■さて、最後は結構佛田洋のキャリア上でもかなり重要な作品ですよ。深町幸男監督の『長崎ぶらぶら節』(2000年)です。まあ、特撮好きでも観ていない人が多いんじゃないでしょうか。でも結構な特撮大作だし、映画の規模的にも相当贅沢な作品。なにしろ西岡善信が美術担当なので、美術装置も大充実。
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■遊郭の全景をCGでとか、戦艦土佐が曳航される場面を特撮でやってくれという話と、ラストのホタルの場面は特撮が必須だろうということで佛田洋に声がかかりました。ホタルの場面はかなり丁寧な合成処理が必要なので、なるべく早い段階で本編を撮影してほしいと佛田監督は要望しますが、深町監督も吉永小百合に遠慮して言い出しにくい。切羽詰まって吉永小百合に一応交渉しますが、ラストの重要な場面なので前倒しはできないと拒否され、やっぱり無理でしたということに。
■なので、結局スケジュールの終盤で本編のシュートが行われ、合成処理に時間が割けないので、不本意なクオリティに落ち着く。なにしろ、ホタルの乱舞を特撮で描くといえば、1987年『螢川』で川北紘一とデン・フィルム・エフェクトがほとんど採算度外視で時間をかけて凝りに凝った幻想的な特撮絵巻を実現しているので、当然ライバル意識があるはず。でも結果的には、岡田社長じきじきに、「佛田、あれは何だ!!」と叱責されることに。佛田監督は現場作業の限界から来る諸々の苦衷を飲み込んで謝るしかなかったという。。。宮仕えは辛いね!!
■でもラストシーンの撮影では、ブルーバック撮影に慣れていない吉永小百合に、監督やキャメラマンから「行け!佛田行け!」「ちゃんと説明してこい」と指示されて、視線の指示とか直接演技付けを行うという貴重な体験をすることに。本作でこうして吉永小百合と直接話をしたので、『千年の恋 ひかる源氏物語』のしごとも吉永小百合があんたでいいと言っていると指名されたわけ。じつは吉永小百合御用達の特撮監督、それが佛田洋なのだ。(でも『北の零年』ではなぜか尾上克郎だったけど!)