歌行燈 ★★★

歌行燈
1943 スタンダード
BS2録画

原作■泉 鏡花 脚色■久保田万太郎
撮影■中井朝一 照明■岸田九一郎
美術■平河透徹 音楽■深井史郎
演出■成瀬巳喜男


 能楽の名手・恩地喜多八(花柳章太郎)は按摩の素人能楽師(村田正雄)の芸を侮辱し、自殺させてしまう。父親に破門された彼は謡曲界を去るが、按摩の娘(山田五十鈴)が芸のできない芸者で苦しんでいることを知り、せめて一芸を身につけよと、得意の仕舞を教授する・・・
 泉鏡花の文体で読むと幻惑されて魅了されるのだが、具体像として映画化されるとご都合主義の筋運びが目に付いてくる。ただ、そのおかげで無駄のない展開の小品となっており、怪談趣味は成瀬には似合わないもの、小品佳作に仕上がっている。
 松林で山田五十鈴に舞を仕込む場面は、いかにも鏡花的な、スモークを張った中に朝の光が差し込む幻想的な名場面で、中井朝一のソフトな画調が発揮されている。おまけに、この時期の成瀬映画は、後に円谷特撮を支えることになる岸田九一郎が照明を担当しており、第1作の「ゴジラ」の技術スタッフがいかにモノクロ映画に精通した成瀬組に支えられていたかということがうかがえる。
 按摩の宗山を演じる村田正雄が憎々しくていいのだが、按摩の亡霊というのは、日本の伝統的な恐怖のイコンなのだろうか。累が渕、座頭市・・・身障者差別で単純に片付けられない歴史があるにちがいない。

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