カレン・ブラック七変化!『恐怖と戦慄の美女』

基本情報

TRILOGY OF TERROR ★★★★
1975 スタンダードサイズ 72分 @アマプラ

感想

■「ジュリー」「ミリセントとテレーズ」「アメリア」の三部からなるオムニバスで、女性役はほぼカレン・ブラックがひとりで演じわけるという、カレン・ブラックをフィーチャーしたテレビドラマ。監督はダン・カーチスで、テレビ映画界ではホラーの傑作をいくつか残している有名な人。全作の原作と三作目の脚本はリチャード・マシスンなので、当然ながらできはいい。当時、カレン・ブラックって、そんなに人気があったのか?

■「ジュリー」は一種の魔女ものだけど、いまいち曖昧模糊としているのは、脚本をマシスン本人が書いていないからかも。「ミリセントとテレーズ」はいかにも当時ありがちなお話なので途中でネタは割れるけど、語り口の面白さでサスペンスは担保されるし、カレン・ブラックの極端な二役の演じ分けが楽しいから、芸の力で見せる。役者の演技を堪能することができる、ちゃんとした「ドラマ」。

■第3話の「アメリア」がとにかく一番有名で、ズー二族の狩人の人形の封印が解けて魂を得て、文字通り暴れまわるという物理的な恐怖とサスペンスを描いた傑作。後に『グレムリン』とか『チャイルド・プレイ』などで引用、というかそのまんま踏襲されたことでも有名だけど、噂に違わぬ傑作だったので感慨深い。もちろん、CGはないし人形アニメを使う予算もないので、パペットだし、間接描写がメインだけど、実に上手くて過不足がない。いまどきならCGで自在に動き回るわけだけど、こういうのはもっと見せてというところで抑制するのが上策だよね。カレン・ブラック対呪いの人形のアクションが小気味いい演出と編集できちんとサスペンスを生むし、音楽も実はかなり良い。

■機転を利かせてトランクに閉じ込めたと思ったら、小さな銛で切り裂いて出ようとするので、よせばいいのにカレン・ブラックが指で掴んで(ぎゃー!)止めようとするあたりの見せ方は実に観客の心理を突いた旨い見せ方。単純な表現だけど、人間の心理を鷲掴みする、ホラー映画の作法としては上等な部類だ。

■外連味のあるラストのオチも実に見事だし、カレン・ブラックの役者魂に感服する。『チャイルド・プレイ』も面白かったけど、こうした役者の演技で説き伏せると言った力技は、なかなか真似できない。故に不世出の傑作となったわけだね。


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