宇野信夫の有名怪奇小説が原作だけど:怪奇十三夜「怪談首斬り」#12

■原作:宇野信夫、脚本:国弘威雄、撮影:萩原泉、照明:安藤真之介、美術:柴田篤二、音楽:牧野由多可、監督:久松静児

■代々の首斬役人、山田浅右衛門瑳川哲朗)は孕んだ女を斬首したことから、女亡霊に苛まれる。刀の中に、死んだ女の顔が浮かび上がるので、代々伝わる刀を手放すが、何の因果か、すぐに舞い戻ってくる。最愛の息子は急死するし、斬首した死体から肝を取り出して転売しているという噂が、江戸の街に出回る。。。そして浅右衛門は憔悴し、狂ってゆく。

■原作は、宇野信夫の結構有名な「刀の中の顔」という怪奇小説だけど、未読。自薦戯曲集のタイトルにもなっているので、自信作なのだろう。

■自分が死んだら肝を抜いてもらっていいから、いま10両貸してくれと申し出る小悪党、佐野浅夫のエピソードは面白いけど、後半は凡庸に終わる。これはなんでも有名な逸話らしい。

■首斬役人の怪談としては、宮川一郎が「日本怪談劇場」で書いた「怪談 首斬り浅右衛門」の方ができは良かったな。あちらは、卑しい身分から出世したという設定で、江戸時代の身分制の理不尽を描いていたけど、こちらは由緒正しい武家でもあり、いろいろと伝わる有名な逸話を寄せ集めた趣向のようだ。死体の内蔵を製薬用に取り出したという逸話も伝わるけど、単なる噂と一蹴している。

■すぐに殺される薬売りが工藤堅太郎、殺したあん摩に祟られる小悪党が佐野浅夫と、配役は豪華だし、監督はあの『怒りの孤島』も撮った名匠、久松静児なんだけど。原作小説はいちど読んでおきたいものだけど、宇野信夫の怪談趣味って、いまいちよく分からない。怪談ものの歌舞伎をいっぱい書いているんだけどね。

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