荷車の歌 ★★★★

荷車の歌 [DVD]
荷車の歌
1959 スコープサイズ 145分
NHK BS2
原作■山代巴 脚本■依田義賢
撮影■前田実 照明■内藤伊三郎
美術■久保一雄 音楽■林光
監督■山本薩夫

■農協の出資による独立映画なので農本主義的なもっと地味な真面目一方の農民映画かと思っていたのだが、実は全く違う映画なので驚いた。そもそも農民の映画ではないのだ。そしてかなりの傑作なので、感心した。出資したのは農家の嫁さん連中らしく、農家でもない荷車引きの苦しい生活をリアルに描く中に、明治から昭和にかけての女=嫁の普遍的な姿が念入りに造形されていることから大いに支持されたものらしい。明治、大正、昭和の三時代を懸命に生き抜いてきた嫁=母の労働の姿は、今見ても非常にリアルに見えるし、感動的だ。望月優子の名演はここでも凄いし、老けをリアルに演じようとする三国連太郎の熱演も素直に立派。
■とにかく依田義賢年代記シナリオが秀逸で、台詞にも血が通い、人間像がリアルで力強い。貧しい暮らしの中、必死で子を育てようとする親の心には何度も泣かされる(まだ前半ですよ)。子役で登場する左時枝の名演も大きな見所で、底意地の悪い姑に死ね、死ね、早く死んでしまえ!と罵詈雑言を吐きかける場面は母親の心の声を代弁して泣き笑いの名シーン。(続く)