妻 ★★★☆


1953 スタンダードサイズ
BS2録画

原作■林扶美子 脚本■井手俊郎
撮影■玉井正夫 照明■石井長四郎
美術■中古 智 音楽■斉藤一
監督■成瀬巳喜男


 倦怠期を迎えた妻(高峰三枝子)は暖簾に腕押しの夫(上原謙)に嫌気がさしている。夫は元会社の部下の未亡人(丹阿弥谷津子)と急接近してゆくが、それに気づいた妻は・・・
 倦怠期の夫婦の煮詰まった関係を辛らつな視点で描いたなかなかの傑作。
 なんといっても、不自由なく暮らしてきたお嬢様の成れの果ての妻の小だらしない生態が事細かに且つ執拗に描き出す悪意の凄さに圧倒される。内職仕事の手作業と同時に絶えず何かを口に入れているだらしなさを高峰三枝子に演じさせる監督の意地悪さに痺れる。巨大なヒラメ(笑)をもって訪れた親友の高杉早苗に呆れられる場面など、高峰の自堕落さを暴き出して、痛快なほどだ。
 さすがにこの二人だけでは辛気臭すぎるので、ヌボーっとした三国連太郎中北千枝子のエピソードで世界観に幅と余裕を持たせている構成は確かなものだ。
 ラストのナレーションで二人の気持ちのすれ違いを表現した作劇は、井手俊郎自身が不本意だったと述懐しているとおり、ベストではないが、それほど悪くもないだろう。

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