スターシップ・トゥルーパーズ

スターシップ・トゥルーパーズ(1997)
(STARSHIP TROOPERS)

 改めて観ると、実になかなかの傑作ではないかと思えてくるポール・バーホーベンの宇宙版「二百三高地」(?)。実際、スペクタクルなSFXの見せ場を除けばなかなか無駄のない引き締まった脚本で、バーホーベンの演出にも澱みがない。

 また、マッチョを装いながらマッチョを嗤う映画を目指しながら、嗤いきれなかったところが逆にスリリングで、味わい深い。

 なんといっても白眉は第一回の突撃シーンで白兵戦の凄惨な生地獄をストレートに描き出した部分に違いなく、容赦ない壊滅戦は古典的な意味での戦争の悲惨さをかなり忠実に表現しているのではないか。そうした意味でバーホーベンによる「プライベート・ライアン」といえるのかもしれない。

 バジル・ポルドゥリスのスコアも聞き所が多く、少なくとも「エイリアン2」のジェームス・ホーナーの知能指数≒0の劇伴に比べれば、傑作といってもいい。
(2000/10/11 ビスタサイズ WOWOW録画)

 DVDの吹き替え版で改めて観直すと、実際かなり良くできた戦争映画なので感心する。

 導入部分の脳天気な学園生活から地獄の軍事訓練を経てはじめての実戦で大敗するまでの前半は地上部隊である主人公とエリートとして宇宙戦艦の操縦に従事するヒロインのエピソードの対比が良く効いているし、先任の兵士たちが次々と戦死してゆくたびに主人公の位が上がっていく後半の皮肉さや、散り散りになった同級生たちが同じ作戦に参集してくるクライマックスの構成のカタルシスはよくできた戦争映画ならではの味わいだ。

 しかも吹き替え版で観ると、田中実が主人公をアテたおかげでキャラクターに多少とも知性が加味されて、オリジナル音声で観るよりも演出家の意図が掴みやすいし、何よりも挿入される軍事国家のプロパガンダ映像のナレーションを武田広がアテることで、この映画の意図した不謹慎さが一層際だち、演出家の狙った皮肉や当てこすりが誰の目にも分かり易くなっていることに驚かされる。ある意味では邪道ともいえるこの吹き替え版は映画をDVDで観ることの楽しみのあり方を象徴しているだろう。
(2002/10/11 ビスタサイズ レンタルDVD)

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