感想(旧ブログから転載)
執拗な信長(城健三朗)の忍者狩りによって幼子を虐殺された石川五右衛門(市川雷蔵)は雑賀党に身を寄せ、陰から光秀(山村聡)をそそのかして本能寺の変を誘発させる。
安易なヒット作の続編と思いきや、スケール的にはシリーズ1作目を上回る大作で、山本薩夫らしい大がかりな政争劇なので驚く。特に前半2/3までの信長、秀吉、光秀、家康の4者を巡るを硬骨な政略劇には後の「傷だらけの山河」や「白い巨塔」の萌芽をみることができ、大映時代劇の優秀な技術スタッフに支えられて、極めて贅沢なオールスターキャスト映画となっている。そうした意味においては、1作目より更に面白い。身も蓋もないほど面白いといってもいい。
本能寺の変のシーンで、寺の内部に忍び込んだ五右衛門が信長の片手、片足を切り落として一寸刻みになぶり殺しにする凄惨なアクションには、後の「子連れ狼」シリーズの出現を予告しているようにも見える。怨念に身を任せきった雷蔵の残虐な表情が、マジに怖い。仮にも大映を背負った看板俳優の復讐をここまで無惨に描ききった山本薩夫の情念の激しさには驚かされる。こうした過剰な情念の発露は後年の東映実録シリーズ等に受け継がれることになる(ウソ)。
しかし、政争劇としては身も蓋もなく面白いこの部分も、肝心の雷蔵はほとんど脇役の一人に過ぎず、実質的な主人公は山村聡にしか見えない。山本薩夫の次作「傷だらけの山河」で山村聡が主演を演じたのもこの映画の成功があったからに違いない。
後半の1/3では雑賀党の砦が秀吉に滅ぼされ、五右衛門の妻(藤村志保)も虐殺される。今度は秀吉を仇と狙う五右衛門だが、逆に捕らえれられて釜ゆでの刑に処せられる。しかし、この部分はどう見ても付け足しで、脚本的にも演出的にも生彩がなく、あまり誉められたものではない。
山本薩夫作品の特徴である独特の左翼系知性派俳優のキャスティングがここでも顕著で、山村聡や東野栄治郎は当時の定番としても、家康の永井智雄が通常の時代劇では見られない神経質な役作りで異彩を放ち、山本圭(出たッ!)が紅顔の森蘭丸を演じてファン(どんな?)の度肝を抜く。まさか後に過激派セクトで活動したり、爆弾作ったりしてすっかり屈折してしまうとは思いも寄らぬ美丈夫ぶりである。そうした一方では、京都土着の城健三朗時代の若山富三郎が積もりに積もった鬱憤をギラギラ放射して、ほとんど狂人寸前の信長を怪演する。まあ、山本薩夫の描く悪人にしては随分単純なキャラクターだが、このアクの強さは壮絶。
ちなみに、LDジャケットでも服部半蔵役は天知茂となっているのだが、実際は伊達三郎が演じている。おそらく初期のキャスティングが何らかの事情で変更されたのだろう。しかし、天知茂は適役だったろうなあ。
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