☞☞『超特撮 vol.1 』発売中☜☜

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=目次=

  • 『超特撮』ってなに?
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マーク・ローレンスの洒脱さを堪能した大人の映画『Re:LIFE〜リライフ〜』

Re:LIFE~リライフ~ [DVD]

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基本情報

The Rewrite ★★★☆
2014 スコープサイズ 107分 @APV

感想

■あの『デンジャラス・ビューティー』シリーズの脚本を書き、『トゥー・ウィークス・ノーティス』を監督したマーク・ローレンスの脚本、監督作なので、はずれのはずがないわけですが、期待通りに軽妙で愉快な快作。
■傑作映画の脚本を書いたが現在はぱっとしない脚本家が田舎大学の脚本コースの教育を担当することになり、出会ったユニークな学生たちに教えられて新たな人生を踏み出す軽薄な中年男を魅力いっぱいに描き出す。もちろん、そこはヒュー・ハドソンですから、単なるセクハラ言動もスマートに見えてしまう。『ラブソングができるまで』『噂のモーガン夫妻』でもコンビを組んでいるので、もう呼吸のあい方は抜群で、とにかく軽妙な演技と軽快な編集で、春の小川のようにサラサラ流れる気持ち良い映画なのだ。
■このサラサラ淀みなく流れる様子は『トゥー・ウィークス・ノーティス』でも顕著だったわけだが、マーク・ローレンスの持ち味で、音楽の構成と編集が抜群の軽み。ああ、久しぶりに映画らしい映画を見たなあと新年そうそう堪能した。
■雨ばかり降る田舎町の子持ちの大学生をわれらのマリサ・トメイが演じて、これまたチャーミングこの上ない演技で、もう好感度二百パーセント。大人どおしの恋もさらりと描くのがマーク・ローレンスの持ち味で、互いにいい大人なので激しく身も心も焼く恋ではなく、容姿云々でもなく、なんとなく考えていることのセンスや波長が合って、言いたいことを遠慮なく軽く言い合える関係って、一期一会の関係で大切だよねというドラマがすんなりと腑に落ちる。そうした大人の男女の人間関係が心地よい。
■舞台となる街がロッド・サーリングの出身地で、トワイライトゾーンのロケにも使われた回転木馬があるというあたりもマニア心をくすぐる趣向で、傑作とされる「過去を求めて」(未見!観たい!)のエピソードが援用されているのも上手くて最高。ただ、終幕のジェーン・オースティンが専門の女教授との和解の部分についてはあまり腑に落ちなかったので、ちょっとご都合主義に見えてしまうのは残念だったなあ。

残念ながら終幕で腰砕け『未来を花束にして』

未来を花束にして [DVD]

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基本情報

Suffragette ★★★
2015 ヴィスタサイズ 106分 @APV

感想

■20世紀初頭、イギリスでの女性参政権運動は苛烈を極めた。サフラジェットとよばれるその過激な運動に名を連ねた女たちの姿を描く堂々たる社会派映画。
■パンクハースト夫人が思想的指導者とされる、爆弾闘争さえ辞せぬ手段を択ばぬ暴力的な女性参政権運動に心ならずも巻き込まれて、家族と引き離され、度々の逮捕拘留を経て、主人公が女性闘士へと変貌してゆくのが主筋で、興味深いエピソードがいくつも盛り込まれているので刺激的なのだが、終盤のエミリー・デイヴィソンの事故死(?)については、史実が原因不明なので、仕方ないもの、ドラマとしては煮え切らない印象を与える。
■第二幕くらいまでは好調なのに、終幕で失敗しているという印象で、扇動者パンクハースト夫人がもっと出てくれば面白いはずだし、主人公が闘士として成長しても、過激な運動自体があまりにも暴力的なので、その運動にたいして素直に賛同できず、運動に対してもう少し批判的な視点があれば共感もできるのだが、そうでもないので、ドラマとしては中途半端で腰砕けという印象。むしろ、そうした過激な政治活動組織にはつきものの、内紛を抽出した方が面白いはずだな。主人公が活動家にまるまでが前半、運動に裏切られて脱落してゆくのが後半みたいな映画の方がリアルで面白いんだけど、そんな映画は邦画にいくつもあったなあ。

全てが古臭い時代劇『新選組』

基本情報

新選組 ★
1958 スコープサイズ 94分 @NHKBS
脚本:高岩肇 撮影:三木滋人 美術:鈴木俊孝 照明:山根秀一
音楽:万城目正 監督:佐々木康 

感想

実は女性映画の端正な傑作『女の賭場』

女の賭場 [DVD]

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基本情報

女の賭場 ★★★★
1966 スコープサイズ 84分 @DVD

感想

■昔テレビで観たときはカット版だと信じたのだが、実はオリジナル版の時点で不自然なシーン繋ぎがいくつかあり、劇場公開版が相当強引な編集になっていたようだ。オリジナルの脚本が読みたいなあ。
■再見すると、とにかく傑作で、あまり正当に評価されていない気がするのだが、田中重雄は凄い腕を持っている。特撮ファンはそのことを血とエロスのノワール怪獣映画『ガメラ対バルゴン』で知悉しているのだが、本作を観ると、ホントに名人。本作の江波杏子はむしろ『ガメラ対バルゴン』のエキゾチックなエロスは禁じられていて禁欲的に描かれる。ヤクザと堅気の境界線上でなんとかバランスを取ろうとする娘を鋭角でドライな色気で凛々しく演じる江波杏子は確かに不世出のキャラクターだ。若尾文子ではさすがに無理だよなあ。
■対する現代ヤクザの渡辺文雄も素晴らしくて、大島渚の映画よりずっと生き生きしているし、色気がある。子どもの頃から差別されて生い立った屈折した心情を滔々と吐露するナイトクラブの場面は台詞も演出も音楽も最高で、見事な名場面。情婦のダンサーがキツイ視線を投げかけるけど、結局台詞もない。なのに、劇的にはちゃんと成立しているし、心理描写になっている。田中重雄、凄いと思う。
■一方で完全に単なる脇役なのに何気ない小芝居で小悪党ぶりを発揮する藤山浩二の拘りには感心する。夏木章も重要な役で登場するし、『ガメラ対バルゴン』のファンは必見ですよ。そして、ラストの江波杏子の表情と音楽の転調で活劇映画のクライマックスが成り立ってしまう奇跡に震えてほしい。

戦後17年、ヒロシマの見えない傷痕『その夜は忘れない』

その夜は忘れない  [DVD]

その夜は忘れない [DVD]

基本情報

その夜は忘れない ★★★
1962 スコープサイズ 96分 @DVD
脚本構成:水木洋子、脚本:白井更生、若尾徳平、撮影:小原譲治、照明:木村辰五郎
美術:間野重雄、特殊撮影:築地米三郎、音楽:團伊玖磨、監督:吉村公三郎

感想

■この映画の企画経緯には非常に興味があるのだけど、当時の雑誌を当らないと詳細がわからない。なんせ、脚本構成を水木洋子が手掛け、脚本はなぜか助監督が書いているという不思議な現象が起こっている。助監督の意欲的なオリジナル作品というわけでもなさそうで、水木洋子が書く予定が、何らかの支障があって直接の執筆は若手に任せたというところだろうか。芸術祭参加の意欲作にしては尺が短いのも謎だなあ。
■戦後17年経った広島に原爆の傷跡を求めてやってきた雑誌記者は、広島の人々が表面上の傷跡を既に克服し、好景気の中で溌溂と生きていることを知り、取材意図の浅薄さを自覚するが、知りあったバーのマダムはABCC(原爆傷害調査委員会)に出入りしていて・・・
■驚くのは、若尾文子が30分以上経過しないと登場しないことで、おかげでそれ以降の風俗的なメロドラマの構成が型通りのものになってしまったのがこの映画の最大の弱点。しかし、メロドラマが動き出すまでの当時の広島ロケが貴重な第一幕の部分が秀逸で、無機質なモノクロ撮影の効果も大きく、原爆被害の痕跡を追って野良犬のように真夏のヒロシマを彷徨う田宮二郎を追った部分が具象と抽象の昇華がユニークに結実している。
若尾文子が登場してから、表面上の逞しさの底に原爆の影響が隠されていることを知るエピソードとなり、広島の河原の石は見た目は普通だが、原爆の高熱の影響で変質し強く握ると脆く崩れ落ちるというエピソードが上手く生かされている。このエピソードは実際にあったことなのかどうか確証が無いのだが、ドラマの構成としてはさすがに上手くできている。若尾文子との思い出をたどって広島の街を今度は取材ではなく、自分自身の大きな喪失感とともに歩く場面、そして、河原の石を掴みながら慟哭するラストは悪くないものの、本当はもっと感動的になったはずだと思う。
■中盤で六本指の赤ん坊の噂を追って取材するシーンが際物で、六本指の掌が作り物で描かれる。特殊撮影の築地米三郎の仕事だろうか。このあたりの際物感があって、本作はあまり顧みられないのかもしれないが、非常にユニークな映画なので必見。広島のロケ撮影と、東宝とはだいぶ雰囲気が違う團伊玖磨のスコアが特筆に値する。

あゝ私もソルのように死にたい『ソイレント・グリーン』

基本情報

ソイレント・グリーン ★★★
Soylent Green 1973 スコープサイズ 97分 @APV

感想

■言わずと知れた、リチャード・フライシャー監督によるSF映画の佳作。超有名映画といっても過言ではないが、なぜか観る機会が無かったもの。今更ながら観たけど、非常に感慨深い映画。
人口爆発と資源の枯渇で終末期を迎えた近未来のNYを舞台に、ソイレント社の重役の殺人事件を追う刑事ドラマになっている。近未来とはいえ、美術装置の未来感はむしろ70年代テイストを素直に反映しており、登場人物の髪型とかも含めて、70年代の終末観を表現した感じだ。撮影のリチャード・H・クラインの重厚なキャメラワークも良い感じで、70年代のファッションを味わう映画でもある。
■ジョセフ・コットン演じるソイレント社重役は何を知ってしまったのか?その種明かしはあまりにも有名だし、主人公の相棒であるソルの終末施設での荘厳な最期も語り草。この場面はテクニカルな趣向としては単純なのだが、今見ると、ホントに一種の宗教的な崇高さと厳粛さを纏っている。ここで最期を遂げることは、すなわち〇〇ということなのだが、それをわかっていても、人生の最期を自分の意志で安楽死を選択することは理想的な死の姿に見える。生まれ方を選ぶことはできないが、人間は自分の死に方を選ぶことはできるのだ。その意義について深く考えさせられる。
■既に人間を「本」とか「家具」と呼び習わしている近未来、遂に人間を「家畜」とするに違いないと警告して映画は幕を閉じる。映画としてはコクが無く、平凡な映画だと思うが、物語の視点と傑出した名場面の価値はまったく色あせていない。主演がチャールトン・ヘストンというのは、完全にミスキャストだなあ。

これぞ太平洋戦争戦後秘話『儀式』

儀式 [DVD]

儀式 [DVD]

基本情報

儀式 ★★★
1971 スコープサイズ 123分 @APV
脚本:田村孟佐々木守大島渚 撮影監督:成島東一郎、美術:戸田重昌
美術担当:下石坂成典、音楽:武満徹、監督:大島渚

感想

■今更ながらこの映画をピカピカのリマスターで観るなんて夢にも思わなかった。しかも、アマゾンプライムビデオで観ようとは。昔々、たぶん吹田映劇で観た。そしてビデオでも観たはず。なので、今回は3回目の鑑賞。個人的には同じ映画を3度も観るのはかなり特別なことなので、よほど好きなんだね、この映画。自分でも気づかんかった。
■しかし、何度観てもよく飲み込めない映画で、この翌年に撮ったのが『夏の妹』というのもあまりにも何かが分裂している。正直なところ役者の魅力に乏しい映画で、実際、創造社の俳優たちは大島渚の映画に出ているときよりも、他社に出稼ぎして知的な悪役やステロタイプな脇役を演じている方が魅力的なのだ。主演の河原崎健三にしても賀来敦子にしても、ちっとも魅力が無い。桜田家の当主を演じる佐藤慶の貫禄は凄いのだが、乙羽信子なんて見せ場が無くて勿体ない話だし、1シーンのみ登場の原知佐子もいいとろこが無い。殿山泰司って、そもそも台詞あったかね?本作で鮮烈だったのはやっぱり中村敦夫だよね。
■そんな有様で劇映画としての面白みは少ないのだが、冠婚葬祭を磁場として親戚たちが参集することによって、「家」制度なるものが象徴的に象られるという構築になっているようだ。戦争を乗り越えた桜田家が戦後に核となる人間たちを徐々に喪い、滅亡するまでを貴族没落メロドラマではない観念的な”何か”として描き出す。そのすかした描き方の手際に、本公開当時の若者たちは政治的な意味を深読みし、やられたのだろう。でも、正直なところ、もっと上手く描くことができたはずという気がしてならない。
■核となる若者たちを喪ってゆく桜田家の没落、それは満州の大地に生きたまま埋められた、主人公の弟の呪いなのかもしれない。主人公はその弟の声を聴こうと地面に耳を付けるが、何も聞くことができない。なぜなら、日本に捨てられた者たちの呪詛ではないからだ。中村敦夫に仮託される戦後世代の若者たちは自らの意志で「家」を自分に引き寄せておいて、自らと同時に「家」を殺したのだ。だからそこには主人公が仮想するような呪詛はなく、まるで戦中の青年のように、戦後の若者にも捨て身の特攻攻撃があったことを示すのだ。そして主人公は徹底的に鈍感で愚かで平凡であり、唯一生き残る。いや、それこそが満州の大地に埋められた弟の呪いなのかもしれないし、彼が引き受け無ければならない「戦後」という現実なのだ。