基本情報
The Purge 2013 スコープサイズ 85分 @DVD
感想
■近未来のアメリカ、年に一回、殺人を含む犯罪が合法化される夜、助けを求めてきた黒人を家に匿ったために、パージの対象となる一家の恐怖の一夜をサスペンス豊かに描く問題作。製作はブラムハウスとプラチナム・デューンの共同で、脚本、監督はジェームズ・デモナコという人。まさにブラムハウス・メソッドに忠実な脚本で、今回は郊外の豪邸が舞台となり、その内部で事件は起こる。
■R15指定ということで、第三幕のバイオレンスはなかなか凄まじい。第二幕までは正統的なサスペンス演出がなかなか上出来で、もっと若者向けの刺激優先の煽情的な作風かとおもいきや、政治的寓意を基本線としながらサスペンス映画として秀逸。逃げ込んだ黒人を渡せと要求するパージ支持者、パージを支持する父親は家族を守るために黒人を渡そうとするが、豪邸の中で発見できない...じりじりするサスペンスと、パージ政策に疑問をもつ長男の特異な視点が交錯して、正味80分程度の映画なので、一気呵成に見せる。第三幕の狂ったような流血のバイオレンスも結構えげつないので、サスペンスと活劇の両方を堪能できる。スタントウーマンの超絶スタントにも唖然。人間性を捨てた人間のアクションは、動きのあり様自体がほとんどゾンビ、というのも風刺だね。
■政治的寓意は、おそらく次作、次次作でもっと掘り下げられるはずで、本作はシチュエーション・スリラーの枠にとどまるが、十分に上出来。どうしてもジョン・カーペンタ―と比較されるだろうが、作劇も演出も全然悪くないよ。ブラムハウス・メソッドをSFスリラーに敷衍した快作と言って過言でない。でも、このアイディアの真価は次作で明らかになるんだろうなあ。