嗚呼、吾輩も田島和子に★を抜かれてみたい!ザ・ガードマン『現代牡丹灯籠』

■牡丹灯籠の現代版を狙った現代怪談路線だけど、その実は哀しい女のカラクリがあり、それで終わりかと思いきや、さらに悪だくみの一ひねりあるという犯罪ドラマで、凝った脚本は増村保造によるもの。監督は弓削太郎なので、あまりこだわりのない演出ぶりなんだけど、薄幸のヒロインを田島和子が演じて見事なはまり役。露口茂、田島和子、小池朝雄、田原久子(のちの荒砂ゆき)、早川雄三金田明夫という豪華配役。死んだ恋人にそっくりな娘をマンションに招いた売れない小説家の男は、女がくるたびに日に日に憔悴してゆく。医師は血が抜かれているというのだが。。。

■それ以上の種明かしはさすがに控えるが、今日ではとても成り立たない犯罪ドラマで、たぶん当時ですら無理筋だっただろう。増村らしい恋に狂った女の名セリフがあるのだが書けないなあ。ああ書きたい。

■何しろこの頃は怪奇ドラマの作り方が広く映像職人に共有されていた時代なので、モノクロ撮影で怪奇ムードを表現するにはどうすればいいのか、公式通りにできている。本作はあまり照明にも構図にもこだわっていはいないが、すらすらと自然なキャメラワークのなかにハッとする美しい瞬間があり、目を見張る。

■田島和子の幸薄そうなフォトジェニックさも際立つ。白いワンピースに胸元に赤い花をあしらった姿で、深夜にマンションの非常階段を上り下りするだけで怪奇で幻想的な美が現出する。病院の死体置き場も定番の荒涼ムードでいいし、露口茂が憔悴しているように見えないこと以外は実に素晴らしい。一方で、往診の看護婦を田島和子が漫画みたいなこん棒で殴って気絶させるという爆笑シーンもあって、まったく油断がならない。

■田島和子は『怪奇大作戦』の『美女と花粉』にも出演していて、草野大悟の奥さんだったらしい。自由劇場から六月劇場へと移っているから完全に夫婦一緒に動いているんだね。

■撮影は佐藤正、照明は内藤伊三郎、美術は井上章。


参考




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