フッテージ ★★★☆

Sinister
2012 スコープサイズ 110分
AMP

■硬派なオカルト者として『エミリー・ローズ』を撮ったスコット・デリクソンのブラムハウス製作による低予算オカルトホラー映画。しかし、さすがはスコット・デリクソンだけあって、稚気ではなくガチガチに大真面目に怖がらせにくるから、結構疲れる。ところどころにショッカー演出を忘れはしないが、とにかく闇の気配の濃厚な悪意は、ジェームズ・ワンの諸作や他のブラムハウスの作品にも無いものだ。

■4人の家族が首を吊って死ぬ事件があった家に越してきて事件をノンフィクションに仕上げようとする作家が、屋根裏でその事件だけでなく他の殺人事件をも記録した8ミリフィルムを発見することから、狂気の世界に浸食されてゆく・・・

■お話の展開自体はあまりスムーズではなく、ストーリーテリングとしてはぎこちない感じもするのだが、クライマックスにむけてちゃんとひと捻りも用意されて、複数の事件を串刺しにする共通項が発見される。古代バビロニア邪教の儀式に遡るというれっきとしたオカルト怪奇映画。

■スコット・デリックソンの持ち味は、撮影(&照明)のレベルの高さにある。クリストファー・ノアーという撮影監督は初耳だが、非常に優れたキャメラマンのようだ。ブラムハウスの諸作のレベルと大きく超えており、ジェームズ・ワンの比較的ビッグバジェットの諸作にもリアリズムにおいて凌駕している。例えば『ライト/オフ』のナイト・ウォークの場面の退屈さに比べて、本作の闇の諧調の滑らかさや精細さ、リアリティは一目瞭然。ナイト・ウォークのサスペンスがちゃんと機能しているから110分の少々長めのランニングタイムもまったく違和感がない。スコット・デリクソン、やっぱり凄いし、犬の主観で幽霊を描くなんて新機軸も意表を突いている。

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