ありきたりの学園ドラマじゃないよ!NHKドラマ10『宙わたる教室』を追跡中!(#6まで)

■またまたNHKで意欲的なドラマが始まりました。いわゆる学園モノでしょ?夜間高校を舞台の、よくあるやるでしょ?と敬遠していたけど、観てみると、これは『Shrink』とも通じる癒やしのドラマですね。『Shrink』ではそのカリスマが中村倫也のところ、本作では窪田正孝です。しかし、ちょっと痩せ過ぎではないかい?おじさんは心配になるよ。ちゃんと食べてますか?

maricozy.hatenablog.jp

■第1話「夜八時の青空教室」は、まだ普通の学園ドラマぽいですよ。でも「ディスレクシア」をテーマに設定するあたりが、さすがにNHKで、民放ではできません。アーノルド・シュワルツェネッガートム・クルーズも該当するらしい識字障害。まあ、このところNHKドラマ班は、こうした未開拓のテーマ設定や社会的マイノリティを取り上げた企画でないと会議を通らないことになっているようです。なかなか民放では考えられないですね。

■第2話「雲と火山のレシピ」もできが良くて、「ジャパゆきさん」の娘をガウ(マリア・テレサ・ガウ)が演じる。あのウルトラマンガイア』のジョジーですよ!すっかり貫禄ですね。マイノリティとしての混血児(さいきんはミックスというらしい)の生きづらさを描く。まあ、このところNHKのドラマは人権啓発ドラマが基本線になっていて、社会的マイノリティを描くことに全精力を傾注しているすごい状態。脚本の澤井香織という人は、やはりかなり上手い人のようだ。

■第3話「オポチュニティの轍」は、映画化でも有名な小説『火星の人』が下敷きになっていて、3ヶ月の孤独なミッションの予定を、実に15年も続けた火星探検車オポチュニティの栄光とその最期を紹介し、その辿った火星上の轍の1枚の写真を土台にしながら、消えたいと願う自傷癖の少女のリスカの躊躇い疵のあととを、重ね合わせるという天才的な見立てが圧倒的なエピソードで舌を巻きました。これは凄い。

■演出の吉川久岳というひと、良いね。と思ったら、あの傑作『むこう岸』の人ですね。脚本の澤井香織も同様。第3話のこの見事な見立て技は、クリーンヒットでしょう。まあ、テレビドラマ各賞受賞は間違いないところですよ。

■第4話も良好でした。さすがにレベルが高いです。

■ついにイッセー尾形が主演の回で、当然のように一人芝居の見せ場がクライマックス。観客も演出家も現場のスタッフも待ってました!というところで、期待通りに堪能させます。町工場の社長は、なぜあんなに熱心に質問を重ねるのか?その理由が、高度成長期の労働環境を踏まえて切実に語られます。基本的にお涙頂戴ドラマではないけれど、自然な感動がありますよね。

■隕石の衝突は大規模な破壊ももたらすが、新しい別の環境を生み出す。世代間の衝突に重ねて描く見立て技が、今回も秀逸で、全てにおいてレベルが高い。でも、ほんとうのドラマは次回から始まるのでは?

■第5話「真夏の夜のアストロノミー」は、科学部の関東高校生科学研究コンクールへの登録拒否をめぐって、窪田正孝がブチ切れるというお話。火星のクレーター再現実験に本格的に取り組み始める。

■第6話「コンピューター室の火星」は、昼間部のコンピュータ部の生徒(南出凌嘉)が、夜間部の科学部にリクルートされる。火星の低重力をいかにして再現するか?そこにむけて、シミュレーションが進み、はじめはバカにしていた南出凌嘉も、巻き込まれてゆく。同時に彼の抱える家庭問題が浮き彫りにされる。夜間部の小林虎之介が彼の家に乗り込んで、家庭内暴力を振るう弟を静止すると、ずっと弟を疎ましく思って避けてきた南出くんも、少し気持ちに余裕が生まれる。

■今回もいい塩梅ですね。クレーターの衝突実験が急速に進展して、どんどんロジックが専門的になります。一方で、南出くんの家庭事情、というか弟の抱える問題は、あっさりと片付けられてしまったけど、もう少しフォローが必要な気はするよね。(つづく)

© 1998-2024 まり☆こうじ