八日目の蝉 ★★★☆

八日目の蝉
2011 ヴィスタサイズ 147分
ユナイテッドシネマ大津(SC5)
原作■角田光代 脚本■奥寺佐渡
撮影■藤澤順一 照明■金沢正夫
美術■松本知恵 音楽■安川午朗
監督■成島出

■乳児の頃、父親の愛人に誘拐され4歳まで育てられ、その後実の父母の元へ連れ戻された娘が、誘拐事件の記事を書きたいという女とともに、自分のルーツを辿る旅に出るという、異様な設定によるロードムービーかつ大メロドラマ。もっとリアルなお話かと思いきや、若干ファンタジー寄りだ。

■メロドラマとしてはかなりよくできており、クライマックスの小豆島の写真館や船着き場の場面は否応なしに泣かされるのだが、写真館の主人の田中泯のまるで魔法使いのような演出は少々やり過ぎだし、井上真央の迎えるラストシーンはドラマ的には十分には腑に落ちない。原作どおりではなく映画オリジナルの展開らしいが、考えるに、脚本家の奥寺佐渡子とのコンビも多い平山秀幸の「愛を乞うひと」のラストと似てしまうことを避けたものだろうか。

井上真央の旅と永作博美の逃亡の旅が並行して描かれるために147分という異様な長尺となっているのだが、正直いって2時間程度に収めるべきお話だ。山本薩夫の社会派大作じゃないんだからね。成島出の演出はじっくりと腰を据えて役者の演技を引き出しているが、場面によっては、やはり冗長とも感じる。特に、冒頭付近はもっとテキパキと物語に導入してほしいものだ。特に冒頭付近のスローモーションの多用はいただけない。

小池栄子もいい配役だと思うのだが、彼女のドラマの決着が描かれないので、井上真央との関係性に違和感が残る。それにも増して違和感があるのは、井上真央のドラマの描かれ方で、彼女の抱える問題が描かれていないので、ラストに到達する境地との落差が感動に結びつかない。井上真央が普通の女学生にしか見えず、彼女の今の人生に何の問題があるのかよくわからないためだ。

■たとえば野村芳太郎などが演出していれば、脇役のドラマにももっと目を配った大作になっていただろう。余貴美子の教祖様は上出来でよく頑張ったと思うけどね。

■製作は日活、松竹、アミューズソフトエンタテインメントほか、制作はジャンゴフィルム。
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