この世は物理法則で成り立っているから精神主義の敗北は必然だよね!鬼哭啾々、南海の地獄『大日本帝国の興亡(新版)3 死の島々』

■ずっと前に買ったまま積読状態だったけど、この機会に読み出すと止まらなくなって一気に読みました。1巻、2巻も面白かった記憶があるけど、いよいよガダルカナル島の攻略失敗、山本五十六の戦死、サイパン島の玉砕と凄惨な悲劇のオンパレードで圧倒的に読ませる。

■もちろんノンフィクションなんだけど、特に本巻は露骨に泣かせにかかっていて、何箇所も思わず嗚咽する箇所がある。日本の戦記映画でも玉砕の惨劇、この世の地獄をリアルに描いたものは少ないから、新鮮な気持ちで読むし、確かにそうなるに違いない戦場の残酷なリアルを実感する。そして戦慄する。人の命は消耗品じゃないのに!

天皇から名も無い一般市民まで、日本国民一丸で戦って敗れた戦争のリアルを、まるで映画のようにサスペンスフルに構築した畢生の名著。日本でななぜかこうした太平洋戦争を一気に俯瞰させる名著がなくて、意外と個々の局地戦のドキュメンタリー文学だったりするので、本書は今もって有効な傑作。

■そう考えると、東宝東映の戦記映画はこの本の狙いに近いものがあり、総花的と批判されることもあるけど、例えば岡本喜八の『激動の昭和史 沖縄決戦』なんて、新藤兼人の狙いはこれに近かった気がする。包括的に何が起こったのかも描かれるし、その大状況の中で個々の人間が何を考え、どう行動したかも描かれる。人間ドラマの深掘りや機微はもちろん割愛されるけど、こうした作劇は決して的外れではない気がしてきた。

サイパン島の通訳(将校)は島で生き残った民間人看護婦に次のように言ったといいます。

「ワタシタチハ人道ヲ信ジテイマス、戦争ノサイチュウデモネ」

傷ついた敗残の日本兵たちは自決用の手榴弾を渡され、遺体の収容など約束もされなかったし、終戦後もほぼ放置された。米国は戦闘の都度、負傷者は収容されたという。遺体を放置するなどもってのほかで、そんなことをすれば世論は厭戦に傾き誰も出兵しなくなるので、終戦後も可能な限り遺骨の収集は組織的に行われた(そしていまも続いている。一方わが国は。。。)。資源に乏しく物量の生産力に致命的な限界を抱える中、人の命を鉄や油などの消耗品と同列にみなす大日本帝国には、物理法則の支配するこの現実世界において、勝利はありえないのだった。

■でも、人間を消耗品とみなす思考は、いまだにわが国に根強く生き残っているのだ(その実例をいくつも知っている)。。。嗚呼。

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