■同シリーズの第282回エピソードで、1970年8月に放映されている。当然、カラーだが、褪色が著しいし、ディテールもぼやけている。シリーズでも途中まではモノクロ撮影なので、逆に保存状態がよく、ルックも細密で艶もある。ザ・ガードマンの怪談話は、基本的に幽霊や妖怪に扮装した悪人が病気持ちの金持ちをショック死させたり、きちがいにしようとしたりという回りくどい趣向が定番だが、本作はそこからさらにひとひねりして、狼女は実在するという怪奇映画に着地している。といっても、怪奇現象は悪人の狂言でしたという謎解きのあとに、でもあの時の現象の説明はつかない、ということはやっぱり・・・という筋書きの怪奇小説やドラマが山ほど制作された時期なので目新しくはないものの、お話の作りこみの濃さはなかなかで、桂千穂とかの怪奇マニアの書いた脚本かと思ったよ。
■さらに、なぜか異様に本気の制作体制を敷いていて、目玉は、わざわざ特撮班が立てられていること。監督:阿部志馬、撮影:藤井和文、美術:井上章(照明:木村辰五郎)というガメラシリーズのスタッフが結集しているのだ。1970年といえば、3月に『ガメラ対大魔獣ジャイガー』が公開されているから、『ガメラ対深海怪獣ジグラ』との間に撮られたわけだ。といっても、派手なミニチュアワークがあるわけではなく、狼女への変身シーンを主に担当したようだ。加えて、様々に変化する月夜の情景をグラスワークや合成で表現している。脚本の山浦弘靖が参加した『ヴァンパイア』での水谷豊の変身シーンに対抗したものか、むしろ往年のユニバーサルホラーを意識したものか、当時の技術としてはかなり本格的な取り組みである。ひょっとすると、このシリーズでは他のエピソードにも特撮班が立てられていたのかもしれない。さらに、シェパード数頭を用意して野犬の襲撃シーンを撮ったり、かなり手間のかかる撮影をこなしていて、妙に手間暇をかけて作られているのだ。監督の宮下泰彦は『怪談・雨の幽霊病院』も秀逸だったけど、このジャンル好きだったのかなあ。知られざる怪奇映画の名匠じゃないか。
■ゲストは渚まゆみが意外にも大きな扱いで、当時売れてたんだね。実質主演で狼女に変身する笠原玲子は美形なのに、変な役ばかりやらされている薄幸な(?)女優さん。好きなんだけどなあ。なぜか汚れ役が多いのは、本人が演技派志向だったのかな。
参考