『娘・妻・母』

基本情報

娘・妻・母
1960/CS
(2005/7/7 TOHOシネマズ二条・PS)
脚本/井手俊郎松山善三
撮影/安本淳 照明/石井長四郎
美術/中古 智 音楽/斎藤一郎
監督/成瀬巳喜男

感想(旧HPより転載)

 父親を欠いた山の手の家族は、夫を交通事故で亡くした長女(原節子)が出戻り、長男(森雅之)が融資先に夜逃げされると、崩壊の危機を迎える・・・

 昭和35年の東宝の正月映画で、東宝スコープ、総天然色によるオールスターキャストの家族劇だが、井手俊郎松山善三のオリジナル脚本が冴えわたり、大家族の群像劇を淡々としかし辛らつに描き出す佳作。成瀬巳喜男の安定した力量をうかがい知ることができる好篇である。ニュープリントで見ると、そのカラーの贅沢な発色に陶然とする。

 生活能力が無く、家族の重荷になり、結婚するしか能が無いと自嘲する長女を原節子に配役する残酷さも成瀬らしいところかもしれないが、見事にハマった巧演で、30歳半ばの世間知らずなお嬢さんという手に負えない人間像をキュートに演じ切る原節子の捨て身の演技が痛々しくも魅力的だ。
 一方に、森雅之の妻として高峰秀子が配置されているが、こちらは小さな役で、役不足というところ。森雅之はいつものようにインテリで頼りがいがありそうで、やっぱり肝心なところで頼りない役を完璧に演じて、他の追随を許さない。


 一家の大黒柱だが、重大な判断には自信が無い母親を三益愛子が上品に演じて、一方の娘の嫁ぎ先の姑を演じる杉村春子との対比も味わい深い。杉村春子と小泉博の親子という珍しい光景が見られるのもこうした映画の楽しみのひとつだろう。

 若手の中では団令子が設け役で、この女優はこの時期の東宝映画を走り抜けたトリックスターではないかという気がする。若い世代の代表として辛らつな言葉を投げかける重要な役柄を嫌味なく演じる個性が貴重だ。

 この映画の異様なのは家族劇を経済劇として構成した点にあり、終始お金の話題で展開してゆく野心作でもある。

 愛する年下の男との別れを決心した原節子についても、最後まで残酷で皮肉な結末を用意する底意地の悪い脚本と演出の淡々とした異形さは特筆に価するだろう。全盛期は過ぎているとはいえ、決して軽んじることのできない異色作である。
 *参考
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