驟雨
1956 スタンダードサイズ 91分
BS2録画
原作■岸田國士 脚本■水木洋子
撮影■玉井正夫 照明■石井長四郎
美術■中古 智 音楽■齊藤一郎
監督■成瀬巳喜男
倦怠期に入りつつある夫婦の日曜日の憂鬱を小さなエピソードの集積で描き上げてゆく成瀬らしい小品だが、紙風船を持ち出したラストはやはり唐突。脚本が改変されたらしく、完成度を貶めている。
新婚旅行の愚痴を泣きながら明かす香川京子の場面が最高におかしく、きゅうりの件は傑作。
原節子と佐野周二の掛け合いも事細かな日常的な事象を煮詰めた、ある意味で世知辛い嫌な作劇だが、成瀬の映像レトリックのおかげで映画ならではの表現に昇華している。
また、佐野周二という役者の巧さと品を堪能することができる。「花影」でもいい味を出してたが、森雅之同様大人の雰囲気というものを自然に身に着けていて、演技のなかに発散されているのだ。近年の役者は、たいていはこちらがデビューの頃から知っているせいかもしれないが、なかなか大人になりきれない不甲斐なさが目立っていけない。