坊っちゃん、嬢ちゃん、お待ちかね!『海底大戦争 スティングレイ』第1クール:備忘録

■なんとなく観始めたら止められなくなったので、『海底大戦争 スティングレイ』についても備忘録を残しておきます。

■オリジナルはオープニングがバリー・グレイのマリンビル基地のテーマ曲で一番燃える楽曲が毎回流れるのがなんといっても嬉しい。日本版はオリジナルのテーマソング(例のアレ)が流れて、それはそれでなかなかの名曲だけど、燃え要素はオリジナルに軍配が上がる。ということに今回気づきました。

■日本版はなんといっても吹き替えのメンバーが豪華で、個性が強いので、オリジナルよりも各キャラクターの個性が濃厚に感じる。特にサム司令官はもう天草四郎しかないよね!というはまり役。天草四郎といえば、本人じゃなくてサム司令官の顔が浮かんでくるくらい。しかも頑固おやじキャラがオリジナルよりも強烈で、帆前船のエピソードで登場する将軍との爺さん同士の掛け合いはまるで漫才のような傑作。

■副官フォンズの力の抜けたニュアンスが見事だなあと思ったらミッキー・カーチスの吹き替え。このあたりは日本語版のほうが良いと感じる。一方、トニー谷のナレーションは完全にアドリブ収録の回があり、かなりキツイけど、時代の記録としての価値が生じている。「坊っちゃん、嬢ちゃん」と呼びかけたり、まだカラーテレビが普及していない時代なので、モノクロテレビで観ている子どもたちに色彩の情景を説明したり、なかなか涙ぐましい。

■第1クールの簡単な感想を以下に残しておきます。話数は英国初回放送時の回数です。

#1「海底の魚神」Stingray
マリーナさんの出自がさらっと描かれるのが興味深い。海底王国の奴隷だったんだ。魚の神様(?)が裁くトロイ艦長の裁判のシーンも長閑でいいなあ。今観るととても良い。

#2「危うし! マリンビル基地」Emergency Marineville
なんといっても、マリンビル基地がミサイル攻撃されて戦闘機は発進するし、迎撃ミサイルは射出されるの大戦闘が燃えに燃える。でもその後、こんなに大掛かりな作戦は無いんだよね。それに、あのドラムがドンドコ鳴る戦闘テーマは、劇伴かとおもいきや、実際に基地内に放送される戦闘準備の音楽だったらしい。

#3「ゆうれい船」The Ghost Ship
「ほまえせん」(帆前船)という言葉が出てくるんですが、初めて聞きました。この頃は一般的だったのかなあ。いまなら単に帆船(はんせん)かなあ。ミニチュア特撮が念入りなのでそれだけでお腹いっぱい。

#4「海底の砂漠」Subterranean Sea
海底の底に別の空間が広がり、津波のような潮の干満があるというSF。行って帰るだけのお話。セリフが少ないので、トニー谷が煩いほどアドリブで解説する。ホントに煩いので、オリジナル版を観るほうがよさそう。

#5「ネス湖の怪獣」Loch Ness Monster
ネッシーの奇天烈な顔の造形が凄いね。ネス湖畔の古城で怪奇ムードを醸し出すのもいかにも英国的。スティングレイをわざわざスコットランドへ陸送するし、風光明媚なスコットランドの情景も全てミニチュアというのが凄い。ネッシーの種明かしはありきたりだけど。

#6「大暴れ帆前船」Set Sail for Adventure
将軍大暴れのコメディ回。サム司令とおっさん同士の大人げない貶し合いがサイコーにおかしい。これはぜひ日本語版で堪能したい。

#7「恐怖の魚雷」The Man From the Navy
海軍のジョーダン大尉がとことん嫌なやつで、温厚なトロイ艦長が終始切れまくるのが可笑しい。確かに合わない人間に対してはこれがリアルかもしれないけど。エリート意識の塊の海軍さんも最後までいっさい改心しないのも凄い。

#8「謎の新兵器」 An Echo of Danger
なんだかウルトラマンA市川森一が書いたようなお話。スパイX20が作戦中に幻聴を聞いたフォンズを精神異常と思い込ませるように計略するガスライティング作戦。

#11「タジマノン神殿の謎」In Search of the Tajmanon
エジプトのダム開発で湖底に沈んだはずのタジマノン神殿が消えた。またしてもスティングレイは陸送されて湖底探査に向かい、さらにドンドン族の謎を追ってナイル川を遡上する。湖底に沈んだ神殿を湖に潜って運び出し、まるごと移設したという豪快なお話だけど、開発に対する批評性が濃い。

#12「ソロモン王国の陰謀」A Christmas to Remember
クリスマスに子どもをマリンビル基地に招待するというお話で、いろんな要素盛りだくさんでよくできた脚本構成。トロイ艦長はサム司令官の娘のアトランタに何気なく誘われるのに、気づかないふりで受け流す。トロイ艦長はマリーナとアトランタの二股状態なのだ。いいのか?子供番組なのに。


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