■日蓮と出逢って「他国侵逼難」の予言に対処するため外敵が最初に侵略するに違いない壱岐対馬で自分の身代わりとして目となり耳となり働くように言いつかった元漁師の見助という若者が元寇の前後を見聞するという形で、日蓮の主張と元寇の実情を綴った小説だけど、日蓮宗の教義もあまり描かれないし、元寇の脅威も見助という主人公が直接見聞きしたことに描写が限られるので、広がりがない。元が何を考えていたとか、鎌倉幕府が何をどう考えていたとか、歴史劇として並行して複合的に描写するスタイルではなくて、描写が見助の周囲の状況に限定される。それが新鮮な気もするし、結局知りたいことが書かれてなかったという残念感にもつながる。
■正直なところ、見助の人間性とかドラマとかに深みがないので小説としては辛いし、ミステリーでもないし、この小説の何が面白さの眼目なのか判じ難い。帚木蓬生の本は初めて読んだけど、他もこんな感じ?