても捨てがたい味があり、昭和30年代の活気ある夜のムードがひたすら羨ましい。

参考

今回は川崎敬三で括ってみましたよ。山本薩夫の『傷だらけの山河』も実に良い演技なんだけど、ちゃんと記事を書いていないなあ。
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母さん、僕のあの”革命”、どうしたんでしょうね...『化石の森』

基本情報

化石の森 ★★☆
1973 スコープサイズ 118分
原作:石原慎太郎 脚本:山田信夫 撮影:岡崎宏三 照明:榊原庸介 美術:粟津潔
音楽:武満徹 監督:篠田正浩

化石の森 <東宝DVD名作セレクション>

化石の森 <東宝DVD名作セレクション>

  • 発売日: 2019/12/18
  • メディア: DVD

感想

医学生ショーケンは再会した高校の同級生の娘が変態上司にストーカーされているのを知ると新開発の農薬を使って毒殺することを決意する。しかし縁を切ったはずの母が田舎から上京して彼に付きまとい始めると...という犯罪ドラマを心理劇として構築した青春映画。
■主演はショーケンですが、脇を文学座一派で固めた配役が妙で、母親は杉村春子だし、ヒロインは二宮さよ子だし、小児がんの子供を抱える薄幸な主婦が八木昌子で、しかもヒロインたちは惜しげなく脱ぎます(春子は除く)。二宮さん、確かにスレンダーでスタイル良いし、すべすべで綺麗。いい時代だったなあ。
■お話は、石原慎太郎による学生運動の総括といった図式劇で、学生運動の発端が多くは医学部の制度腐敗問題であったことを踏まえて、苦学生ショーケンが死んだように生きている大人たちの住む「化石の森」に対して殺人という抵抗を試みる。ところが、その鬱屈した怒りに対して、女たちが寄ってたかってその精神を骨抜きにかかる。
■田舎の母を捨てて都会で生きる決心をしたのに、母との抜き差しならぬ血縁はどこまでもついて回るし、最終的にショーケンは母が子供の手から危ないおもちゃを取り上げるように、息子の”革命幻想”を打ち砕き、彼は再び母の胎内からやりなおす羽目に陥る。
■しかし、ホントはもう少しリアルに描いてくれないと切実さが伝わらないところがあり、そもそもショーケン苦学生のはずなのにアルバイトしている気配も無いし、篠田正浩の描き方は中途半端。青春映画のはずだが、ヒリヒリする心の痛みが伝わらないところが、この映画の弱点だろう。
■なんといっても見どころは、良心の呵責に苦しむショーケンを宗教に誘う教団の男を岸田森文学座!)が演じているところで、いつものように1シーンの登場だが宗教と医学をめぐる問答があって台詞は多く、岸田森メソッドの見本市といった雰囲気で見ごたえ十分。実相寺昭雄の映画用に剃り上げたリアル禿頭で、キリスト教のようでも神道のようでもあるいで立ちからして怪しさ満開だが、実に素晴らしい演技。
杉村春子が二宮さよ子に、女は男を通して世間をみるのよと諭す場面が、さすがに春子の貫禄十分で名シーンだったけど、あまり全体の中で生きていない気がするなあ。勿体ない。

参考

青年の革命幻想を打ち砕くのは常に田舎のおっかさんなのだ!革命運動が挫折する運命にあるのは、お母さんを説得する言葉を見つけられなかったからだ!(ホントか?)
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俺の眼を見ろ、何も言うな!『白鯨との闘い』

基本情報

In the Heart of the Sea ★★★☆
2015 ヴィスタサイズ 121分 @APV

白鯨との闘い [Blu-ray]

白鯨との闘い [Blu-ray]

  • 発売日: 2016/11/16
  • メディア: Blu-ray

感想

メルヴィルが小説『白鯨』を書く際に取材したエセックス号の実際の沈没、遭難事件の顛末を描いた、一応実録映画ということになる。正直なところ2/3くらいまでは大味な海洋冒険映画に終始してしまうのかと心配したが、最終的に非常に映画らしい映画、これぞ映画の話術というオーソドックスなアメリカ映画になっている。さすが、ロン・ハワードと感心しました。
■ナンタケット島の名士出身の船長と外地から流れ着いたたたき上げの一等航海士がどんな対立とドラマを繰り広げるのかと思いきや、案外ドラマは淡白であまり深堀の進展をみない。しかしこの映画の本当の見せ場は、白鯨にエセックス号を轟沈させられた後の漂流の描写にあるのだった。小説をもとにした『白鯨』は巨大な白鯨との一騎打ちがクライマックスになるが、この映画の真の狙いとテーマはその後に明かされる。だから、海洋冒険映画の部分は非常にスピーディでやたらと快調なのだ。この映画、実は海洋アドベンチャー映画ではなく、漂流映画だったのだ。
■さらに過酷な漂流に加えて、白鯨は悪魔のように執拗に彼らを追い詰めて狩る。しかしその凶暴さには意味づけがあり、そのことをクライマックスで主人公は白鯨の眼から悟ることになる。このあたりが反捕鯨国ならではの甘さにも感じさせるが、映画の構成としては実によくできているから、納得せざるを得ない。主人公たちは地獄のような漂流を経ることで、神の与えた試練の意味を知ることになるのだ。鯨を狩ってその身体を資源として利用することと、漂流中に彼らが生き延びるために経験する残酷な試練が対置されるという構築の妙。これがずれなければ、この映画の成功は確実だったわけだ。
■映画のラストで地下から石油が沸いたことが提示され、鯨油の時代が終わったことをサラッと示すあたりも実に心憎い仕掛けで、ロン・ハワードの職人芸でテンポよくお話がスムーズに進んでゆくのでなんとなくサラッと観られてしまう映画だが、非常に普遍的で重いテーマと時事的なテーマを包含した巧妙な映画なのだ。

白鯨との闘い(吹替版)

白鯨との闘い(吹替版)

  • 発売日: 2016/04/20
  • メディア: Prime Video

参考

そういえば最近ロン・ハワードの映画って観てなかったんだなあ。直近でこの映画ですよ。これも実に良い映画で、オーソドックスで誠実な映画。
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ほんとに平均的な日本人はこの映画を理解できるのか!?『映画 聲の形』

基本情報

聲の形 ★★☆
2016 ヴィスタサイズ 129分 @NHKBS
原作:大今良時 脚本:吉田玲子 音楽:牛尾憲輔 キャラクターデザイン、総作画監督西屋太志 監督:山田尚子

映画『聲の形』DVD

映画『聲の形』DVD

  • 発売日: 2017/05/17
  • メディア: DVD

感想

■ホントにこの映画、なかなかの難物で、おそらく原作漫画を読んだ人しか観ていないのではないか。ホントに難しい映画なんですよ。初見の観客には到底理解できない部分が多々あり、後で調べると原作漫画にこういう描写があり、映画では省略されたみたいな話が出てくるわけです。
■そもそも、主人公と一緒に住んでいる女性が母なのか姉なのか判然としない。姉も登場するけど何故か明確に姿を見せないし、母にしては若すぎて、もうもモヤモヤしっぱなし。高校生の母があんだけ若いんだったら、姉は少女なのか?とかいらんところに気が行って、集中できないぞ。普通、映画では登場人物整理するだろう。ああ、モヤモヤする。
■そもそも、聴覚障害がある自分を虐めていた男の子を好きになるという感情が普通には理解できないうえに、成長後の高校生になった時点でも、何を考えているのかが分からない。というか表現されない。しかも唐突に自殺を図ると、アクション映画のように主人公に救われて、身代わりでマンションから主人公が落下するという、思いっきり空想的な超展開が割って入り、どのあたりにリアリティラインがあるのか、判然としない。このあたり、ひたすら唖然とするばかり。
■ちなみに彼女、彼に補聴器を8個破壊されて、約170万円弁償させてますからね。(もちろん、弁償させたのは彼女の母ですが!)普通に考えて納得できる人間関係ではない。成瀬の『乱れ雲』ならちゃんと誰でも納得できるように、加害者と被害者の恋愛が描かれるのにですよ!
■これ吉田玲子が脚本化しているのだが、いつものような構成上の大鉈が振るえていない。原作重視でその余地がなかったためだろうか、あるいは長大な脚本を無理やり圧縮したのかもしれないといい方に邪推する。
■ナイーブないじめや聴覚障害の問題が扱われているし、アニメ技術の凄さは誰の眼にも明らかなので、そうした志とテクニカルな高みに感動するところは分かるけど、何も知らない観客が理解できるようには作らないとだね。。。
■この映画が普通に読解できるとすれば、日本の映画ファンの映画リテラシーは世界一高いと判断せざるをえないが、ホントにそんなことありうるのか??

参考

こちらはテレビ版観てなくてもオーソドックスに理解できるしウェルメイドなアニメ映画なのに。
maricozy.hatenablog.jp