ゲーム野郎に本物のドリフトができんのか?「ノーCG」のクレージーな快作『ALIVEHOON アライブフーン』

基本情報

アライブフーン ★★★
2022 スコープサイズ 120分 @DVD
監修:土屋圭市 脚本:作道雄、高明 撮影監督:清川耕史 照明:織田誠 美術:阿久津桂 音楽:吉川清之 VFXプロデューサー:浅野秀二 VFXディレクター:横石淳 編集&監督:下山天

感想

■昨年、唐突に全国のイオンシネマ系で公開され、一部の心ある(?)映画マニアの琴線を刺激した謎の映画。シネコンで予告編を観た時点で、これは必見だな、オモシロいに決まってると確信したのだが、劇場では見逃してしまった。その後、一部の映画マニアの間で、凄いぞとか、普通におもしろいとかいった評判が拡散したので、ああやっぱりそうなのかと。このたびやっと観ました。

■とにかくお話は単純で、ゲーマー青年が実車のドリフトレーサーにスカウトされて、ゲーマーのくせにドリフト舐めんなよ!と罵倒されるなかで根性見せるスポ根映画で、純粋活劇。定石通りにライバルや憎まれ役が登場して、活劇魂を燃やす。単純だけど、定石通りによくできた娯楽映画。

■映画の肝はドリフトレースの撮影技法で、本作ではアクションカメラとドローンを総動員して、日本映画では見たことのない過激なカーアクションを造形する。その斬新さが、なんといってもこの映画の肝で、単純に凄い。呆れる。ハリウッド映画なら物量作戦でやってしまうんだけど、日本映画ではここまでのスピード感と、画角と、リアルなクラッシュを描き出した経験がない。もちろんそれほど大作ではないので、予算規模はこぢんまりしているけど、撮影監督の清川耕史の、派手な色彩感覚も含めて、非常にゴージャス感がある。

■しかも、このド派手なカーアクションを「ノーCG」で撮る、しかも日本で!という狂った野心に痺れる。予告編を観て一番ぐっと来たのは、ここのところ。実際は、VFXIMAGICAが担当しているので、実はVFXにもかなり金がかかっているのだが、多分、コクピット周りの合成やエンジンハウス内の描写がメインだと思う。峠道でありえないクレイジーな運転を披露したり、レースで文字どおり火の出るような接戦を繰り広げるあたりは、確かにほとんど実写だと思う。いまどき、日本でこんな無茶な撮影ができるとは想像もしなかった。。。でも、あまりに無茶な走りをしているので、実はあれCGなんで法令には触れてませんよと、コンプライアンス上の言い訳ができるようにIMAGICAVFXスタッフを配しているのかもしれないぞ!(邪推が過ぎる?)

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この件については、下山天監督から直接X(旧twitter)でコメントがありました。
コロナ禍中の撮影(!)でエキストラの動員人数に制約があったので、IMAGICAVFXクルーがデジタル合成でレース場面の観客人数を増やしたそうです(デジタル合成の古典的な手法だけど、全然気づかなかった!)。
なので、デジタル合成はあるけど、やっぱりカーアクションは「ノーCG」なのだ!グッジョブ!

■ただ、作劇として苦しいのは、クライマックスが同じコースを何度も走るレースになってしまうところで、どうしても単調になる。そこは、公式レース映画の苦しいところ。例えば『ワイルド・スピード✕3 TOKYO DRIFT』なら渋谷のスクランブル交差点でドリフトするからね。もちろん、VFXだけど、そうした発想の自由さは勝つよね。

■これ意外にも俳優部が充実していて、主役の茫洋とした青年を野村周平が好演するし、ヒロインの吉川愛は特に序盤が秀逸。後半はすこしステロタイプになるが、序盤のコミュ障の主人公をチームにぐいぐい巻き込んでゆくあたりの活発さを独特のニュアンスで演じる。いわゆるおやっさん役を陣内孝則が完璧に演じて見事だし、伝説の老メカニックを本田博太郎(!)が普段よりもオーバアクト気味に演じて、期待以上の怪演。というかコメディ要員だね。大先輩役の青柳翔なんて、まったく初見だから実際のドライバーかと思ったほどの、ナチュラル演技だし、漫画的な悪役を演じた福山翔大も完璧じゃないか。監修兼特別出演のおなじみドリフトおじさん土屋圭市が、演技を超えたナチュラルコメントで大爆笑を誘うのも、凄いよ、ホントに。

■監督の下山天は過去で色々話題を呼んだが、本作でこそ話題になるべきだろう。いい仕事したね。

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