骨太で豪快な筋肉時代劇『コナン・ザ・グレート』

基本情報

Conan the Barbarian ★★★
1982 スコープサイズ 129分 @ブルーレイ

感想

■なにを今更?という感じですが、実は初めて観ました。音楽がベイジル・ポールドゥリスで、テーマ曲がかなり有名らしいので、正直いって音楽目的で観ました。でも一般的にはシュワの出世作で、世界的なヒット作ですね。監督がジョン・ミリアスだったことを思い出しました。しかも脚本はオリバー・ストーン(!)で、エドワード・プレスマンと組んで原作を脚色したもの。監督候補にはリドリー・スコットアラン・パーカーがいたけど、結果的にジョン・ミリアスなら脚本を自分で直せるよねということになったらしい。結局、脚本をラウレンティス(娘)に売るんだけど。

■謎の邪教集団タルサの教祖に父母を虐殺されたコナンが成長して、弓の名人の盗賊や女盗賊ヴァレリアの仲間を得て、復讐を遂げるまでのお話で、ストーリーは至って単純だけど、野蛮な暴力とお色気満載で、とても子どもには見せられない、逆にいえば大人は大満足の活劇。なにしろ80年代初めなのに、SFXは控えめで、基本的にはロケーションと巨大セットで撮り切るスタイルが今観ると貴重。今作ればCGアニメデジタル大会になってしまうけど、監督の意向による雄大なスペインロケがなんといっても見どころ。

■なんとなく風景に既視感があるなあと思っていたら、あれですね。1960年代に量産されたサミュエル・ブロンストン製作の大作史劇の風景に似ている。それもそのはずで、それらもスペインで撮影されたから。なんでスペインかといえば、風光明媚で様々な映画映えする自然に恵まれているうえに人件費が安くて、エキストラの大量動員が可能だから。本作もその効果が絶大で、邪教集団の本拠地を実物大で建造して、1500人くらいのエキストラを動員したらしい。でもサミュエル・ブロンストン製作の歴史劇はその10倍くらいのモブシーンを撮ってますけどね。

■ドラマ的には弓の名人のレクサーや勇敢な女盗賊ヴァレリアが絡んでくるあたりから面白くなってきて、特にヴァレリアがどう見ても儲け役。サンダール・バーグマンというミュージカル女優が濡れ場も含めて出し惜しみなく熱演するし、ある意味木偶の坊である筋肉バカ(監督は思索的な複雑な人間だと言ってますけど)のコナンを真の男に育て上げる役どころで美味しい見せ場がたくさん。単なる野蛮人であるコナンに対して、女の情念という炎で鋼を鍛えるように接する、人間味のある役柄だし、もし自分が死んでもあんたを護ると宣言する情の深い女傑。しかもシュワと同格で、人体をザクザク切り裂く残酷アクションシーンも豊富だし、そこにベイジル・ポールドゥリスの燃える劇伴がかかって、まさに血祭りの高揚感!

■墓守のアキロを演じるのがマコ(マコ岩松)で、監督が舞台俳優として注目していたそうだけど、見た目がまるで赤星昇一郎子泣きじじいだし、やってることがまるで竹中直人なのもユニーク。しかも全編のナレーションも担当。もともと監督はシュワでいくつもりが、プロデューサーから訛った英語では困ると言われたんだって。明らかに黒澤映画を参考にしているので、日本人俳優を起用したのかと思いきや、そういうわけでもなさそう。でも、剣の師匠として山崎清という抜刀術の達人がシュワを指導してますから、やはり武士道も参照されている。

ベイジル・ポールドゥリスの映画音楽としても確かに充実しているし、コナンのテーマ、タルサの邪教集団のテーマと曲想のコントラストも明快だし、戦闘シーンの燃える楽曲に出し惜しみはないし、活劇映画として単純に堪能しましたよ。もともと音楽はエンリオ・モリコーネでしょ!とプロデューサーは考えたが、大学でも友だちだったジョン・ミリアスが推して彼に決まったそう。友だちは大事だね!
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ジョン・ミリアスの少し不器用な感じのさばき方も、映画が生ものだった頃の痕跡を残していて、いくつも凄いカットやシーンがある。意外な良作だったので、続編も観たくなってきたけど、監督はなぜかリチャード・フライシャーだし、撮影はジャック・カーディフに変わってる!

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