■主人公の老人は資産家で心臓が弱いときているので、動機と解決は大方の予想通りの謎解きが待っているのだが、とにかく佐藤肇の怪奇ロマン演出が最高。さすがに35ミリの撮影じゃないと思うけど、髪の毛の一本一本まで解像するモノクロ撮影の美しさも出色で、ハイコントラストだけど、陰影と艶にうっとりする。如何にも人工的で技巧的な構図に役者を配置して、ただでさえ濃い役者たちのさらに濃いアップを多用して、ぐいぐい押してゆく佐藤肇の演出は見事だし、大映の技術スタッフの方がホームグラウンドの東映のスタッフよりも優秀だったんじゃないかな。まあ、予算規模も違うだろうけど。
■松岡きっこという不思議な女優(当時の売れっ子ですけどね)のバタ臭い見栄えの良さも最高に生かされていて、怪奇映画のヒロインはかくあるべしという非現実的な美しさだし、主演の加藤嘉は名演といえる。頑固で偏屈な被害者として登場しながら、徐々に戦後成金の正体が明かされてゆき、秘められた悪意と狂気が画面を圧倒してゆく後半の演技は、素直に凄いし、撮り方もかなり怖い。まあ、わざわざ加藤嘉を呼んできた甲斐のあるドラマであり、演技だった。
■さらにザ・ガードマンの怪談話が怖いのは山内正の音楽によるところも大きいことを認識した。
参考