「作劇術」

■「作劇術」というタイトルだが、シナリオの書き方といったノウハウではなく、新藤兼人の映画人生を振り返る長編インタビューである。しかも、すこぶる面白い。

■特撮映画好きには田中友幸も登場する「地震列島」の件などが興味深い。初稿は悪人ばかりが登場する設定で、東宝映画の田中友幸は納得したが、親会社東宝の松岡社長が一蹴して書き直しになったとか、当時東宝社内で田中友幸は発言力が弱かったとか、貴重な証言が掲載されている。それ以外にも日本映画史にかかわるエピソードが満載で、お腹いっぱいだ。

■ちなみに、近代映画協会という独立プロは、新藤兼人じたいは左翼だが共産党員ではなく、東宝などをパージされた共産党員のプロデューサーを迎え入れていたということらしい。山本薩夫とはそりが合わなかったというのも、意外。
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神山征二郎の「郡上一揆」のつまらなさも指摘しているのも興味深い。神山征二郎新藤兼人の弟子なのに、なんであんな脚本に満足するのか、不思議でならない。

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