最悪を避けるために裏口は開けておけ!ヒロシマ、ナガサキ、そして…『トータル・フィアーズ』

基本情報

THE SUM OF ALL FEARS ★★★☆
2002 スコープサイズ 124分 @DVD

感想

■この映画もなぜか時々見返したくなる不思議な映画で、ジェリー・ゴールドスミスの楽曲がいいのかと思っていたけど、実はそれほど派手には鳴らしていない。監督のフィル・アルデン・ロビンソンの趣味かもしれない。

アメリカの原発から盗まれたプルトニウムがCIAによってイスラエルに持ち込まれ、戦術核ミサイルに生まれ変わり、第4次イスラエル戦争中に砂漠で失われるが、全世界ファシスト連合(仮)によってアメリカに持ち込まれ、ボルチモアで炸裂するという、デリケートな一線を軽々越えた政治的サスペンス活劇。

ベン・アフレックがジャック・ライアンを演じて、若輩者ゆえ政府関係者に信用されず、的確なロシア要人分析情報がいれられないために、米露ともに疑心暗鬼の恐怖の連鎖で世界戦争に突入しようとする。サスペンスも効いているし、ジャック・ライアンの冒険活劇としても若者の成長ドラマとしてもちゃんとできているし、「裏口は常に開けておけ、最悪の惨劇を避けるために」という教訓も意義深いので、やっぱりいい映画なんですよ。完全に国交を断絶することは、最悪の戦争を意味するから、関係が悪いときはことさらに、互いにスパイ人脈を通じて意思疎通だけはできるように保険をかけておけという大事な知恵を教えてくれます。ラストも非常に理想主義的で、恥ずかしいくらいだけど、映画のなかくらいは理想を描いてもバチは当たらない。

■配役も豪華で、大統領のジェームズ・クロムウェルは「儂を殺そうとしたんだぞ!」と取り乱して核攻撃を指示するし、やっとデスクワークに就けて一安心したてら最前線の汚れ仕事に戻されてグチグチ言いながらも的確に暗殺をこなすリーヴ・シュレイバーの宮仕えの悲哀とか、軍部の独断に悩まされながらも理性的な判断を貫こうとする(色っぽすぎる)ロシア大統領のシアラン・ハインズとか、配役が実に渋いですよね。シアラン・ハインズはこの頃売れっ子だったけど、いまどうしてるのかなあ。

■ただ、誰が観ても爆心地ボルチモアベン・アフレックが彷徨する場面など、なめてんのか?というレベルで、せめて関川秀雄の『ひろしま』くらいは観ておけと思う(観るわけ無いけど!)。ベン・アフレックがそこのところをどう考えているのか、いちど意見を聞いてみたい気はするな。

■昔買ったDVDだけど、古いマスターなので画質は悪い。解像度も低いし、暗部が潰れがちだ。でもなぜか日本ではブルーレイが出ないので、手放せない。やはり内容が内容だからだろうか。

参考



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