タマミちゃん、ヘビ投げちゃダメ!『蛇娘と白髪魔』

基本情報

蛇娘と白髪魔 ★★☆
1968 スコープサイズ 82分 
原作:楳図かずお 脚本:長谷川公之 撮影:上原明 照明:久保江平八 美術:矢野友久 特殊撮影:藤井和文 音楽:菊地俊輔 監督:湯浅憲明

感想

■孤児院から南条家に引き取られた私、サユリは、ちょっと頭がおかしいお母さんから屋根裏部屋に隠れ住んでいるタマミをお姉さんだと紹介されたの。でもタマミはとても残酷で意地悪だし、背中に鱗が生えてるなんて人間じゃないと思うの。きっと蛇女だわ。とうとうタマミの策略で私のほうが屋根裏部屋に住むことになってしまったけど、きっと逃げだして孤児院の先生に助けてもらうの。でも私の行く先には白髪魔も現れて。。。

楳図かずおの『赤んぼ少女』でお馴染みの怪奇キャラクター「タマミ」を、さすがに赤ちゃんでは映像化できないので不気味で性格のねじ曲がった少女に置き換えて翻案した苦心の怪奇映画。他にも短編が混ぜ込んである模様。

■ただ、主人公の少女が頻繁に夢を見ることから、ファンタジー映画にも見える。タマミが夢の中では悪鬼の形相に変貌し、ヘビを投げると剣に変じるというあたりが傑作で、それなりに面白いけどね。

■同時期にテレビでは『ザ・ガードマン』で怪談エピソードを続々と送り出していた時期だが、それに比べても貧相に見える。美術セットも、配役も、照明も『ザ・ガードマン』の怪談エピソードの充実ぶりに全く適わないのだ。『ザ・ガードマン』がいかに贅沢な制作体制であったかがよくわかる。特撮シーンも出来が荒く、クライマックスにはちゃんとミニチュアの洋館が炎上するが、かなり小さなミニチュアらしく、スクリーンプロセス合成も厳しい。

■しかし、本作の胆はタマミがちゃんと怖いことで、一定の成功を収めている。高橋まゆみという女優の白い「顔」の怖さは子供時代に観たら完全にトラウマになっただろう。大人でも十分に怖いよ。明らかに『顔のない眼』の白いマスクをイメージしているだろう。小百合の夢想の中では牙が映えたりすると逆にコミカルになってしまうのだが、何もしない「顔」の無表情さの怖さたるや!ガマガエルを引き裂くシーンのえげつなさも相当なもの。もちろん作り物ですが、それにしてもねえ。本作は、とにかく不気味生物(あるいは哀れな小動物?)を投げつけるという原始的な嫌がらせ演出で群を抜いている気がするなあ。ああ、気持ち悪い。

参考

maricozy.hatenablog.jp
そういえば黒沢清が楳図漫画を映像化したこれはなかの傑作で、円谷プロが何故かこだわり続ける「蜘蛛屋敷」ものの成功作。
maricozy.hatenablog.jp
maricozy.hatenablog.jp

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