泣きながら映画を撮る男!『映画に憑かれて 浦山桐郎インタビュードキュメンタリー』

■この本は凄いですよ。ページが約500ページあって、浦山桐郎の関係者に原一男がインタビューした本ですが、そもそも関西テレビのドキュメンタリーのためにインタビューが行われたのです。当然、全部は使えないので、もったいないし文字起こしして、一冊の本になりました。でも、無類の面白さ。

■出演者やスタッフは言うに及ばず、親族まで赤裸々に浦山の人間性を語ります。いわゆる「蛇のウラ公」と言われる女優いじめも当然赤裸々に。映画界では有名だった酒乱のエピソードももちろん多数収録。日活を離れたあとの貧乏エピソードもリアルで切ないですね。映画監督として非常に高い評価を勝ち取った人なのに、この生活感。。。なんと脚本家として有名な一色伸幸が若き頃、浦山の撮った低予算のビデオ映画で助監督について、監督の面倒を見たというのだ。ああ、切ない。

■一番辛口なのは西河克己で、そもそも日活の製作再開時点で人材ブローカー的に暗躍(?)していた人で、若手の助監督の採用活動にも深く関与しているから、見方が辛辣。正直、意地悪爺さんって感じ。でも、若き頃の、駆け出しの時代の浦山の人間像が目に浮かぶようだ。いわゆる「ヒヨヒヨした」貧弱な助監督で、要領が悪い奴という見方なのだが、その後今平を兄貴分と慕って、今平組では献身的な助監督ぶりでスタッフの信頼感を勝ち取ってゆくのだから、人間はちゃんと成長できるのだ。

■ちなみに、浦山桐郎石堂淑朗とずっと組んでいたのだけど、映画で食えないならウルトラマン撮ったらどうかと誘わなかったのかなあ。浦山は『キューポラのある街』『非行少女』で子ども映画を撮ったと自負しているし、シュールレアリスム映画に感化されていたので、それなら円谷プロで撮ればよかったのにと実際思うのだ。

■ホントに面白すぎる人間像なので、浦山の人生を、是非劇映画化してほしいと思う。

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