基本情報
本能寺ホテル ★★
2017 スコープサイズ 119分 @アマプラ
脚本:相沢友子 撮影:江原祥二 照明:杉本崇 美術:棈木陽次、吉澤祥子 音楽:佐藤直紀 VFXスーパーバイザー:西尾健太郎 VFXプロデューサー:赤羽智史 監督:鈴木雅之
感想
■なんでも『鹿男あおによし』『プリンセス・トヨトミ』に続いて万城目学が原案だけでなく直接脚本を書いていたのに、全ボツを食らってクレジットに名前も残らなかったという事故物件。通常は、箱書きの段階でPと打合せもされるので、全ボツなんてことには、なかなかならない。なので、普通でない何かの事情が介在したに違いない。結局、おなじみの相沢友子が脚色を引き受けたけど、万城目学のアイディアが残留したらしく、万城目学は怒っていたようです。通常なら、原案とか協力とかクレジットが残るところですが、よほど拗れたのでしょう。まあ、脚本がボツを食らった時点で、万城目学はアイディアは使うな!クレジットに名前出すな!て言ったでしょうけどね。
■それにしてもひどい脚本で、ほとんど映画学部の学生の若書きレベル。ベテラン教授陣からなんじゃこれ?人間が描けてない!とかご都合主義!とか、そんな結論でいいと思ってるの?とか散々に言われるレベル。それでも一応、脚本としての骨格は成立しているので、完全に失敗作というわけではなくて、脚本の教科書に書いてある基本的な骨組みは確保されているから及第点は取れるでしょう。でも、いまならChatGPTが生成するレベルだと思います!
■本能寺の変とかタイムスリップを経験しての、映画的な結論がそのレベルか?という疑義は当然に予想されるけど、ヒロインがわずかでも変化したのであれば、ドラマツルギー的には成立していると考えることはできる。公式的にはね。そしてかなり低いレベル(合格点ギリギリ)だけどね。なぜからドラマ=主人公の変化だから!それでも、昭和末期に書かれた脚本をサルベージしたようなお話と台詞なので、その時代錯誤感にびっくりするよ。いつの時代の映画?とは感じるよね、誰しも。そこは消せない疵。
■ところが、それなりに予算があるので技術スタッフは一流どころを揃えて、時代劇としてのルックは立派なもの。でも、本能寺の床が妙に汚れていて、変な反射が出ていたり、京都太秦精鋭スタッフにしては解せないカットもあったけどね。普通なら磨き上げてツヤツヤに撮るところなのに。よほど時間がなかったのかなあ。
■しかもVFXも上出来で、本能寺の炎上シーンは当然VFXだけど、絶対ミニチュア撮影した素材を使っているとおもったけど、クレジットにミニチュア撮影ユニットは出てないので、全部CGで作ったみたい。ホントかなあ。いかにもCG風の炎の素材もあったけど、かなりリアルだったので、実写素材ありきと感じたが、そうでもないらしい。凄いな。
■それでも退屈はしないのは、綾瀬はるかの無防備な佇まいとかリアクションのナチュラルな可笑しさのおかげだし、こうした素材ばかり撮り続けて何十年の鈴木雅之の腕だと思う。それは、いくつかのシーンでさすがに熟練の技を感じたから、評価しようよ。そうそう、近藤正臣はナチュラルで良かったよね。ちなみに、制作担当のFILMって、フジテレビのセクションなんだね。