今度は陰謀史観は控えめ!(だよね?)『朝鮮戦争と日本・台湾「侵略」工作』

朝鮮戦争と日本・台湾「侵略」工作 (PHP新書)作者:江崎 道朗PHP研究所Amazon■前著に比べると陰謀史観は控えめで、むしろふつうに正史(及び秘史)に近い印象。陰謀史観界隈で有名なコミンテルンは既になく、極東コミンフォルムが登場するけど、それほど陰謀…

みんなコミンテルンの悪巧み?奇書(?)だけど困ったことに面白い『日本占領と「敗戦革命」の危機』

日本占領と「敗戦革命」の危機 (PHP新書)作者:江崎 道朗PHP研究所Amazon 参考 ■みんなコミンテルンのせいなの?それを「コミンテルン陰謀史観」といいます。そもそもコミンテルンは1943年に消滅してます。でも、陰謀史観は廃れません。いわゆる陰謀史観は、…

なんとなく森一生に似ている気がする『平山秀幸映画屋街道 呑むか撮るか』

平山秀幸映画屋街道: 呑むか撮るか作者:平山 秀幸ワイズ出版Amazon 参考 ■平山秀幸の映画は結構好きで、大半は観ているけど、最近の映画は見逃している。『エヴェレスト 神々の山嶺』『閉鎖病棟』ですね。■なんというか、湿っぽい、いかにもお涙頂戴な描き方…

魑魅魍魎が寄って集って他人の土地で一儲け!森功の『地面師』

地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団 (講談社文庫)作者:森功講談社Amazon■さいきんネットフリックスで始まった大根仁の『地面師たち』とは違いますよ。『地面師たち』の原作小説はこれです。地面師たち (集英社文庫)作者:新庄耕集英社Amazon■こちらは…

意外にも図書館にいっぱい置いてある有名本『縞模様のパジャマの少年』

縞模様のパジャマの少年作者:ジョン ボイン岩波書店Amazon■映画はむかし観てますが、原作小説が図書館にはたくさん置いてあり、意外とポピュラーな小説らしいことを知りました。基本的に子供向けの小説なので、サクッと読めます。しかも、内容も書きぶりもサ…

LOTO6が当たったら、わしは文楽やめるんやけど『あやつられ文楽鑑賞』

あやつられ文楽鑑賞 (双葉文庫)作者:三浦しをん双葉社Amazon■小説『仏果を得ず』の前に書かれたエッセイが後に文庫化されたもの。三浦しをんの鋭い観察と、妄想的な考察が綾をなして、読み応えがあるし、文楽に関するこういう自由な研究ってないので、貴重で…

近松じいちゃんのいい仕事集!現代語訳で読みやすくて、分かりやすい『近松名作集 21世紀版少年少女古典文学館』

近松名作集 (21世紀版・少年少女古典文学館 第18巻)作者:富岡 多恵子講談社Amazon■少年少女向けの古典現代語訳シリーズですが、文字が大きいし、解説が丁寧なので、誰にとっても読みやすい作りです。近松の浄瑠璃集は富岡多恵子が担当です。江戸時代の貨幣制…

安全・安心を求めすぎると人類は退化するよ!とウェルズ先生が親切に教えてくれる『タイムマシン』

タイムマシン (岩波少年文庫 530)作者:H.G. ウェルズ岩波書店Amazon■ウェルズ先生の出世作である『タイムマシン』を初めて読んだ。小説としては短いこともあり、物語性には欠けるけど、文明批評の部分にはさすがに、19世紀のイギリス階級社会を揺さぶる鋭さ…

戯曲レビュー:虚言癖少女が二人の楽園を破壊する!リリアン・ヘルマンの有名傑作『子供の時間』

リリアン・ヘルマン戯曲集作者:リリアン ヘルマン新潮社Amazon■図書館にリリアン・ヘルマンの戯曲集があったので、読んでみました。リリアン・ヘルマンて、ほとんど忘れられた作家のような気がしますが、戦う女性作家の元祖という気がします。自伝も有名です…

趣味の良いホラー・アンソロジー『南から来た男 ホラー短編集2』

南から来た男 ホラー短編集2 (岩波少年文庫)岩波書店Amazon■岩波少年文庫のシリーズ前作『八月の暑さのなかで』が秀逸だったので、第二弾も買いましたが、そのまま積読になっていたものです。実は少し前に読んでいたのですが、ほとんど記憶に残っていなかっ…

赤川次郎のホラーはなかなか侮れない『怪奇博物館』

怪奇博物館 (角川ホラー文庫)作者:赤川 次郎KADOKAWAAmazon■赤川次郎はときどき純粋な怪奇小説を書いていて、実はいくつか傑作があります。本書は半分が怪奇ミステリーで、半分が純粋怪奇小説です。怪奇ミステリーの方は正直噴飯ものだったりしますが、怪奇…

戯曲レビュー:日本学術会議任命拒否事件を描く、永井愛の『ザ・空気 ver.3 そして彼は去った 』

ザ・空気 ver.3 そして彼は去った…作者:永井愛而立書房Amazon■安倍政権を路線を継承した菅政権下で起こった日本学術会議任命拒否事件をモチーフにした、ザ・空気シリーズ最終作。コロナ禍の2021年に初演されたもので、コロナ禍の渦中の雰囲気もそのまま盛り…

戯曲レビュー:あの政権下での電波停止発言に義憤炸裂!永井愛の社会派ホラー『ザ・空気』

ザ・空気作者:永井 愛而立書房Amazon■NHKの大河ドラマ『光る君へ』て面白いですね。あれは大河なのに大石静の生きの良い作風が生きていると感じますが、もともと大石静は演劇出身で、二兎社に所属していました。というか、永井愛と一緒に立ち上げたのです。…

戯曲レビュー:総理会見のカンペを書いた記者は誰だ?永井愛の『ザ・空気 ver.2 誰も書いてはならぬ』

ザ・空気 ver.2 誰も書いてはならぬ作者:永井 愛而立書房Amazon■2018年に初演されたザ・空気三部作の2作目。2000年の「指南書事件」、2016年の「国会記者会館屋上使用裁判」のふたつの事件をモチーフとして、政権の醸し出す空気に忖度する記者クラブの問題を…

映画批評はこころのダイアリーだ!寺脇研の『昭和アイドル映画の時代』

昭和アイドル映画の時代 (光文社知恵の森文庫)作者:寺脇 研光文社Amazon■寺脇研といえば、学生の頃からずっとキネ旬の邦画評論を続けながら、文科省のお役人でもあったという奇特な人で、しかも定年退職後には退職金(の一部)を突っ込んで映画製作にも乗り…

戯曲レビュー:ほほう、こんなのもありか。上田誠の『曲がれ!スプーン』

曲がれ!スプーン (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)作者:上田 誠早川書房Amazon■実は舞台も映画版も観ていないので、純粋に戯曲として読みました。本当は橋本治の文楽の本を探していたのですが、たまたま図書館で発見したのです。「ハヤカワSFシリーズJコ…

こんなところに福島正実の「マタンゴ」が!『SFショートストーリー傑作セレクション 怪獣篇 群猫/マタンゴ』

怪獣篇 群猫/マタンゴ (SFショートストーリー傑作セレクション 第二期)汐文社Amazon■『群猫』『仕事ください』『弱点』『マタンゴ』『黴』の5本立ての短編集。こんなアンソロジーが出ていたとは知らなかった。■『群猫』は筒井康隆の短編で、地下の暗黒世界で…

進化論があるなら、人類の退化論もあるはずだ!ウェルズ先生の心配性が炸裂する『モロー博士の島』

モロ-博士の島 (偕成社文庫 3214)作者:H.G. ウェルズ偕成社Amazon■H・G・ウェルズの小説なんて前世紀の遺物でしょと勝手に思ってましたが、最近ちょっと見直しています。『宇宙戦争』もいまだに新しい視点を提供しているし、『解放された世界』なんて、日本…

むしろドラマ版のほうが良いよ!小説『ミッドナイト・ジャーナル』

ミッドナイト・ジャーナル (講談社文庫)作者:本城雅人講談社Amazon■永らく積読状態だった小説。ドラマ版を観て買ったのだけど、とにかく読むのに時間がかかったな。正直なところ、ドラマ版の方がお話のアウトラインがスッキリ整理されていてわかりやすいし、…

”戦さは儲かるという物語”が国を動かすとき…『太鼓たたいて笛ふいて』

太鼓たたいて笛ふいて (新潮文庫)作者:ひさし, 井上新潮社Amazon■劇団こまつ座の舞台版はNHKの放送で観ていたけど、戯曲が新潮社から出ていて、積読状態だったものを、やっと読みました。そして、お話を思い出しました。そのあたりは以前の記事に描いてある…

まだまだ成仏できまへん!芸の道は修羅の道や!『仏果を得ず』

仏果を得ず (双葉文庫)作者:三浦しをん双葉社Amazon■文楽の技芸員、義太夫語りの健は、師匠にいわれて相方となった変人の三味線方の兎一郎とともに稽古に精進するが、好いた女ができてしまうし、その娘の小学生ミラちゃんにも好かれてしまってさあ大変。稽古…

未来は断絶の先にある!堀川弘通が映画化を願ったSF小説の古典『第四間氷期』

第四間氷期(新潮文庫)作者:安部公房新潮社Amazon■人工知能研究(予言機械)のサンプルモデルとして目をつけた平凡な男が何者かに殺された。このままでは自分たちに殺人の嫌疑がかかる。。。犯人を探すうち、脅迫電話がかかり、殺し屋の影がちらつく。そし…

やっと読んだ、白坂依志夫の奇書『不眠の森を駆け抜けて』

不眠の森を駆け抜けて (ラピュタBOOKシリーズ)作者:白坂 依志夫ふゅーじょんぷろだくとAmazon■白坂依志夫の書いてきたエッセイやインタビューを集めた本だけど、あまりの内容に購入後ずっと積読状態だったものを、11年ぶりに先日やっと読了しました。■白坂依…

コテコテのミステリーだけど嫌いじゃないよ『天使のナイフ』

天使のナイフ 新装版 (講談社文庫)作者:薬丸岳講談社Amazon■薬丸岳のデビュー作で、江戸川乱歩賞受賞作。もちろん悪くないけど、当然ながらミステリーなので無理やりなお話づくりが目に付くよなあ。最終的にコテコテのこれでもかの作為が積み重ねられる。そ…

さようなら、私の内灘。わたしの青春ー五木寛之の『内灘夫人』読みましたぜ

内灘夫人 (1973年) (五木寛之作品集〈7〉)Amazon五木寛之小説全集〈第12巻〉内灘夫人 (1980年)Amazon■五木寛之の『内灘夫人』を古書で入手していたのですが、やっと読み終えました。結構ボリュームがあったのですが、基本的に新聞連載の風俗小説なので、読み…

物象の軽視!精神主義への傾倒!指揮命令系統の混乱!あまりにも日本的な過ちで歩兵部隊は戦争に行く前に全滅した『八甲田山死の彷徨』

八甲田山死の彷徨(新潮文庫)作者:新田次郎新潮社Amazon■なんで今さら読んでいるのか?という感じですが、今読んでも示唆の多い記録文学ですね。■第三十一連隊は、雪の八甲田山で全滅した第五連隊には途中遭遇しなかったと(嘘を)言い切ってしまったため、…

米国も切羽詰まると人道(綺麗事)を棄てる。それが戦争の現実だ!『大日本帝国の興亡(新版)4 神風吹かず』

大日本帝国の興亡〔新版〕4――神風吹かず (ハヤカワ文庫NF)作者:ジョン トーランド早川書房Amazon■レイテ湾海戦と連合艦隊の壊滅、硫黄島の玉砕戦、東京大空襲、沖縄決戦、戦艦大和の海上特攻と悲壮な消耗戦の連続で、読んでいて気分が落ち込むこと必至の記…

この世は物理法則で成り立っているから精神主義の敗北は必然だよね!鬼哭啾々、南海の地獄『大日本帝国の興亡(新版)3 死の島々』

大日本帝国の興亡〔新版〕3──死の島々 (ハヤカワ文庫NF)作者:ジョン トーランド早川書房Amazon■ずっと前に買ったまま積読状態だったけど、この機会に読み出すと止まらなくなって一気に読みました。1巻、2巻も面白かった記憶があるけど、いよいよガダルカ…

東映映画のアイデンティティはどこから来たのか?大下英治著『小説東映 映画三国志』

映画三国志―小説東映作者:大下 英治徳間書店Amazon■断捨離をしていて段ボール箱から出てきたので、捨てる前にもう一度読んでおこうかと手に取りましたが、さすがに面白いので一気に読みました。主役は岡田茂です。マキノ光雄らが満映の残党に仕事を与えるた…

吉永小百合に気に入られた特撮監督とは?佛田洋著『特撮仕事人』より:お前が行って来い!『長崎ぶらぶら節』秘話

特撮仕事人 (マーブルブックス)作者:佛田 洋中央公論新社Amazon■特撮研究所社長で特撮監督の佛田洋の偉業を紹介するこのシリーズですが、さすがにこれで打ち止めにしましょう。これ以上の内容は本書を買って読んでください。絶対面白いから!■さて、最後は結…

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