実際いい映画が多いよね!『その場所に映画ありて プロデューサー金子正且の仕事』

■実はたまたま中古で安く入手してそのまま積読だったのですが、やっと読めました。金子正且は「かねこ・まさかつ」と読みます。まず読めませんよね。

藤本真澄の右腕だったので、一緒にクレジットされることが多く、なんとなく軽視されている感じはあるけど、実にいい映画を製作してますよね。小津安二郎で『小早川家の秋』、成瀬巳喜男で『乱れ雲』、鈴木英夫で『その場所に女ありて』、須川栄三で『野獣死すべし 』、恩地日出夫で『あこがれ』『めぐりあい 』、岡本喜八で『江分利満氏の優雅な生活』、森谷司郎で『赤頭巾ちゃん気をつけて 』とか製作しているので、非常に重要な人物のはず。

■金子Pがあまり有名でないのは、こうした東宝の小規模作品はあまり商品として積極的に売られていないので、当時劇場で観た人しか記憶していないからでしょう。

東宝という会社は、散々苦労させられたので愛憎半ばだけど世界中で儲かった黒澤明とか、これも世界中に売れた特撮映画は、大定番で売りやすいので積極的にセールスするけど、それ以外の作品の発掘とか普及にはまったく不熱心で、良い小品が忘れられたままになっている。

須川栄三の『ある大阪の女』『僕たちの失敗』とか、鈴木英夫の『燈台』とか、恩地日出夫の『高校生と女教師 非情の青春』とか、浅野辰雄の『街に泉があった』とか、渡辺邦彦の『白鳥の歌なんか聞えない』とか、大森健次郎の『二十歳の原点』なんて観たいけど、いまだに観られない。

■日活映画なんて、さいきん旧作をアマゾンプライムに大放出したおかげで、やっと全貌が見えてきて、正当な再評価が進んでいると思うけどね。東宝はそんなこと誰も考えない社風なので困る。DVDとか大々的に売る気がない作品は、アマプラなんかにどんどん放流して再評価を促すべきだと思いますけどね!

■ちなみに、金子Pは、もともと京大で演劇やってたとか、筧正典も同じ頃京大で演劇やっていて、毛利菊枝の劇団に参加していたとか、東宝はつくづく関西演劇、新劇界との関わりが深いことを再認識しました。田中友幸八住利雄や木村武(馬淵薫)だけじゃないのね。てことは、筧正典は、大島渚の大先輩てことですね!意外なことに丸山誠治も京大出身だけど、演劇関係ではないようだ。

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