■それらに比べると「ぬし」は起承転結が綺麗に決まって、恐竜の生き残りが出てくる民話テイストの時代劇として完成度が高いと思う。しかも、生き残りの恐竜がメスで、異類婚姻譚にアレンジしたところが趣深い。今現在の映像技術で十分に実写化できるので、これは誰か映画化して欲しい。武士道残酷物語の要素をもう少し加味して、主人公に人間の娘との恋愛要素を付加して恐竜との三角関係を構築して。。。十分に長編映画になりますよ。でも一番可能性があるのはNHKで単発ドラマにすることだね。是非、お願い!
■手塚漫画って、性差を乗り越えたり、近親婚が頻繁に登場したり、異類婚姻まで描くし、通常の一般的なヘテロな性意識を逸脱しがち、というかはみ出したい欲求が並々ならぬ物があり、本書もまさにそこがキモのように感じる。「海の姉弟」も近親婚モチーフの力作で、ただし結末部分が弱いので残念なんだけど。
■「月は生きていたんだ!」の台詞が堪らない「クレーターの男」もSFとして上出来の部類で、「アウター・リミッツ」なんかであっても不思議でないお話。もともと『ザ・クレーター』という連載タイトルに深い意味はなかったそうだけど、後付でつじつまを合わせるために書いたのではないかな。でも手塚版ジャミラって感じの異色作ですよね。