K−20 怪人二十面相・伝 ★★★

K−20 怪人二十面相・伝
2008 スコープサイズ 137分
ユナイテッドシネマ大津(SC6)
原作■北村想 脚本■佐藤嗣麻子
撮影■柴崎幸三 照明■水野研一、三善章誉 
美術■上條安里 音楽■佐藤直紀
VFXディレクター■渋谷紀世子 VFX・脚本協力■山崎貴
監督■佐藤嗣麻子

■太平洋戦争のなかった架空の日本を舞台として、怪人二十面相に間違えられたサーカスの軽業師が本当の二十面相を追及してゆく活劇映画で、映像のクオリティは日本映画の平均水準を軽く超えている。制作スタッフは山崎貴組で、脚本と演出を山崎貴の阿佐ヶ谷美術専門学校の同窓生で、奥さんでもある佐藤嗣麻子が担当し、日本テレビ創立55周年記念映画である超大作を手堅くまとめ上げている。なにしろアクション演出には横山誠が参加しているので、世界中の様々な映画からおいしいところを戴いたアクション演出の冴えは、やはり日本映画ばなれしている。

■物語はありふれたものだが、ちゃんとひねりも用意され、アクションとミステリーと、探偵小説論が綯い交ぜになっており、娯楽映画としては申し分無い。白組のVFXもさすがに見事で、特に冒頭の帝都の情景を舐めるように描写した場面など、ミニチュアも使用した(はず)の貧民街の町並みや対照的な高層建築の様子など素直に素晴らしい。クライマックスのビルの天辺でのアクションもデジタル合成の賜物で、質量ともに圧巻。

■欲を言えば、意外にはまり役の仲村トオルの演技に、もう少し重厚感がほしいし、そのまんまアニメキャラを演じる松たか子は、本来綾瀬はるかであるべきだろう。小林少年役に色気が全く無いのは困りものだと思うぞ。

大日本帝国が戦争で負けなかったために、超格差社会が誕生しているという舞台設定は2008年の映画としては悪くない。スラムや貧民窟、浮浪児といった明智小五郎と二十面相の活躍した50年以上前の社会背景がそのまま今の日本に蘇ろうとしつつあることを通奏低音として置いた目論見は、こうした日本の娯楽超大作としては異例ではないか。その設定はアクション映画としてそれなりに消化されていると思う。”それなり”さが、乱歩の明智&二十面相ものの身上だったのだから。

■製作は日本テレビ、ROBOT、東宝ほか、制作はROBOT。

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