- 出版社/メーカー: 松竹
- 発売日: 2013/10/30
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感想
■1952年の共産党の山村工作隊の作戦失敗と1970年の現代の駐日大使の誘拐計画の失敗と10年後の1980年のこれまた駐日大使の誘拐計画の失敗の3つの時間軸が悪夢のように交錯し、革命幻想に翻弄された人々の迷宮空間を幾何学的な映像レイアウトで描く、いろんな意味で切れまくったATG映画。物語は所謂「寓話」ではなく、意図的に「夢想劇」として構築されているため、意図された意味を解読しようとしても、たぶんムダ。
■1952年の山村工作隊がスパイの内通によって挫折したトラウマが、今も、さらに10年後も人々を翻弄し呪縛し続ける。そんな誰かが観た悪夢を描いた映画といえるかもしれない。
■あるいは、誰かがいまわの際に垣間見た人生の走馬燈のような記憶と幻想の断片か。この世代の学生が共産党の六全協による武装闘争路線の放棄に深刻な挫折と絶望を経験したことは知識としては理解できるが、それはもう一つの敗戦体験だったのかもしれないとすら感じる。
■そして、特撮愛好家には常識だが、吉田喜重の70年代の前衛映画って、なぜか円谷プロの映像表現と深くリンクしている。大島渚に影響を受けた実相寺昭雄が、円谷プロドラマに、映像表現に、深い陰影を刻んだことはいまや常識だが、実は同じく松竹ヌーベルバーグの吉田喜重も実相寺に負けないくらいの影響を与えている。技術スタッフがなぜか(このあたりの経緯はいまだに不明)円谷から分派した日本現代企画系のスタッフだったりする関係で、吉田喜重組のスタッフが円谷プロに戻ってウルトラシリーズとかを撮っていたりするのだ。
■その中心人物は吉田組で助監督や製作を担当した岡村精だと思うが。そして、本作を観ると歴然としているのだが、抽象的で幾何学的な当時の最先鋭の映像表現は、そのままSF映画のルックに見える。今観ても十分にクールで、刺激的だから、ドラマの筋道や理屈が分からくても、黙って観るのがお薦め。映像のカッコよさだけでおなか一杯になるよ。そして、今でも通用する画づくりだと感じるはず。
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