いまや綾瀬はるかは”平和の守護神”なのだ!『リボルバー・リリー』(感想/レビュー)

基本情報

リボルバー・リリー ★★★
2023 スコープサイズ 139分 @イオンシネマ京都桂川
企画:紀伊宗之 原作:長浦京 脚本:小林達夫行定勲 撮影:今村圭佑 照明:中村裕樹 美術:清水剛 音楽:半野喜弘 シニアVFXスーパーバイザー:尾上克郎 監督:行定勲

あらすじ

関東大震災から復興途上の日本、秩父で起こった一家惨殺事件の生き残りの少年が、小曾根百合(綾瀬はるか)に助けを求める。百合は台湾の幣原機関が養成した殺人マシンだった。少年の持つ陸軍機密資金の行方を追って陸軍強硬派の追手が迫る。。。

感想

■予告編を劇場で観て、これは見逃せないと確信した本作、初日の第一回上映に駆けつけましたよ!我ながら律儀だなあ。だって、綾瀬はるか行定勲だからね。正直、想像していたよりも、ファンタジー寄りで、もっとリアル路線のスパイアクションかと思っていた。なにしろ長いので、お話が路線に載ってくるまで大丈夫なのかと危ぶんだけど、ちゃんと言いたいことの筋は通っているので、全く悪い気はしない。どころか、さすがは綾瀬はるか、主張が一貫していると感心した。

■そうそう、もっとアクション活劇かと思いきや、アクション演出はおとなしめで、昨今のハリウッド映画に比べると随分クラシカルな演出。近年のリアル志向のアクションではなく、西部劇くらいの昔に遡る印象だ。編集が近年のアクション大作をほとんど一人で手掛ける今井剛なので、アクションのカット割りは細かいのだが、映画全体のリズムはゆったり流れる。そこは行定勲の体内リズムだろう。

■なにしろ大作なのでVFXは欠かせないけど、意外なほどにVFXを多用していて、しかもミニチュア特撮もある。行定勲は『北の零年』で尾上克郎と組んでいるので、というか制作がシネバザールなので、尾上克郎特撮研究所の仕事。なにしろ鈴木啓造や三池敏夫も参加しているから本格的。川面のシーンとか終盤の海辺のシーンなども、ロケではなく合成処理による。川面でぶっ飛ぶボートはミニチュア撮影だよなあ。でも、他にも気づかないミニチュアショットがありそうだな。

■お話のさばき方については疑問も多く、アクションシーンが大昔の東映時代劇なみのファンタジーになっているし、おそらく若い世代からはステロタイプな「ツッコミどころ満載」などという安易なレッテルを貼られるだろうが、決して失敗作ではないよ。なにしろテーマがはっきりしていて筋が通っているから。謎の老婆(え?緑魔子!)の登場は、なんだか説明がなくて、次回作に謎を残したようだけど、リボルバー・リリーの不死身の身体にはなんらかの魔術が関与しているらしいが。。。(ホントに??)

■まあそれでも、陸軍が血眼で追う秘密資金のからくりとか、とにかく燃える方へ、燃える方へと集結してゆく長谷川博己とかシシド・カフカとか石橋蓮司の活劇魂で燃えるし、バリバリ現役じゃなくて、今や引退して市政の玉ノ井のおばさん(若い観客からみれば、ですよ)生活を送る綾瀬はるかが、最前線の戦場に復帰する、そのよっこらしょと持ち上げる身の重さを描くことが、この映画の眼目であろう。年代的にもそこに綾瀬はるかはピタリとハマるし、そしてラストの綾瀬はるかの台詞は、綾瀬が『八重の桜』のヒロインであったことと連結している。綾瀬はるかは、いまや平和の守護神であって、何事かの解決に安易に戦争を企む輩の前に必ず現れて、その邪念を嗜めるのだ。

■大作らしく配役は豪華で、トヨエツも『キングダム2』よりずっと良いし、阿部サダヲ山本五十六も意外性のある上手い配役。橋爪功石橋蓮司は欠かせないとことだし、特にシシド・カフカは派手で見栄えがするから活劇は似合うよね。一方で陸軍関係はどうも冴えず、若手は知らない人ばかりで、このあたりは厳しいところ。まさかの緑魔子には驚いたけどね。石橋蓮司との絡みはないけど、しみじみ感慨深い。。。

蛇足

イオンシネマ京都桂川は、スクリーン6はスクリーンがヴィスタサイズで固定されていて、スコープサイズの上映は、マスクスクリーンを移動させず、スクリーンの上下に黒味が出たレターボックススタイルでした。

■他のシネコンでも最近ありがちなことらしいけど、味気ないというか、なんだか罪悪感がある。なんでも10年前くらいからの風潮らしいけど、理由はなんだろう?


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