対岸の彼女 ★★★

対岸の彼女
対岸の彼女
2006 ヴィスタサイズ 105分
DVD
原作■角田光代 脚本■神山由美子、藤本匡介
撮影■釘宮慎治 美術■中澤克己 
照明■上田なりゆき ■長谷部徹
視覚効果■橋本満明 合成技術■光学太郎
監督■平山秀幸

平山秀幸WOWOWで撮ったテレビドラマで、劇場では上映されていない本作、そもそも存在自体この前まで知らなかったし、原作の直木賞受賞小説もまったく知らなかった。何故見たかといえば、平山秀幸の監督作だから。

■しかし、作りは完全に映画そのもので、低予算ながら独特のテンポも含めて平山映画そのもの。ただし、物語はかなり歪で、それは角田光代の作品世界によるものだろう。『八月の蝉』にも通底する女同志の人間関係にしか興味がない人間感の奇妙な偏りがここでも顕著で、実際、主人公はレズビアンと批難される場面があるが、実際は性的な関係性は無くて、偏見に過ぎないという描き方にはなっている。

■現在と20年前のドラマが並行して描かれるのだが、過去のドラマは財前直見の高校生時代の女友達との関わりが描かれるのだが、現在の物語の主人公は彼女ではなく、夏川結衣というところが構成の奇妙なところで、当初、観客は必ず混乱する。なぜなら20年前の彼女と夏川結衣がそっくりだから。でも、これは監督の意図ではなく、偶然らしい。そんな偶然を許してしまうところが平山秀幸らしい鷹揚なところだが、この混乱が奇妙な味になっている部分もある。

■しかも、20年前の石田未来多部未華子との逃避行、自殺未遂を経て、どうやって財前直見の演じるやさぐれた女社長になったのかという部分は、バッサリと省略されていて、そこは想像に任せるという構成になっているところがユニークで、その人間性の謎を謎としたそのまま投げかける部分がスリリングで面白い。20年前の石田未来多部未華子カップルと財前直美&夏川結衣カップルが対比される構成だが、そこに奇妙な捩れを持ち込み、たぶん原作以上に謎を残した脚本は、結構意欲的。

石田未来多部未華子と生木を裂くように引き離され、その後再会することもなく、それでも何か大きな欠落を抱えながらささくれた生き方を続けて、一応大人になったけれどという哀しみを、真正面からではなく、夏川結衣に反射させて描くという、かなり技巧的な構築になっているのだ。だから、財前直見は主役ではあるものの、旨味は少ないという微妙な役柄。実際のところ、配役が成功しているのかどうかは微妙に感じる。

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