ひろしま ★★★☆

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出典:https://demachiza.com/movies/4477

ひろしま [DVD]

ひろしま [DVD]

ひろしま
1953 スタンダードサイズ 104分
DVD
脚本■八木保太郎
撮影■中尾駿一郎 照明■?
美術■平山透徹 音楽■伊福部昭
特殊撮影■小松浩 特殊技術■武田謙之助、高山良策
監督■関川秀雄

新藤兼人の映画「原爆の子」と同じ原作の映画化なのだが、同時期に企画していた日教組新藤兼人が意見の相違(主に原爆投下直後の地獄絵図を直接的に表現するかどうかという点)で協同できなかったため、日教組が独自で製作したといういわく付きの問題作。しかも、アメリカは黄色人種に対する差別心理から日本人に対して原爆の人体実験を行ったとあまりにもストレートな話題提供を行うもんだから、メジャー各社からは配給拒否を食らったという。しかし、この映画を観れば、確かにどこも二の足を踏むだろう。

新藤兼人の「原爆の子」は、広島原爆の悲惨を描く視点のもとめ方と、あくまで人間ドラマとして描こうとする姿勢が、本作と大きく異なっている。そして、本作の最大のテーマは、原爆炸裂後の広島の惨状を真正面から描くというところにある。そして、日教組の要請によると思われるあまりに図式的、教条的、しかも生硬な台詞や脚本上の不整合や構成のいびつさを補って余りあるのが、原爆投下直後の阿鼻叫喚を描く中盤部分なのだ。

■ひょっとすると、かなりカットされているのではないかと思われるほどお話の進め方が不自然なのだが、「原爆の子」でも、長崎の原爆被害を描いた後年の「この子を残して」でも断片的にしか描かなかった、あまりにも残酷すぎる現実をドキュメンタリー的な手法で真正面から描いただけでこの映画は価値がある。もちろん、現在のようなVFXや特殊メイクは無いから、広島で起こった被災者たちの肉体的な災厄は現代の映画における残酷ビジュアルのレベルから見れば穏やかなものだ。下手をすれば爆発コントの扮装のように見えかねない危惧があり、実際、部分的にはそうした違和感も感じられるのだが、関川秀雄は原爆で一瞬にして失われた命、被爆によって苦しい人生を科せられた人たちの怨念を叩きつけるように、この世ならぬ情景が現出した広島の町を執念深く描き出す。

■そして山田五十鈴加藤嘉が子供たちの行方を案じながら原爆症に倒れてゆく親を熱演する。本来なら日常劇のなかでもっと繊細な心理描写を演じる実力派がここではただ絶叫し、茫然自失として、日常が崩壊し、それどころか瞬時にして未曾有の生地獄と化した世界の中に置かれた人間のリアリティを感じさせる。

■原爆で吹き飛ぶ日本家屋とか、原爆投下後の広島の町の情景などをしっかりとミニチュアで表現しており、その美術スタッフとして高山良策は呼ばれたものだろう。特撮シーンも独立系のスタッフが制作しており、特殊撮影の小松浩は記録映画や教育映画で後に活躍したキャメラマン。特撮映画史的にも重要な作品だと思うぞ。

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