こども心が描けたか?橋ものがたり『小さな橋で』

基本情報

小さな橋で ★★☆
2018 ヴィスタサイズ
原作:藤沢周平 脚本:小林政広 撮影:江原祥二 照明:宮西孝明 美術:倉田智子 監督:杉田成道

感想

■同じシリーズの『小ぬか雨』(脚本:中村努 監督:井上昭)『吹く風は秋』(脚本:金子成人 監督:鈴木雅之)は以前に観ていて、わりと良かった記憶がある。特に後者が良かった気がするなあ。主演が橋爪功だし。

■本作はなぜか小林政広が脚本を書いて、浅川マキのフォークソングやクラシックの名曲をふんだんに使った異色作。まあ、シニア向けの趣向ですかね。なので妙に格調が高い気がするのは狙い通り。

■少年の独白を多用して、それが倉本聰みたいなんだけど、気になったのはこども心を描ききれていないところ。江口洋介は時代劇にどうもハマらないし、松雪泰子はおなじみのずっと泣いている演技で、正直に言うと鬱陶しい。この人の限界は、残念ながらキレイすぎることだと思う。もっと地味なおばさんなら、杉村春子になれたかもしれない。といったら逆に褒めすぎ?実際、この役の台詞のニュアンスを見ていると、杉村春子の演じる姿が幻視されて仕方なかった。俺の酔った脳内では杉村春子が演じていたぞ。

■なにしろ映像面では江原祥二と宮西孝明の豪華一流スタッフなので、映像的には非常にリッチで、ところどころに宮川一夫か?というバッチリ決まった絵画的なショットが散見される。その意味ではかなり贅沢な作品。

■でもあくまでドラマの眼目は少年の視点のはずで、無意味に現代的な小顔美少女とラブラブになるのはあまり説得力がないし、ちょっと狙いが違うと思う。こども心が描ききれていないと感じたし、それが一番の弱点だと感じた。原作もホントにあんなオチだったのか?藤沢周平なんだけどなあ。たぶん、脚本家の人選を間違えたのだと思う。

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