意外と薄味だけど、弁太とヒノエには幸せになって欲しい『火の鳥 乱世編』

■なんとなくずっと気になっていた手塚マンガが『火の鳥』なんですが、立ち読みした限りでは、正直あまり面白そうに感じなかったので、今回初めて読みました。『ブッダ』(傑作)も『奇子』も読んでるんですがね。

■正直なところ『平家物語』を下敷きにした薄味の歴史ドラマという感じで、それほど傑作とは感じなかったのでした。平民出身、というかさらにその下の出自(被差別の民としての山の民?)の弁太とおぶうの夫婦が『平家物語』の中に巻き込まれてゆき、それぞれが思いもしない運命をたどるというお話で、『平家物語』の部分があまり冴えないからそう感じたのだと思う。

■おぶうは吹子と命名されて清盛の側女になり、壇ノ浦の戦いまで平家と運命をともにするが、弁太は盗癖があるチビで行き遅れの娘ヒノエと出会って夫婦になる。おぶうとの関係よりも、終盤で提示されるヒノエとの行きがかりの、成り行きの夫婦関係の方が実は実感がこもっていて、そこに作者の強い意志を感じるし、ヒノエの描き方に作者の愛を感じる。

■最初に愛し合った者通しが幸福に結ばれるとは限らないし、自分に意志(本当にそうか?)で選び取ったものだけが絶対ではない。(神や仏のはからいによって)偶然に手にしたものこそが、本当は尊いものではないのか。そこに仏教(『ブッダ』の執筆)を通じて手塚治虫が自覚した思想が反映していると思う。が、どうか?

参考

平家物語』ならこちらの方がオーソドックスだと思います。
maricozy.hatenablog.jp
maricozy.hatenablog.jp
名作短編がいくつか入ってますよ。『ザ・クレーター』というタイトルに深い意味はないそうです。(マジ?)
maricozy.hatenablog.jp

© 1998-2024 まり☆こうじ