太陽のない街 ★★★

太陽のない街
1954 スタンダードサイズ 144分
DVD
原作■徳永直 脚本■立野三郎
撮影■前田実 照明■?
美術■久保一雄 音楽■飯田信夫
監督■山本薩夫

共同印刷争議をモデルとしたプロレタリア文学の名作を映画化した大作。劇中では大同印刷となっている。映画ではすでに争議が始まっており、ある娘(桂通子)とその恋人の争議団の男(原保美)が警察に検束されて責め殺されるエピソードを中心として、大規模争議の顛末が描かれるが、その作劇は東映実録映画を髣髴させる。要所要所に争議団とやくざ者の乱闘が描かれ、争議団の勝利を祈りながら苦界に身を沈める娘や先の娘が落命する愁嘆場が用意される。東映実録映画の集団劇のドラマツルギーの原点はこのあたりにあるのではないか。

■しかし、映画の焦点は太陽のない街に住む工員たちの争議をめぐる喜怒哀楽にあるようで、争議そのものの展開や顛末は案外あっさりしており、後に山本薩夫大映東宝で撮る社会派大作のほうが、資本側の論理や非情さや人間性をよく抉り出している。ラストも、争議団の団旗の奪い合いに集約させるのは、あまりに単純過ぎる気がする。

■そもそも、独立映画始まって以来の大セットと謳われた太陽のない街の建込も、正直言って映画的な魅力には乏しい。太陽のない街という言葉でイメージする自然発生的なスラム的な密集集落ではなく、工場に併設された簡易住宅といった風情なので、基本的に計画された街並みなのだ。

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