トラ・トラ・トラ! ★★★

TORA!TORA!TORA!
1970 スコープサイズ 145分
DVD 


 トラ トラ トラ! [DVD]真珠湾攻撃に至るまでの日米の軍部の動静を対比しながらサスペンスを盛り立てる戦記超大作。日本側の宣戦布告の文書が遅れたり、米軍もあらかじめ情報を入手していたのにハワイ基地への打電が遅れたりといった数々の行き違いのエピソードを史実に基づいて描き出す。DVDはアメリカ公開版が収録されている。日本での劇場公開版は若干長いらしい。
 もともとは黒澤明が、日米双方の莫大なエネルギーの浪費という観点から、悲劇として構想した映画だが、最終的な完成版は悲劇にはなっておらず、実直で生真面目一方の日本人と、どうせ日本が攻撃するとしても東南アジアだろうと高をくくって、外交交渉が緊迫する割には至って暢気に構えている米軍の姿を対比させて描いたところに、この映画の眼目はあるのだろう。オーディオ・コメンタリーでリチャード・フライシャー自身がそう言っているのだが、実際映画を観た感想もそこに帰着する。黒澤明が執念で書き上げた「虎虎虎」準備稿の一体何%が残されたのだろうか。
 コメンタリーは、アメリカ人の日本映画研究家とリチャード・フライシャーの対談という凝ったもので、黒澤解任の生々しい話も当然出てくる。フライシャーは黒澤に「ミクロ野郎」だとか「ケチャップ野郎」とあだ名されていたとは思いもしなかっただろう(「黒澤明VS.ハリウッド」参照)。フォックス側は、後任として、小林正樹市川崑岡本喜八中村登らを考えたらしい。
 冒頭で登場する長門(?)の実物大セットは黒澤の置き土産だろうが、これは後半の実物を使用したアメリカ太平洋艦隊のスケール感と呼応して、意外にも効果的だ。むしろ、この実物大のリアルなスケール感がなければ、日本側のシーンがアメリカ側に比べて静的でこじんまりしたものになっただろう。黒澤明の計算はあながち間違ってはいなかったのだ。
 帝国海軍機動部隊の空母や太平洋艦隊のミニチュアワークも確かなスケール感があり、見事なものだが、第2班監督レイ・ケロッグが腕を振るったフルスケールでのアクション場面やスタント場面が凄いので、損をしているかも。CG全盛の今、フルスケールで撮りきりの大破壊なんて贅沢の極みである。