鰯雲 ★★★

鰯雲
1958 スコープサイズ 130分
BS2録画
原作■和田伝 脚本■橋本忍
撮影■玉井正夫 照明■石井長四郎
美術■中古智、園真 音楽■斎藤一郎
監督■成瀬巳喜男

橋本忍成瀬巳喜男という異色コンビによる農家の未亡人を中心としたメロドラマ。未亡人の恋というお話と、地主であった農家の没落と世代交代という複雑な構成と多彩な登場人物をそれなりに捌いて見せた橋本忍の脚本は決して悪くは無い。ただ、メロドラマの彫りの浅さは如何ともしがたい。
中村鴈治郎がもうひとりの主役で、戦後の農地解放で没落した大農家の本家としての面目を保とうと、いろいろとセコイ画策をするが、すべてが若い者たちに覆されてゆくという悲劇的な人物を熱演している。発展家の女子高生を演じる水野久美が、可愛いというよりも、農家のオバサンが呟くように、”男を知り尽くしている”感じがして、卑猥だ。
■農家の家の中の造作とか、田園地帯でのロケとか、とにかく映像が素晴らしく、緑色の出方がちょっとくすんだ渋い感じのカラー撮影が絶品。小さな話ではあるが、シネスコ撮影の値打ちがよく生かされた企画であり、丁寧な作風で、小さな贅沢品である。