なんとなく森一生に似ている気がする『平山秀幸映画屋街道 呑むか撮るか』

参考

平山秀幸の映画は結構好きで、大半は観ているけど、最近の映画は見逃している。『エヴェレスト 神々の山嶺』『閉鎖病棟』ですね。

■なんというか、湿っぽい、いかにもお涙頂戴な描き方をしない人という印象で、人物を撮るときにも、安易にアップには寄らない。むしろ、クライマックスで大きく引いて撮るから、編集技師には映画のメリハリとかリズムがわかってないと、最初は言われたそう。でも、それって森一生に似てるよね。キャメラマンのコンビは柴崎幸三で、山崎貴と名コンビでもある人だけど、演出の姿勢は大幅に異なるので、スタイルを器用に使い分ける人なのだ。

加藤泰の『炎のごとく』の現場での若山富三郎のイメージ通りの暴れっぷりとか、それを「富!!!」と一喝した松本常保のエピソード(傑作)とか、加藤泰からも怒られたけど、映画史の伝説の人ばかりなので、楽しくて仕方なかったらしい。肝が座っているのだ。

■後年の失敗作『魔界転生』でも、東映京撮の職人たちとの仕事が楽しくて、映画の出来よりも、映画屋の裏方の仕事が楽しくて仕方なかったという。あれは、もともとコンビの橋本満明をメインで特撮を処理しようと思っていたけど、東映には特撮研究所がありましてね、と言われて、混成チームになった。その結果、平山監督のイメージ通りにはならなかったようだ。まあ、そのあたりは想像通りだけど。同様に、『フォックスと呼ばれた男』では、尾上克郎が戦闘シーンの監督になって、平山本人は一時帰国しているので、撮っていないそう。米側の撮ったサイズが気に入らないとか、いろいろあったらしい。一応、総監督だけど。

■『魔界転生』でフルショットの殺陣はいかにも吹き替えだったけど、実際東映剣会のベテランが担当していて、その反省から『必死剣鳥刺し』では全部本人に演じてもらったそう。その成果は実際見事なものだった。

■『マリアの胃袋』とか『学校の怪談』シリーズとか『愛を乞うひと』とか、怪奇映画にそれなりのこだわりがあるのかと思えば、そうでもないようで、とにかく淡々としていて、現場が楽しくて、スタッフと呑むのが楽しいという気の良い(?)おじさんらしい。やっぱり、いろんな意味で森一生と似ている気がするけどなあ。(森一生よりはこだわっていると思うけど)

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