基本情報
明治侠客伝 三代目襲名 ★★★
1965 スコープサイズ 91分 @DVD
企画:俊藤浩滋、橋本慶一 原案:紙屋五平 脚本:村尾昭、鈴木則文 撮影:わし尾元也 照明:北口光三郎 美術:井川徳道 音楽:菊池俊輔 監督:加藤泰
感想
■明治末期の大阪、木屋辰一家の二代目(嵐寛寿郎)が何者か(汐路章!)に刺された。星野組が裏で糸を引いていることは明らかだったが、正業を大事にする親分は喧嘩を許さない。二代目が没すると、未亡人(毛利菊枝!)は渡世のしきたりどおり、実子(津川雅彦)ではなく、若衆の菊池(鶴田浩二)に三代目を指名する。。。
■という骨格に鶴田が知り合った娼妓初栄(藤純子)との悲恋が並行して進み、むしろ映画のメインは浪花情緒濃厚な恋愛映画に見えるようになっている。それは加藤泰の意図だったらしい。さらに、流れ者の藤山寛美が一種のトリックスター的に振る舞って、二人の間で往還する。藤山寛美の見せ場が多いのもこの映画の特徴。
■撮影期間が通常の2/3くらしかなかったらしく、倉田準二にB班を任せたそう。大した役ではないけど関西新劇会の巨人 毛利菊枝が出るわ、丹波哲郎も出るわで、配役が豪華なのは東映らしいところ。でも1965年なので、まだ丹波哲郎もあまり貫禄がなくて、お得意の丹波節も開発途上。むしろ冒頭に刺客として登場する目つきのヤバい流れ者を汐路章が演じて一番の役得だろう。中盤にも面通しの場面で登場して不敵にほくそ笑む。このあたりはもう加藤泰の趣味でしょうね。弟子の倉田準二も『仮面の忍者 赤影』で重用し、汐路章は比叡平に赤影御殿を建てたそう。(京都では有名な逸話)
■今回久しぶりに加藤泰を観て思い出したのは、カッティングの鋭さだな。ローアングル、長廻しが有名でそっちのイメージばかり記憶していたけど、グラフィカルな構図と、先鋭的なカッティングと省略(飛躍)とメリハリは、やはりこの世代の監督の共通的な特徴なんだな。まあ、増村保造、舛田利雄、岡本喜八、沢島忠、三隅研次らよりもお兄さん世代なんだけど、共通するところがある。特に冒頭の襲撃場面なんて、祭りのシーンをあえてステージでホリゾント前で一発撮りってのが痺れる。まるでヒッチコックのようなカット割りもセンスが良いし、秀逸な演出。
■でも加藤泰がやりたかったのは鶴田と藤の男女の情愛ドラマで、そこはみっちりと撮るけど、正直なところ脚本の描き方はまだ類型的だと感じる。任侠映画末期にはもっと先鋭的なドラマに発展してゆくからだ。例えば『博打打ち』シリーズとか『緋牡丹博徒』シリーズとか。どうも今回感じたのは、加藤泰って、東映流の活劇じゃなくて普通に文芸もの撮ったほうが良かったんじゃない?てこと。実際のところ、後に五社英雄が撮ったような映画は加藤泰が撮ればよかったんじゃないか?それに加藤泰って、どうも批評家に過大評価されたところがあるよね。これはかえって持ち上げられすぎて逆効果の場合があるから、良し悪しだよなあ。(個人的には深作欣二もそう感じますけどね)
参考
加藤泰はそれなりに観てますよ。でも肝心の『瞼の母』の記事がないなあ。あれは名作。でも『真田風雲録』も大好きです。そうそう、加藤泰といえば『緋牡丹博徒』3本は欠かせないから、近々に再見しよう。
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『博打打ち』シリーズって、良いんですよね!任侠映画も末期だし、これまでやってないドラマを見せようという意欲がヒシヒシと。
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