コテコテのミステリーだけど嫌いじゃないよ『天使のナイフ』

薬丸岳のデビュー作で、江戸川乱歩賞受賞作。もちろん悪くないけど、当然ながらミステリーなので無理やりなお話づくりが目に付くよなあ。最終的にコテコテのこれでもかの作為が積み重ねられる。それがミステリーなんだけど、作り話にしか感じられない。フィクションだから当たり前だけど、人間、歳とってくるとミステリドラマの作為は底が浅く感じられてくるものなのだ。

薬丸岳の原作による『刑事のまなざし』というテレビドラマは普通の警察ドラマと違って少年少女たちの心に寄り添った秀逸な作品だったので、薬丸岳の視点のユニークさに注目したのだけど、そこは本作も通底していて、少年犯罪を描く。でも意外と、そこに少年少女の心の痛みはあまり感じられない。ミステリーとしてのストーリーラインの強さがどうしても主眼になるからだ。

■そう考えると、やっぱりミステリーではないストレートドラマとしての『それでも、生きてゆく』の凄みが改めて認識される。正直、謎解きとか、真犯人とか、ドラマには必要ないのだなあ。それドラマじゃないよと、最近思う。ドラマに必要なのはミステリーじゃなくて、サスペンスだと思うな。

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