破蔵師は見た!戦後の怪事件の闇に迫る『にっぽん泥棒物語』

基本情報

にっぽん泥棒物語 ★★★
1965 スコープサイズ 117分 @VHS
脚本:高岩肇、武田敦 撮影:仲沢半次郎 照明:桑名史郎 美術:森幹男 音楽:池野成 監督:山本薩夫

感想

■破蔵師の儀助は仕事をしくじった後に深夜の東北本線線路上で不審な九人の男たちと遭遇し、翌朝、線路が外されて列車が転覆したことを知る。その後、儀助は指先の器用さを生かして歯医者(もちろん無免許)として地元の名士になるが、昔の仲間に列車転覆事件の犯人は九人組だと漏らしたことから、逮捕された組合関係者の弁護団から裁判での証言を懇願されるが。。。
■占領時代の1949年に起こった松川事件をモデルとして、というか実際の松川事件裁判で証言した元窃盗犯の証言を元に喜劇タッチで描く社会派映画。後半が裁判シーンという記憶だったが、実際は三幕目が裁判シーンで、意外と短いのだった。
山本薩夫には1961年に『松川事件』という映画があり、これは事件の係争中に、真犯人は他にあり冤罪事件であるという主張を謳った真面目な映画で、闘争に奉仕する映画であって、劇映画としてはそれほど面白くはないのだが、本作は松川事件の裁判終了後に作られており、視点もユニークだし喜劇仕立てというのも異色で、公開当時も批評的には好評だった模様だ。ただし東映の番線での興行的は芳しくなかったようだ。
■主演の三國連太郎はもう臭い芝居を存分にやり抜いて満足したことだろうが、お付き合いさせられた佐久間良子は大した役でもないのに気の毒。名手と言われる仲沢半次郎キャメラはロケは悪くないけど、裁判所シーンはひどくて、性能の悪いズーム撮影を乱発して、佐久間良子の顔は真っ白く飛ぶし、ピントは甘いし、まことに見苦しい。同時期の日活のモノクロ撮影の精妙さなどに比べると全く比較対象にならない。三國連太郎の証言に陪席がやたらと大爆笑するのをパンでみせるのも興ざめで、単純に演出のセンスが悪いと言わざるを得ない。
■元々犯罪者だけど、素性を隠して成り上がって名士の仲間入りしている男の姿には、同じく三國連太郎が演じた『飢餓海峡』の主人公の姿がだぶるが、なんと同じ年に公開されているのだ。しかも同じ東映で。三國連太郎もそのあたりの演じ分けを苦心したことだろう。三國連太郎は一部の理論派新劇人などが嫌う小芝居が多い人なんだけど、それを小芝居と感じさせない貫禄と押し出しの強さがあって、やはり映像作品では映える。



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