彼の姿は目に見えない!でも本当に怖いのは心が見えないこと!『透明人間』

基本情報

The Invisible Man ★★★☆
2020 スコープサイズ 124分 @DVD

透明人間 (字幕版)

透明人間 (字幕版)

  • エリザベス・モス
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感想

■ユニバーサル映画の古典怪奇映画のリブート企画で、第一作の超大作『マミー 呪われた砂漠の王女』の失敗により大きく路線転換を図った本作は、ブラムハウスの製作で、脚本優先の低予算映画として製作された。低予算とはいえ、通常の90分映画ではなく120分映画なので、大きく舞台となる家も2つが用意されている。

■SF怪奇小説の古典をほぼ無視して透明人間という素材だけを借りて自由に発想、サイコ・サスペンスとして換骨奪胎している。そのアイディアが何よりも面白い。最初はお得意のホラー映画タッチで、心霊現象かと思わせて、謎解きで科学技術の関与が判明するというワクワクする古典的な筋立てかと思いきや、もっと現代的で、ヒロインの脱出をサスペンスの手法で描く活劇映画になっている。だから死んだはずの天才科学者が犯人に違いないと確信するのは、随分早い段階なのだ。

■光学研究の天才の病的な束縛からの身体的、精神的な脱出がテーマで、透明人間のSF的なギミックとか狂った科学者の病的で魅惑的な妄想やロマンよりも、むしろ文字通り「見えざる手」によって宙をさまようナイフの活躍が映画的な見せ場となっている。実際、中盤のレストランの惨劇の見せ場はリー・ワネルの技巧が冴え渡る。

■ただ、お話としては90年代から00年代にかけてハリウッドで量産されたサスペンスタッチの大作スリラー活劇のイメージが濃厚で、120分映画としてこれでもかと畳み掛けるのはいいけど、もともと大きなお話ではないので90分程度でさらっと決着をつけてくれたほうが嬉しいよね。実際、リー・ワネルは『インシディアス 序章』では97分で何の過不足も感じさせなかったし、心臓が痛くなるほどに拷問的かつ心理的な恐怖を味わわせ、痛快な活劇に転化して見せてくれた逸材だからね。

■本来、SF映画として描くなら、天才科学者の狂気を心理描写として描くのが筋だが、本作はそこを完全にヒロインの視点だけで描く。だから、天才科学者の狂気はヒロインの妄想ではないかという疑惑が最後まで残る。そこがこの映画の賢い企みで、透明人間が怖いのは、姿が見えないことではなく、どこまでいってもその心が見えないことであると主張するのだ。心まで透明になった男。それが本作での透明人間の新しい定義なのだな。


参考

※怪異描写、ショック演出の怖さではこちらの方がウワテですよ。心霊映画ですからね。
maricozy.hatenablog.jp

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