ドンと来い!返り討ちだぜ、メガロドン!『MEG ザ・モンスター』


基本情報

The Meg ★★★
2019 スコープサイズ 113分 @Tジョイ京都(SC7)

感想

■地球の最深部と呼ばれるマリアナ海溝の底は地面ではなく、硫化水素の雲に過ぎなかった。その雲を突っ切ると真の深海底が眼前に。だが、そこに棲むのは絶滅したはずのメガロドンだった。襲撃され遭難した深海潜水艇を救出するために、海難救助のプロが召集される。われらがステイサム、その人である。。。

■シンプルな三幕構成のお話で、第一幕がオイルリグみたいな上海沖の海洋研究所の海面下で起こるサスペンス溢れる海洋科学活劇。この部分が非常に上出来で、映画一本分の興奮と近未来感とギミックに溢れている。タイで呑んだくれ生活を送るステイサムが海難事故に担ぎだされるあたりも、現地の子供たちに人気のステイサムの表情を見ているだけで癒されるし、深海底に取り残された元妻を救出に向かうさまも頼もしい。深海底の描写はもちろんCGで、少々暗過ぎて深海底のディテールが見えないのが残念だが、その方がリアルですね。とにかく畳みかける急テンポな展開がゾクゾクするし、マシ・オカの泣かせる退場まで息を継ぐ間もない。

■それに比べると、第二幕と第三幕はちょっとありきたりで、主に海上メガロドンとステイサムの知恵比べ、体力比べとなる。第二幕はステイサムがメガロドンにぶん回されるが、まるで平気だね!という力比べの場。メガロドンが実は、というツイストもあり。

■第三部はいかにメガロドンにとどめを刺すかを、潜水艇のアクションで描き出すから、ステイサムはほぼコックピット内での演技ですよ。でも、最後の最後は『白鯨』もかくやの一騎打ちを見せてくれる。

■『日本沈没』を想起させるビジュアルや怪獣映画らしいサスペンスを生かした第一幕はほぼ文句なしの傑作で★4つくらいで問題ないのだが、後半が随分拡散してしまう。海水浴場の謎の小太りのガキとか、謎の小型犬とか、中国市場を意識したものなのか、夾雑物にしか感じられない。

■実はステイサムと同格くらいにリー・ビンビンが活躍し、元妻との三角関係でやきもきさせるのかと思いきや、元妻はあっさりと祝福しちゃうので拍子抜け。その娘が子供視点を提供して、それは悪くないのだが、子役が可愛くないし、演技が臭い。せっかくステイサムと子供という癒される構図なのだが、どうもなあ。

■正直、ステイサム映画としては食い足りないですよ。でも、第一幕の潜水艇コクピット内での活躍なども、実は非常に決まっていてカッコいいので、第一幕はエンドレスで繰り返し観たい気がする。リービンビンも美形なので、コックピットが似合うこと似合うこと。

■しかも、撮影監督はなぜかイーストウッド映画の巨匠トム・スターン。前作『15時17分、パリ行き』なども、あまり映像的に、照明的に凝った作風は超越して、何気ない、癖のないルックを志向しているようなので、こうした映画にも興味を持ったのではないか。

■しかし、探査チームが硫化水素の雲を破ったから深海底からメガロドンが出てきたはずなのに、冒頭の原子力潜水艇の事故で既に出現してるのは何故だろう??

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